蝶子、わたしが愛した彼女の物語
19歳の春に出会った蝶子はまるく広がるおさまりの良いボブカットで顔立ちにはまだ少年のようなあどけなさが残り、覗き込むように人を見る目を取り立てて大きいと思うことはなかったけれど、くるくると、あちこちよそ見をしたりすぐに興味の対象が移り変わってそのどれもに好奇心を隠さない視線は誰もを魅了した。蝶子はいつも、どこで買うのかわからないレトロな柄のシャツを着て、ノートも教科書も入らないような小さなリュックサックを背負っていた。高校を卒業したばかりの蝶子はどこにも衒いがなく、自由で大き