見出し画像

ファッションショーは汚れない

2021(R3)0902Thu

人生初、黄色いハイヒールを履いた。汚したくないからベッドの上で。そうして思い出したのは、小さい頃に着た、白地に青い花柄のワンピース。私の中で一番可愛い服だ。色んなものが、積み重ねられていく記憶に埋もれている。それを掘り返す作業は好きだ。たくさん掘り返したものほど、浅瀬に埋まっている。例えば保育園で仲良かったひかりちゃんとか。幼なじみにお気に入りのイルカのキーホルダーを墓地に埋められたこととか。土は暖かかったり、湿ったりしている。でもそれは、すべて記録だ。好きだった、という記録。悲しかった、という記録。感覚が蘇って指先を振動させることは、ほとんどない。あのワンピースも、きっと今見ればそうでもないのだ。でもそう言うと、幼い私が「なんで!!」と泣いて、爪でかじってくる。でも、これは嘘だ。今思い出したけれど、当時はそんなにワンピースを着てなかった。お母さんが着て欲しい服を素直に着るのが嫌だった、プチ反抗期だった。でも、「あの服着てみたい」とふと思った時、あのワンピースは消えていた。私の身長に合わなくなったから。過去になったから、愛しいのだ。丹念に土を掘り返していると、こういうこともある。私が大切にしたいと思った記録は、私が大切にしたいと思うものに書き換えられていた。すべて私の思いのままなら、いっそ証拠も消してしまえよ、悲しくなる前に。ただ、私は今、あのワンピースが好きだ。優しい記憶と一緒に埋めるくらいに。今日はたくさん掘り返したから、私はあのワンピースを、この黄色いハイヒールを見る度に思い出せる。ねえどこに行きたい?なるべく汚れないところが良いんだけれど

#日記 #ミスiD2022

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?