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世界ワーストワン。日本の衣料消費におけるCO2排出

「グリーン・リカバリー」という言葉をご存知だろうか。
これは、コロナ禍からの復興にあたり、地球温暖化の防止や生物多様性の保全を実現し、よりサステナブルな未来を目指すためにWWF(世界自然保護基金)も推奨する経済刺激策だ。

グリーン・リカバリー
具体的には、サーキュラーエコノミーやクリーンエネルギーなどの研究に対する助成、生態系の回復を促進する措置などが挙げられる。欧州を中心に広がっている政策であり、日本でも議論を加速させるべきだという声が上がっている。


多くの人は未だグリーン・リカバリーを「知らない」

2020年12月にWWFジャパンが行った調査では、日本でグリーン・リカバリーを「知らない」と答えた人が80%超だが、世界的に見ると多くの国々が関心を寄せている。

ここでも日本と世界の差が出ていますね。


2021年3月18日、19日の2日間に渡って開催されたビジネスカンファレンス「MASHING UP SUMMIT 2021 Breakthrough Innovation for the SDGs」。締めとなるトークセッションは「グリーン・リカバリーが創出する真にサステナブルな社会」と題して、公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)の小西 雅子氏、国連広報センター所長の根本 かおる氏がグリーンリカバリーの意義や、それを目指すために社会に必要なアクションについて語った。



SDGsの目標は、このままでは達成できない

WWFジャパンの小西雅子氏と、国連広報センター所長の根本かおる氏。この日開催されていた「世界気候アクション0319」の一環で行われていたツイートストームがネットを賑わせるなど、社会における環境問題への意識の変化が伺えた。

世界気候アクション0319
世界各国各地の状況に合わせた形で気候変動対策を求めてアクションする活動


2020年、私たちは地球規模のクライシスを体験した。未だ続いているコロナ禍ではあるが、社会をよりサステナブルに復興していこうというのが、WWFも唱える経済政策「グリーン・リカバリー」。小西氏は、グリーン・リカバリーのポイントとして次の2点を挙げた。

1.地球温暖化対策の国際協定である「パリ協定」の達成に貢献すること
2.国連のSDGs(持続可能な開発目標)の達成にも一致した施策を実施すること


193の国連加盟国によって採択されたSDGs(持続可能な開発目標)は、世界共通の17のゴールと、169のターゲットが盛り込まれている。大きく分けると、環境・社会・経済の3つの側面があるが、このままでは期限である2030年までに達成できる見込みがないという。


>「SDGsの取り組み開始から6年目に入りましたが、このままでは2030年に達成できる見込みがありません。2020年、SDGs達成のための「行動の10年」が始まり、各国が行動の加速化のためのアクセルをふかし始めましたが、コロナ禍によりブレーキがかかってしまいました。たとえばゴール1は『貧困をなくす』ですが、コロナ禍で悪化した経済により、数十年分の貧困削減の努力が吹き飛んでしまいました。国連開発計画(UNDP)が出している保健、教育、暮らし向きを統合的に捉えた『人間開発指数』は、リーマンショックのときでさえプラスでしたが、30年の歴史の中で初めてマイナスに落ち込みました」(根本氏)


貧困以外に、教育や虐待などの問題も露呈するなど、未曾有の緊急事態は社会のさまざまな問題を浮き彫りにした。


> 「新型コロナウイルスは人畜共通の感染症です。このような感染症が増えている背景に、環境破壊や気候変動があります。私たちが何も行動を起こさなければ、地球の温度は今世紀末には4度上昇すると予測されています」(根本氏)



重要なのは今後10年。求められる行動変容

「コロナがSDGsゴール達成の前に大きく立ちはだかっているが、逆に言えば持続可能な社会を実現する上でのチャンス」と、小西氏。サステナブルな未来に向けて、前向きな提言がなされた。

では一体、地球温暖化の進行に加担しているのは、誰か。「自分かもしれない」と自覚している人はどれだけいるのだろう。

地球温暖化の原因は温室効果ガスであるが、原因となる二酸化炭素などの人為的温室効果ガスを排出しているのは、根本氏いわく「豊かな暮らしをしている人々」。

そして、そこには日本も含まれるという。

> 「例えばファッション。ファストファッションの流行により、大量の衣料が廃棄されています。
日本は1人当たりの衣料消費に伴う温室効果ガスの排出が、世界でダントツの1位です。それから、食の廃棄。生産、消費、処分までの全体のシステムで、温室効果ガスの排出の3割以上を占めていると言われています」(根本氏)


日本で温室効果ガスの約90%を占めるのはエネルギー起源の二酸化炭素で、化学燃料の使用、発電、石油の精製、製造業、運輸業、廃棄物の燃焼などから排出される。好きなだけ電気を使い、贅沢な食事をし、車や飛行機で移動し、宅配便を頼み、新品のものを買う。こういった生活のあらゆる場面で、二酸化炭素が排出されていることを改めて認識しなければならない。


> 「パリ協定では、地球の気温上昇を2度未満に抑えることを定めており、人間活動による温室効果ガスの排出を、今世紀末なるべく早くにゼロにしようという目標が決まっています。しかしながら、私達は今、地球の気温が4度上昇する世界に向かっています。地球で排出されている二酸化炭素は、既に自然が吸収できる許容量をはるかに超えているのです。国際エネルギー機関(IEA)のデータは、私たちがコロナ以前のような経済活動に戻れば、再び温室効果ガスの排出量が増加していくことを予測しています。いかにコロナ禍を契機に、温室効果ガスが減った状態を維持できるかどうかが、グリーン・リカバリーを目指す上でカギになっています。今一番重要なのは、今後10年なのです。私たちが大きく生活スタイルを変えることができるかが勝負になってきます」(小西氏)


これは、経済活動や消費活動を止めようということではない。電気の使用は継続しつつも、その電気の源を再生可能エネルギーに変えていくなど、従来の経済活動を維持しつつそのスタイルを見直し、温室効果ガスを出さない方法を選択しよう、という提言である。


再生可能エネルギーだけで暮らせるシナリオはできている


日本は、いかに温室効果ガスを排出しない社会にシフトすべきか。

> 「パリ協定で日本が宣言している温室効果ガスの削減目標は26%。これは国際的に見てかなり低い目標設定で、『著しく不十分』と言われています。しかし、2021年11月にイギリスで開催されるパリ協定の国際会議COP26までに、日本は26%という削減目標を見直す予定です。日本が現状の排出から、2050年に温室効果ガスの排出を線形でゼロにしていく場合、2030年の時点で約45%の削減が必要。日本が排出している温室効果ガスの多くは発電や産業活動による化石燃料エネルギーからくるものなので、それらを再生可能エネルギーなど炭素を出さないものに変えることでゴール達成が見えてきます」(小西氏)

パリ協定の各国の目標値は、絵に描いた餅では許されない。ゴール達成のためには各国が監視し合い、評価し、確実に達成することが求められている。さらに、大胆に再生エネルギー使用に舵を切った場合、今の経済活動の全てに必要なエネルギーを賄えるかという懸念もある。


> 「WWFや自然エネルギー財団などはすでに、再生可能エネルギーだけで日本全体の経済活動をカバーできるシナリオを示しています。WWFの調べでは、2030年には再生可能エネルギー比率を50%まで引き上げることができるとわかっています。実は電気は再生可能エネルギーなどすでに実用化されている技術で脱炭素化することは十分可能なのですが、課題となるのは、車などの移動用に必要な燃料や、産業用に必要な高熱需要です。しかし、再生可能エネルギーからグリーン水素を作り、それを燃料用、産業用の高熱需要に使うことも技術的には可能。私たちの意思次第でエネルギーを変えることはできるということです」(小西氏)

再生可能エネルギーとは、太陽光・風力・地熱・中小水力・バイオマスといったクリーンエネルギーを指す。IEA(国際エネルギー機関)※では2020年の時点で日本の電源構成に占める再生可能エネルギー比率は約22%。カナダは76%、イタリアは38%、ドイツは48%となっており、日本の水準の低さがわかる。ゴール達成に寄与するためにも、早期の段階で50%へ引き上げる必要があるだろう。そのために、各業界もアクションを始めている。


> 「金融業界ではESG投資が主流になり、脱酸素化しない企業には投資しないという動きも加速しています。ファッションの世界も『ファッション業界気候行動憲章』を定め、温室効果ガス削減に向けて取り組みを始めています。また、食品ロスなどを含む食料関連の排出は、世界の温室効果ガスの3割も占めるに至っており、日本も問題解決に向けて取り組みを加速する必要があります。」(小西氏)


そして、大事なことはプライベートアクションだ。環境問題に取り組んでいる企業の商品を選ぶなど、消費者一人ひとりの行動が、持続可能な世界へ導く。

「私たちは、今社会が直面している危機にストップをかけられる最後の世代」


グリーン・リカバリーを推進するアクションを紹介中
・#GoToGREEN プロジェクト:


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