セレッソ大阪~久々の勝利に感涙

2021年5月23日 セレッソ大阪 vs サンフレッチェ広島 ヤンマースタジアム長居

 負けて負けて負けまくってる中、ついに昨シーズンまでのフォーメーション、3バックに戻した。メンバーは5人入れ替えたものの、トップのサントスを始めとしてほぼ順当なメンバーを選んできた。それに対してのセレッソは高木や坂元といった速いドリブラーを入れてきたのは苦手とする選手をよく研究してるような気がした。
 芝の緑が栄える青空の下にありながらスタンドには観客がいない。チャイナウィルスの蔓延によりもはやこの光景にも見慣れてしまった。入場に流れたBGMに空しさを覚える。だがチームの不調とアウェイの地であることを考えればむしろこれは都合がいいのかもしれなかった。
 無観客でのキックオフ。立ち上がりいきなり野上のパスミスからカウンターを受ける。シュートまで持ち込まれたが枠を外してくれた。距離的には遠かったもののサンフレッチェの試合はなぜかスーパーゴールが飛び出すだけに枠に行ってないということはこの日に限ってそういう奇跡は起こらないような気がした。なのでその後はセレッソにボールを支配してしまうもののそれほど危機感は感じないのだった。
 奪ってボールを回すとプレスを掛けられる。その圧力を避ける為にバックパス。DFでのパス回しになるもののここから連動したパスで前に切り抜ける。いつもここで引っ掛かかるもののスルスルと上がることができる。そして右サイドに出すと柏がドリブルで1人剥がし2人剥がしクロスを上げる。が、中に誰もいない。何でサントスはゴールに突っ込んでいないんだ。サントスはパスを出せばインターセプトされるしフィニッシュへつなげる浮き球をあげると雑な精度。そしてカウンターでボールを出してもらえば余計なフェイントを入れてシュートブロックされてしまうのだった。ああ、サントス、あれだけ期待されたのにもうサンフレッチェで輝くことはないのだろうか。
 だがこの日の両サイドは輝いていた。左の藤井のスピードは攻守で相手を上回り、右の柏に至ってはボールを持てば仕掛けていける。このサイドの活性化はやはり3バックの恩恵なのだろう。更に藤井はカットインからシュートを放つ。GKにブロックされてしまったもののああいうミドルシュートを久し振りに観たのだった。
 今日はまともな試合になっている。攻められてる中でも荒木のクリアから青山のワンタッチパス、それをサントスが抜け出すとGKと1対1。シュートを放った。が、ガツンという音と共にポストに跳ね返されるとこれでまともなFWがいればと嘆いてしまうのだった。
 ところが後半に入ると早々に押し込まれCKを与える。ゴール前に人数を置くサンフレッチェ。するとニアを狙って蹴られると飛び出したGK大迫はセレッソの選手にブロックされるとその後ろの荒木の足元に落ちる。脛に当てて転がるボールをそのまま奧埜が押し込む。大迫の戻りも空しくゴールに入ってしまったのだった。
 またやられた。今日こそは守れると思っていたのに。ああ、もう負けは決まった。大体このまま先制の勢いでやられるというパターンだ。ところがリスタートのロングキックは浅野に収まりファールを受けるといい位置でFKを得る。それを浅野が蹴った。が、クリアされCKになり今度は森島が蹴る。ニアを狙ったボールに野上が入った。頭で合わせ後ろへフリック。ファーにいたサントスが受けるとそのまま体ごと押し込むように足を伸ばすとゴールに押し込んだのだった。
 同点。サントス、ゴール。あれだけゴール決められないとボロクソ言ってたのにここで決めた。失点から3分という短時間での同点弾は相手に与えたダメージも大きかっただろう。これにより振り出しに戻すことができたのだった。
 ところがここからセレッソの攻撃が勢いを増してしまう。跳ね返してもクリアボールが前で収められないのでラインがズルズル下がっていく。ペナルティエリアに入られる。人数を掛けボールホルダーへのチェックを強める。シュートには身体を張る。跳ね返して跳ね返してそして遠目からのシュートもブロックするとボールがこぼれ川辺が拾う。キープに入ろうとすると後ろから上がってきたサントスが受けそのまま持ち上がる。相手の守備に掴まれながらも倒れない。粘って粘って粘ってそのまま突き進む。そして3枚の最終ラインを前にしてスルーパスを出すと浅野が飛び出した。GKキム・ジンヒョンと1対1。左にかわすと深い位置から角度のないシュート。それが逆サイドへねじ込んだのだった。
「アサノ、アサノ、アサノーッ!」
 叫んでしまいそうになるもその前のサントスの突進も素晴らしかった。浅野も決めるとこを決めきれないとこれまで散々苦言を呈してきたがこんな難しいシュートを決めてしまったことに血流が逆流してしまいそうだった。
 ところがここでVARの確認が入る。何と、カウンターの前の防戦の場面でハンドがあったのではという嫌疑が掛かった。静まり返るスタジアム。どっちだ、どっちだ。ハンドならPKでスコアは逆になってしまう可能性がある。長い、長い審議時間。すると笛が鳴り主審はゴールを認めたのだった。
 やった、逆転。だがここで喜んでばかりはいられない。セレッソには3点差をひっくり返されたこともある。それだけに追加点も欲しい。
 ところがやっぱりセレッソの追いつくという執念の方が上回り再び押し込まれてしまう。藤井が足をつって東と交代するとスピードで抜け出すこともできなくなる。もはや堪えるだけの展開。堪えて堪えて堪え凌ぐ。メンバーを代え入った選手は守備で走る。サントスと代わった鮎川もボールホルダーへタックルにいく。それがファールになるとFKのピンチ。アディショナルタイムは10分。長い。長い、永井、長すぎる。
 ゴール前に蹴りこまれたボールは荒木が跳ね返す。セカンドボールを拾われるとサイドに振られる。セレッソの選手がペナルティエリアへ雪崩れ込む。止める、止める、止めてはクリア。あと時間はどれくらいだ。残り時間ばかりが気になる中、この防戦一方の展開に終了のホイッスルが鳴り響いたのだった。
 勝った。勝った、勝った、勝った。その瞬間涙が流れそうになった。シーズンのただの1試合。大袈裟であるが止められない。それだけ苦しかった。ただ、これで長いトンネルから抜け出したなどと楽観することはできない。果たしてこれをはずみとして再び戦えるチームになるか、次を見据えたいのだった。

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