坂道の展開

2020(R2)1219Sat

鞄の中でシトラスゆずレモンが揺れている。シトラスゆずだっけ、ゆずレモンだっけ、ジャスミンティーだっけ、忘れたけど。

今日はウィリアム・モリス展に行く。3年前に友達と見に行った時も同じモリス展だった。特にオタクというわけでもない。もしかしたらモリスが私のことを好きなのかもしれない。暗転。私は殴られた。

上空10メートル位上を横切って黄色が飛ぶ。ぶわ、と癖の強い匂いがする。それなら銀杏か。
急に道が暗くなる。道沿いの木のせいだった。まるで西洋のお伽噺に出てくるような、魔女の家を守っているような木が植えられている。木は、雰囲気さえも自在に操れるらしい。

道沿いに小さめの可愛らしい花屋さんがあった。つまり私はここに住みたいと思った。脳内で、この地域に住む架空の大学生みぞれとの会話が始まる。少し嘘、名前は今つけた。「通いやすい場所に可愛い花屋があるというだけで、この土地の価値は何倍にもなりますよ!なぜって?大学の帰りに花を買って部屋に飾ることができるし、特別な誰かやそうでない誰かに贈ることだってできるからですよ!スーパーで花を買うのにも違った趣があるのは認めますが、これは私の好みです。私は花屋で花を買い、あわよくばそのご主人と軽い知り合いになってみたいのですよ!なんてフィクション!フィクションをノンフィクションに変えられる可能性が、この土地には存在しているのです!」会話ではない。ただの意見表明である。つまりみぞれは私の考えを言語化し整理するメモ用紙のような存在だ。ちなみにみぞれは眼鏡をかけている。

フィクションはフィクションであるから美しい。現実はフィクションではない。理想の展開になることはほとんどない。実際にこの土地に住んだら、銀杏の匂いに辟易しているかもしれない。花なんて1回も買わずに卒業するかもしれない。だから私は想像するのだ、私の愛すべきフィクション!

#日記



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