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病床白書


2024.4.12 入院初日

点滴をつながれてゐる花の冷え
晩春の夜や病室の読書灯
入院や手持ち無沙汰に春夜更く
読書灯消す春雨の音残る


2024.4.13 入院2日目

胃を病みて春あけぼのの木々にほふ
陽炎やわが血管のうすきあを
春の灯のローソン点滴棒を曳き
梅ジャムの重湯を啜る春なりけり
胃カメラの検査を終へて水ようかん
缶コーヒーごとん春昼の病棟
春風や重湯に溶かす塩のつぶ
血管に沁み込む春の夜なりけり
テレビジョン消して全き春の闇
病床へ声こぼれくる春の星


2024.4.14 入院3日目

春愁の置きどころなき左腕
蛇出づや三分刻みの流動食
ピーマンの摺り下ろされて山と立つ
のりたまの塩気うれしき春の粥
句帳果つ入院三日目の春夜
春の蚊や生きていくには金が要る


2024.4.15 入院4日目

みそ汁の国に生まれて桜散る
あす退院流動食の夏みかん
大部屋の春の暑さの鼾かな


2024.4.16 退院日

葉桜や退院の日のパン二切れ
冷奴にドレッシングのさみしい波
ありがたうと言へぬ病よ新じやが食ふ
病得てレベルアップはしない春

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