ルヴァンカップ横浜Fマリノス~敗退を阻止したプレー

2021年5月5日 ルヴァンカップ・予選リーグ サンフレッチェ広島 vs 横浜Fマリノス エディオンスタジアム広島

 それはあまりにも呆気ない失点だった。レオセアラのはたいたボールをダイレクトで蹴った天野のクロスはレオセアラが再びヘディングを放つことでゴールに叩き込まれてしまった。前半の飲水タイムの後。それまではサンフレッチェの方がいい攻撃をしてた。中断されると作戦負けしてしまうのはいつものことだ。ああ、城福監督にそれを期待するのは酷なのだろうか。
 リハビリから明けた永井とユースの棚田の2トップ。怪我人の多い中での苦肉の策だった。だが思いのほか棚田のドリブルによる駆け上がりが有効でそれにより全体の押し上げがはかれた。それに気をよくしたものの、そんな矢先の失点は鼻をへし折られてしまった。そしていつも先に失点してしまう情けなさに打ちひしがれるのだった。
 前からのプレスはいつも通りすり抜けられ徒労感ばかりが積もる。中盤に入れられ左サイドに入れられると藤井は守備に追われてしまう。するすると上りを見せるマリノスの選手を捕まえきれない。そこで奪ってもロングボールを蹴るので精一杯だ。当然前でボールが収まることはない。
 更には後半、東が入ると左サイドで囲まれて出しどころがなくヤケクソで出したパスをカットされてはカウンターを受けてしまうという場面が出てくる。どうしてここまで孤立してしまうんだろう。もはや勝つことなど望めない。せめて1失点のままだったら惨めさも軽減される。同じ負けるにしても惜しかったと言えるくらいの場面は見せてくれないものか。
 すると左サイドでオーバーラップした藤井のクロスが入る。ゴール前、相手の守備も整ってない。そこへ永井のヘディング。タイミングは良かったものの枠に飛ばすことはできなかった。ここでため息が出る。似たようなプレーでマリノスは決めてサンフレッチェは決めれない。枠内シュートゼロ本。酷い、あまりにも酷いのだった。
 このまま負けると敗退の決まってしまうサンフレッチェは森島、川辺、サントス、鮎川と次々に選手を替えていく。それによってボールが回るようになり森島のドリブルからはファールからFKを得られる。サントスのドリブルからも味方の押し上げが図れる。だが決めることができない。最後の最後で枠を捉えることができないのだった。
 依然枠内シュートゼロ。マリノスも守備ブロックを築くのが速い。そしてサンフレッチェの攻撃を食い止めると途中出場した前田大然が猛烈なスピードでドリブルで持ち上がる。同じくスピードのある藤井が食らいついき最後まで行かせなかったもののあまりものスプリントの回数により足をつってしまった。交代枠もなく長沼と前後でポジションチェンジで急場を凌ぐ。これにより一人少ないのと同じことになったようなものだった。
 もはや安全に前に蹴りだすだけのサンフレッチェ。前で競り合って運よくマイボールにできればいいのだがことごとくマリノスに奪われてしまう。そして食い止めてはロングボール。その繰り返しにもはやこのチームに未来はないような気がした。そしてアディショナルタイムにCKを与えた時には追加点さえ与えなければそれで満足だった。もはやこれ以上悲嘆にくれさせないでくれ。
 何とかこのCKを食い止める。そして左サイド東に入ると縦への長いボールを出すと藤井が受けるとペナルティエリアまで上がった。が、足をつってるだけに反転してキープするのが精一杯。味方の上りを待ちたいと思ったその瞬間縦へ抜けクロス。ゴール前にいたDFの頭を超えるとそこに入った鮎川。ヘディングはゴールを割ったのだった。
 「アユカワ、アユカワ、アユカワーッ!」
 19歳、ユース出身の鮎川が決めたのだった。今シーズンに入って少しずつ出場時間を増やした鮎川だがこの終了間際決めた同点弾に血が逆流しそうになるのだった。
 そしてこのまま1-1のドローで終える。この勝ち点は大きい。首の皮一枚つながった。ルヴァンカップ決勝トーナメント進出の可能性は残された。本当に欲しいところで獲ったというのは僥倖でしかなかった。このままFWの軸となってくれれば。そんな希望にまるで日輪の日を浴びるような気分になるのだった。

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