鹿島戦~追加点の取れなかった浅野

2021年3月13日 鹿島アントラーズ vs サンフレッチェ広島 カシマサッカースタジアム

 朝から降ってた雨は容赦なく降り注ぎその勢いは試合時間が近づいても弱まることはなかった。中2日という日程でこのコンディションは厳しいものがあり、そこを考慮してサンフレッチェは6人入れ替えをしてきた。そしてその中にジュニオール・サントスがベンチからも外れていたのだった。
 どうやら軽い怪我を抱えたらしい。ここまでかなりの部分でサントスに頼ってただけに手足をもがれたようでもあるが、いつかはやって来る事態であった。それが想定より早くきただけである。ある意味この試合こそ真価が問われると言っていいだろう。
 その為にも浅野には期待したい。今シーズンまだノーゴール。アタッカーとしては寂しい数字である。むしろこういう時にこそアピールをしてもらいたい。
 降りしきる雨の中、試合は始まった。早い攻めでゴールに向かおうとするサンフレッチェに対し、鹿島のDFはしっかりついてくる。攻撃を跳ね返すとしっかりセカンドボールをつなげ、前に出てくる。守備に負われるサンフレッチェ。攻めた後に戻りで走る。その運動量は鹿島の攻撃を食い止めてはいるものの体力の消耗は懸念されるのだった。
 全員で戻ってゾーンをつくる。強烈な個を持つエヴェラウドはボールが入ると強引に反転して打つ動きをする。だがそれをサポートする2人目、3人目の動きがボールの獲りどころを絞らせない。人数を掛けてる割に嵌めることができない。
 そんな一方的展開になりそうな立ち上がりだったもののGK大迫が折り返しボールをキャッチしたとこから相手の間隙を突くことができた。野上から右サイド狭いスペースで受けたヴィエイラが森島へ。敵陣深く侵入する森島がシュート。ラインを割ったが相手に当たりCKを取ることができ、ここで少し潮目が変わってきたのだった。
 攻められはするけど奪ったら浅野が前を向く。相手のプレスをかわし前線のヴィエイラへ。そこから攻撃のスイッチが入って鹿島ゴールへ襲い掛かる。中央の狭いところを崩そうとするも最後は引っ掛かりクリアされる。フィニッシュまでいけなかったものだから煮え切らない感情が沸き上がりそうなもののなぜかそうは感じない。まだまだいける。ヴィエイラ目掛けてボールが飛んでくる。身体を張って収めようとするもバウンドしたボールは落ち着かない。そしてこぼれたところで浅野が拾いシュート。DFの寄せがあったものの遠目からのシュートは鋭い弾道でゴールの枠に入ったのだった。
 浅野、決めた。予想外。意表を突いた。意外性があった。その強引さと思い切りのよさが相手の反応をわずかに上回ることができたのだった。欲しかった先制点。それを浅野が決めたというのが頼もしかった。
 ここから引いて守りに入ることなく攻撃的な姿勢を貫いた。いつの間にやら雨も止んでくるとプレーの精度も高まってくる。すると徐々に鹿島の方へとボール支配率の比重が高くなっていくのだった。
 後半に入ると尚更押し込まれるようになる。守備ラインがズルズルと低くなる。奪ってつなげようとバックパスを出すとそれを掻っ攫われゴール真正面へ通された。今津のスライディングタックルで防いだものの際どいプレーによって救われてる。そしてこういう劣勢の時に限ってGK大迫のゴールキックはラインアウトしてしまう。ハイボールの処理では抜群の安定感があるもののこういう悪い流れを断ち切るということができないのだった。
そんな絶望感が漂う中、ヴィエイラからエゼキエウに前に向いた形で受けるパスが出る。それをゴール前へスルーパス。浅野が出た。GKとの1対1。あとは決めるだけ。だがこれをGKにぶち当ててしまうのだった。
ああ、あれを決められないのか。完全に崩した場面だった。あそこはループで浮かすべきだった。浅野は先制弾のようなパワーシュートは放てるが相手の動きの逆を突くシュートというのが打てないのだった。これさえ決まっていれば試合を決めることができたのに。
すると今度は鹿島がゴール前中央でショートパスで攪乱する。早いテンポのダイレクトパスでゴール前に飛び出された。鹿島荒木がシュート。ゴール中央を完全に崩されて決められてしまったのだった。
 同点。また追いつかれた。今シーズン先制しても無失点で終えることができない。人数が揃ってるのに守れない。これは問題である。何らかの欠陥があるから無失点でしのぐことができてないはずだが一向に改善されないのだった。
 こうやって振り出しに戻されたサンフレッチェ。そこにはもう追加点を取るパワーが残ってなかった。スローインはつながらない、セカンドボールも拾われる、一発を狙ったパスも合わない。もはやこのまま同点のまま終わるのが精一杯かもしれない。
 選手交代で長沼や鮎川といった若い選手が出る。だが彼らは点を取る為の武器にはなりえない。ところが鮎川を狙って出したボールはCKへと結びつき、守備ブロックから受けた長沼が縦へ見せたドリブルは引っ張られても倒れることがなくファールを貰えた。押し込まれてる状態の時、それらはとても勇気づけられるプレーだった。
 惜しむらくはそこからのセットプレーが実らずそのまま引き分けで終わったことである。いや、ほぼ一方的にボールを支配されてたことを考えると負けなくて良かったのかもしれない。それでもやっぱり考えてしまう。浅野がもう1点決めてればなと。
 守って縦へ速い攻撃。これを武器として考えてるのなら尚のこと決定力の高さは必須になってくる。決定力を高める、そこにフォーカスを当ててしまうと身も蓋もないような気もするものの浅野にはそんな感情を抱かせてしまう雰囲気があるのである。そしてそれは交代で入った2人にも感じることができたのだった。

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