今が視えない
2019(R1)1006Sun
秋を1番早く贈ってくれるのは風だと思う。夏の暑さを思い出せない30歳みたいな、糸の感触をもつ風。まだ色も匂いも秋ではないけど、夏とも変わってしまった。夏のこと、そんなに好きじゃないのにね。ないものねだりで生きていくよ。
よくお母さんと車で、ほんのちょっとドライブに行ったりした。「甘いもの食べたくない?」「食べたい!」が合言葉だ。地元では、コンビニへも車で行かなきゃいけないけど、それが逆にあの懐かしい空間を作ってくれた。大体合言葉が放たれるのは夜なので、特に行くところもなくなんだかんだいつもコンビニだった。ミニストップは、その候補地No.1である。ちょっと離れているから知り合いに会うことがないだろう、という私たちの思惑ゆえである。甘いものを求めて来たはずが、唐揚げになったり肉まんになったりするのはどうでもいいことだった。しかし、冬はそうはいかない。毎年冬頃、ミニストップは「なめらかプリンパフェ」の横断幕を揺らめかせる。これが甘党である私の心を捕らえて離さないのだ。幼い頃にその官能的な甘みに触れた私は、すぐに虜になった。しかし私はその幼さゆえ、パフェが季節限定とは知らなかった。彼女の季節が終わって最初の1年を、ひどく虚無感に包まれて過ごしたのを覚えている。本質的には冬の恋人である。今年もそろそろ発売されるかもしれない。こっちにミニストップはないんだ。また帰ってきていい?
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