見出し画像

物語をつくる(7)35人の群像劇/ゴスフォード・パーク

ロバート・アルトマン監督が「ナッシュビル」で発明して「ショートカッツ」で完成させた「群像劇」というスタイルは、ポール・トーマス・アンダーソンの「マグノリア」に継承され、今や日本の連続ドラマのスタイルにまで派生してきている。

多くの登場人物にそれぞれのキャラクターをつけ、誰もが主役のようなしっかりした人生の物語があるこの「群像劇」をつくるのはなかなか大変な作業だと思う。これは主に脚本家の仕事であり、日本では三谷幸喜の作品における主役以外の登場人物もしっかり描こうという形で一般化してきた。

ロバート・アルトマンの発明したこの「群像劇」は、物語を複雑にして観客を混乱させてしまう、という意味では、相当しっかり見ていないと、その関係性が見えてこないという特徴も持っている。

わたしの好きなティム・ロビンズ監督の「クレイドル・ウィル・ロック」という名作があるが、この作品もあまりに複雑な群像劇のため、ある人は「意味がわからなかった」という感想の人もいた。しかし、これは逆に言えば、それだけの情報量が物語に詰め込まれているわけで、何回見ても楽しめるという要素も持っていることになる。

「ゴスフォード・パーク」のワンシーン

「ゴスフォード・パーク」の登場人物はおよそ35名
彼ら彼女らひとりひとりにしっかりした物語があり、それらが複雑にからみあっている。

アガサ・クリスティの推理劇を一度やってみたかったという、今回のアルトマンの実験は、23の映画賞を受賞し、アカデミー賞の脚本賞やゴールデン・グローブの監督賞も受賞した。

ロバート・アルトマンがすごい監督であることは、映画業界内では、常識であるが、「ゴスフォード・パーク」のDVDに収録されているインタビューやメイキング映像を見れば、それらの意味がさらに深く理解できる。

「ゴスフォード・パーク」パンフレット

この知的でスリリングな人間模様と社会に対する深い洞察を持った物語は、もう70歳は越えているであろうロバート・アルトマンという巨匠がまだまだ現役の映画作家であることを証明している。(初稿:2004.06.10

原題: Gosford Park
監督: ロバート・アルトマン
脚本: ジュリアン・フェロウズ
出演者:
マギー・スミス
ヘレン・ミレン
マイケル・ガンボン
クリスティン・スコット・トーマス
クライブ・オーウェン
ライアン・フィリップ
デレク・ジャコビ
音楽: パトリック・ドイル
撮影: アンドリュー・ダン
公開: 2002年10月26日
上映時間: 137分


よろしければサポートお願いします! いただいたサポートはクリエイターとしての制作費用として使わせていただきます!