僕は戦争と暴力のある世界に抵抗する。できるだけおだやかに、楽しいやり方で
「音楽と演劇の年賀状展」という展覧会を始めたのは2011年1月、大阪・梅田のOZC GALLERYというギャラリーで、一週間だけの展示だった。110人の出展者とやりとりし、たくさんの人の手を借りてできた展覧会。ソワソワしてウキウキして、ふらりと訪れた見知らぬお客さんとギャラリーの真ん中に置いたコタツに入っておしゃべりしたりして。
最終日のクロージングイベントには大好きなバンドと憧れの劇団に来てもらって(三田村管打団?、子供鉅人、坂口修一さん、リュクサンブール公園という今考えても他ではなさそうな組み合わせ)。たった1週間だったけど、こんなこと人生で初めてで、ただただ楽しかった。
その2ヶ月後、地震が起きた。
流されていく街の映像を前に、見える世界がひっくり返ってしまった。ついこの前、コタツに入って、のんびり誰かとお茶してみかん食べたりなんかして、あの時間は何だったんだろう。来年もやれたらいいなーとぼんやり思ってたけど、こんなことやってる場合じゃない。
でも何の因果か、翌年以降、大阪だけじゃなく、埼玉と名古屋、岡山や岩手にまで呼んでもらい、年賀状展をすることになる。「音楽と演劇の人に年賀状出してもらったらおもしろいんじゃないか?」という個人的な思いつきを、ただののんきな展覧会を、こんなに楽しんでもらえる人がいるなんて。
12年目の今、戦争が始まった。
ロシアとウクライナで起こっていること、背景、その歴史、自分は何も知らなかった。そんな時に自分は相変わらずなんてのんきなことをしているんだと思った。でも2011年の時と違うのは、こんな場所を求めている人がいる。ここに来るとほっとする。時間がゆったり流れる。そう言ってくれる人がいることを、僕は知っている。
僕がこれまでやってきたこと。演劇のチラシをつくる仕事も、ストレンジシードも、音楽と演劇の年賀状展も、自分の中ではぜんぶ繋がっている。不寛容で最悪なこの世界に抵抗しながら、世界は最高におもしろくできるんだと伝えたい。ささやかでも、戦争と暴力のあるこの世界に抵抗したい。それもできるだけおだやかに、楽しいやり方で。自分ができることはそこにあると思っている。
音楽と演劇の年賀状展は、この形式での開催は今年で最後にしようと思っている。12回目の年賀状展は、埼玉、大阪を経て、このあとは名古屋と岡山に行く。よかったらご一緒に。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?