湘南戦~失速する終盤

2019年11月30日 湘南ベルマーレvs サンフレッチェ広島 Shonan BMWスタジアム

 残すところ2節となり優勝もACL出場もない代わりに降格もないという無風地帯に落ち着いたサンフレッチェにとってモチベーションに難しさのある試合だった。だが来期を見据えてより高見に向かう足掛かりとなるものを観たい。残留争いをしてる湘南は切羽詰まってるだけに全力でぶつかってくるのは目に見えていた。
 そんな湘南に対してサンフレッチェはあくまでも後ろからパスでゲームをつくっていこうとする。それに対して猛烈な勢いでプレスを仕掛けてくる湘南。一人かわしても2人、3人と押し寄せてくる。それに耐え切れなくなったボールホルダーはボールを蹴らされてしまう。するとそのボールの先には必ず湘南の選手が待ち構えているのだった。
 嵩にかかって攻めてくる湘南。次々に後ろから上がって来る。マンツーマンのディフェンスはあっさり抜かれる。クロスを蹴られた。中央に入ったDF。が、次の瞬間ゴールの中にぶち込まれてしまったのだった。よりによってそれは荒木のオウンゴール。クリアで当てたボールは無残にゴールの中に向かったのであった。
 やってしまった。そもそも崩された時点で勝負はあったのかもしれない。だがオウンゴールはオウンゴール。0点で抑えることのできなくなった守備陣はよりによって自ら戦を与えてしまったのだった。
 早くも追わなくてはならなくなった。ここでやっと火が付いたもののハーフラインより前にボールを持って行くと湘南の守備の壁にいともたやすく跳ね返されてしまう。トップのペレイラに有効なボールが入らない。そこはがっちりマークされている。だがそれもそのはず、前節と全く同じスタメン。更にワントップを除いたメンバーはまるで替わってない。これも城福監督の悪い癖が出た。勝てなくなるとメンバーを替えないのだ。同じメンバー、同じやり方で貫こうとして相手に対策を取られるのだった。
 攻撃のキーマンである森島が裏でボールを受けるとクロス。中央のペレイラに入れるもボールの質が悪くヘディングしたボールは力なくGKへのパスにしかならないのだった。こういう場面で森島はちょっと前のように恐さを感じさせるプレーができなくなった。それはどことなく試合に出るのに悪い意味で慣れてしまったかのようだった。プレーに対して実に淡泊である。これだったら出場機会に飢えてる他の選手を出せないものだろうか。
 更にもう一人のシャドーポジションの川辺。相変わらずシュートが下手だ。打てそうな位置で貰っても打てない。やはりこの選手にシャドーは不適格なのではという気がする。実際に得点力不足の中には川辺が決定機で決めなかったという場面が結構あるのだった。
 それでもセットプレーならまだチャンスがありそうだった。森島の蹴ったボールを野上がバックヘッド。ファーに流れたボールを荒木がヘッド。やった。ドンピシャリのタイミング。が、それはゴールバーの上を飛んでいってしまった。荒木、自分のゴールに入れるのは豪快だったが敵のゴールに入れるのは決めきることができないのだった。
 さすがにこれには作戦の失敗を認めたか、城福監督は後半から中盤の稲垣に代えてドウグラス・ヴィエイラを投入して前線での人数を増やした。ボールの収まりのいいヴィエイラの影響か、途端にペースを握るようになり前線へと重心が上向く。柏が高い位置を取れることで左サイドからのクロスが入る。が、どれだけボールを入れようと中で待ち構えてる湘南DFにあっさりと跳ね返されてしまう。さらばと連携によりゴール前の壁を青山が突破。シュートのチャンス。が、これをドリブルでワンタッチ余計にしたことによりDFの脚が伸びて打てずに終わってしまった。
 ああ、どうしてあの場面でシュートを打たない。青山若い頃はもっとシュート打ってたよな。今ではミドルシュートすら打たなくなってしまった。ゴール前を固めた守備に対して他のチームは結構ミドルシュートを打ってくる。そして実際決められてしまってる。だけどサンフレッチェでは誰もそういうシュートを打たないのだった。
 それでも前線のヴィエイラはターゲットになりうる。サイドからクロスが入る。頭で合わせたヴィエイラ。だがその威力は力なく簡単に湘南に処理されてしまった。そうだった。ヴィエイラはゴール前で受けてもシュートにパンチ力がないのだった。
 時間だけが無情にも過ぎていく。もはや後ろから前線へ蹴りだすだけのパワープレーになった。だがそのいずれも跳ね返される。脚をつった湘南の選手。まだ余力のありそうなサンフレッチェはそういう選手に対して抜くことすらできないのだった。
 押して押して押しまくってそしてついに点を取ることができなかった。本当にこのチームの得点力不足は深刻である。唯一シュートを打ってたペレイラはいい形で受ける場面がなかった。もはやペレイラだけ自由にさせなかったら大丈夫というのが分かってたようだった。
 シーズン終盤になって失速。それは昨シーズンと同じパターンであった。残り1節、果たしてこのままフェードアウトして終わっていくのか。それともどこかしら希望を見出した形でシーズンを終えるのか、少なくとも最後に意地くらいは見せて欲しいと願うのだった。

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