半分前の秋
蝉が四方八方で鳴いているくせに、風はなんだか秋だった。もしかしたら、少し前の夏はこれくらいの暑さだったのかもしれない。十年前の夏に思いを馳せる。人生の半分前のことなんて、案の定覚えていなかった。数字で思い出すのは担任の先生くらい。そういえば十才の時は、担任の先生の服を、裏紙で作ったノートに描くのにハマっていた。先生からしたらとんだファッションチェックだ。体育の時間用のジャージも書くか、という定義に迷ってそのうちやめた。変なことをしていた。畑からさとうきびみたいな、甘い作物の匂いがする。これは夏だったか秋だったか、とにかく郷愁を煽る匂いだ。田舎はどこも大体一緒らしい。空が静かに渦巻いていた。そして雲は、静かに日の光へと収束されていく。まるで昼間の光と雲が回収されているみたいだ。ああ、似たような空を中二の時に見たな。なら中二の時は、この気温は秋だったらしい。きっとまた忘れてしまうけれど。
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