『南風』6月号

今回が初の投句でした。

南風集 三句欄
〇釣り人にのつぴきならぬ棚霞
 鳥雲に入るわが師にも師のありき
 北窓を開いて富士を遥拝す

締切が近く、急ごしらえでの投句となりました。
「棚霞」の句を注目句に選んでいただきました。
正直、自信ありませんでした。
中七「のつぴきならぬ」は説明の言葉か? と投句したあとに思ったのです。(例句はあるようですが…)

個人的に気になった句をいくつかご紹介したいと思います。

村上鞆彦 主宰作品「一気」より

摑む手を映すドアノブ花粉症

「摑む手を」何を摑むのだろうと思っていると「映すドアノブ」と続き、日常のなかの些細な発見が表現されています。ドアノブの銀に反射する自分の手の無機質さ。この句の一つ手前の句が

ボタン点して待つ春寒のエレベーター

であり、「春寒」の質感が二句目にも引き継がれるような感覚があります。そして下五に「花粉症」と季語が来て、花粉を払った手で玄関を開けると、ドアノブに花粉が付着してしまう、家の中に花粉を持ち込むまいという警戒、敏感さを感じとりました。

津川絵理子 顧問作品「視野」より

初虹のむらさき残る眼鏡かな

「初虹」の七色のなかでも「むらさき」。高貴な色であると同時に、藤や菫の春の季感を持つ色だなと思いました。『南風』4月号の

初稽古せむと眼鏡を外しけり

と「眼鏡」に注目がいっています。私も眼鏡なので、しっとりとした生活感に惹かれました。


「南風集」より

花の窓同じ病の四人部屋  佐藤典子

光景、心情が切々と伝わってきます。先月は私もそんな状態でした。

踏切の闇かんかんと冴返る  太田颯

時候の季語「冴返る」を聴覚で捉えた一句。「かんかん」の音が硬質な響きを持ち、「冴返る」との相性が抜群。「闇」とあるところに、句の背景に春愁も感じさせます。

春の日や吹かれて長き山羊のひげ  山野髙士

「春の日」は「春の一日」と「春の日差し」の二つがあります。「春の日差し」のほうをイメージしました。一句全体に貫かれた「日永」の雰囲気、「吹かれて」から春の風をイメージさせ、山羊のひげの描写も惹かれます。

かくれんぼの鬼のみつけし蕗の薹  雪岡久代

子供たちがかくれんぼをしていて、そのなかの鬼が、隠れた人を探している最中に、地面から顔を出す蕗の薹を発見するという光景が鮮明に目に浮かび、とても惹かれました。「ふきのたう」とひらがなにするとより良いかもしれません。

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