徳島戦~決定力の差で敗戦


2021年5月15日 サンフレッチェ広島 vs 徳島ヴォルティス エディオンスタジアム広島

 山の上のスタジアムは雨が降っていた。そのせいか入場制限の掛かった客席はいつもに増して人が少ない。その中で5人入れ替え前線には永井を入れてきた。滑るピッチコンディションは不確定な要素が多く、前線での運動量を見込み立ち上がりはロングゴールにより始まった。それでもボールが落ち着いた頃にはサンフレッチェが主導権を握った。スペースへのパスはボールが走る。永井は追いつくことができずラインを割るボールを空しく観る。
 すると次の瞬間、永井が座り込んだ。足を痛めたらしい。長いリハビリから復帰したばかりだというのにまた怪我の再発。無念の交代となりサントスが入り開始早々ゲームプランが狂うのだった。
 それでも浅野のスピードと突破力によりCKをもたらす。ただ、佐々木が合わすも枠にいかない。再度のCKもシュートに持ち込めない。あと少し、あと少しが及ばない。そして森島のフリックにより浅野が前を向いてドリブルをするとゴールをまえにしてシュート。が、枠を外してしまう。一瞬のスピードや突破力を持ちながら最後のフィニッシュが下手。能力はありながらもゴールが奪えない浅野の象徴的プレーだった。
 それでもボールが握れるだけにチャンスはまた訪れるような気がした。前線からのプレスも相手のビルドアップに余裕を与えず中盤でカット。ショートカウンターで上がろうとするもなぜかここでスピードダウンして出した川辺の横パスはあっさりカットされる。ゴールを目指す気はあるんだろうか。そして極めつけはGKへのパスをサントスがカット。そのままシュートせずに切り返したことで時間が掛かってしまいクリアされてしまう。ゴールまであと3メートル。シュートすら打てずに終わってしまった。サントス、サンフレッチェに来てシュート下手になったな。全然恐さがないんだけど。
 そして今度はエゼキエウがコーナー付近で追い込まれる。バックパスかと思いきやターンをしてクロス。完璧なタイミングでサントスに入りヘッド。が、これを目の前のDFにぶち当ててしまった。ああ、これを決めきれないなんて。決定機を決めきれない。この辺りから段々と嫌な予感が立ち込めるのだった。
 ボールが取れなくなってきた。その焦りからかファールが増える。その分セットプレーも多くなりなかなか押し上げができない。サイドでサントスが持つと自分で持ち上げることができるものの、縦パスはエゼキエウと合わない。決めきれないと言ってたのはまだ幸せな方で今度はマイボールにすらならなくなった。そこでパスの出し手を増やすために後半にエゼキエウに代えて青山が入るのだった。
 それでも守りの時間は続く。たまに奪っても徳島のプレスにより後ろへ下げてばかり。GK大迫まで下がるとロングキックは100%相手ボール。もはやどのチームも大迫のロングキックがつながらないこと分かってるものだからわざと蹴らしてる節がある。そこで下げずにつなげようとするとサイドチェンジのパスがまたラインアウトしてしまう。ボールが収まらない。ミスが多い。雨のせいだろうか。そしてそんな中途半端な攻撃が徳島のカウンターを生み出してしまった。
 2対2の状況に1人外から回り込んだ。そこにパスを出されるとGK大迫飛び出す。するとそのループシュート。大迫は触れることもできずそのままゴールに吸い込まれてしまうのだった。
 失点。たった1回の好機を逃さなかった徳島。3回もあった決定機を決められなかったサンフレッチェ。その時点でもはや勝負は決まっていたようなものだった。いくら攻められても最後が決まらないという安心感は徳島に攻撃への鋭さを与えたのだった。
 追い掛けるサンフレッチェ。サントスに代え鮎川を入れる。更に藤井が入ると右サイドからクロスを入れる。何度入れても跳ね返されるものの、もっと早い時間に藤井が入ってればと悔やまれる。そして森島がファーへクロスを入れると東が合わせるとガツンという音と主に跳ね返った。ポストに当たった。そして今度は茶島が入れたボールには森島がヘッドで合わせると完全に相手の逆を取った。が、これもバーに当たって彼方に飛んでしまうのだった。
 時間を使う徳島。痛くもないのにちょっとした接触で大袈裟に倒れ込む。苛立たしいが勝ってるチームの特権でもある。時間がない。その焦りがどんどん雑なプレーになってくる。今まで一度も成功したことのない放り込みに頼るようになる。が、つなごうにも徳島のプレスを搔い潜れないのだからどうしようもない。そして無情にも終了の笛。連勝とはならず徳島に監督交代後初めての勝利を謙譲したのだった。
 決めきることができないのでどうしようもない。それならこれから全試合引き分け狙いの方がまだ望みがあるのではなかろうか。そんな悲観論を唱えてしまうのはそろそろ後ろが気になってしまったからである。点が取れない限り勝つことはできない。残留確定するまでは勝ち点を稼ぐという現実路線に舵を切ることをそろそろ考える時期に差し掛かったのではと考えてしまうのだった。

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