アンハッピー・バースデー

 昨日 ハタチになった オトナの形をした数字がついた
私はこんなおめでたい誕生月に好きな人から振られるので、ハタチになって浮かれてる足と一緒に何もかもどうでもいいフリをして携帯とイヤホンだけ持って街に出た

馬刺し専門の美味しい居酒屋に入って、不安とワクワクでまるで私は落ち着けない
誰も居ない店の靴箱の前、「いらっしゃいませ〜」可愛らしいお姉さんの店員さんに慣れない口振りで
「あの、すみません一人で」「今からいけますか?」
もうそれも絵に書いたみたいなドキドキ加減で席まで案内された。
心ん中でよっしゃ!ってガッツポーズしてダブルピースしたいくらい緊張した
通された席は6人座れるくらい広々した座敷で、角に座って緑ハイを頼んだ、がらんとしたお店にどこか安心して、あー!ひとりで呑みに来れたんだ!すご!とか思った。
誕生日なのになんの予定も無く誰とも会わず、一人で居酒屋、人生に反抗してる、自分で。
私はお得な頭をしているし、なんせまだまだガキなので、これっぽっちの事だけで達成感を味わえちゃうのだ

長芋のたまり醤油漬けのわさびに口がジンジンしても馬肉のカルパッチョに添えられたレモンがうまく絞れなくても、好きな物だけ頼んで好きなペースでちんたらと食べても、私は私だけで私の身体でここに来たので、私には私しか文句を言えないのです。
1時間前の私が、誕生日になんの予定もなくて誰とも会わないで一人で飲みに行って寂しくないの?って緑ハイを飲み干した氷の隙間から見えるジョッキの底からわざわざ聞いてくるけど、これが意外と寂しくないんだなあなんて5杯目を最後にしてお店を出た。
アスファルトを包む氷をちいさく踏みしめて歩いたら、さっきまで暖かかった背中から逃げてく熱がほんの少し寂しかったけどそれも束の間
なんかアスファルトの上の氷っていつもさばいた後の魚の背骨に見えるんだよなあと思うけど、言っても多分誰にも伝わらないしなとか頭の中で思って日本語を無駄遣いしてたら5杯の緑ハイは帰り道でどっかに行った。

さてと、かなり右往左往したけど、ぐちゃぐちゃで死にたくてつらくて苦しくてしんどかった私が産まれた日はつまり、ハッピーなバースデーじゃなくても良い

最悪で最悪の最悪な人生に乾杯とおやすみ。

そう、まさにアンハッピー・バースデー。

アンハッピー・バースデー、私。

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