チェンライ戦~PK戦により制す

2019/02/19 ACLプレーオフ サンフレッチェ広島vsチェンライ・ユナイテッド 広島広域陸上競技場

 今シーズン初の公式戦。新しいメンバー、新人選手、他クラブへのレンタル移籍から戻った選手。当然スタメンに名を連ねたのは今までとは違った顔ぶれだった。世代交代も兼ねて若い選手が多い。それは新しい息吹を感じた。
 まだ2月のナイトゲーム。気温の低さは閑散とした雰囲気を導いた。それでも集まったサポーターの中で声援をピッチに送り届ける。その声に押されてサンフレッチェはパスをつなぐ。プレスをかいくぐってバイタルエリアへ侵入する。ゴール前へなだれ込む。そんな積極的姿勢がペナルティエリアでのハンドを導きPKを得た。開始早々にしてもう先制の機会を得たのであった。
 PKスポットに入った皆川。J2の熊本へのレンタル移籍から戻ってきた皆川にとってこれは結果を出してアピールしたい場面だった。それによってFWとしての自分の価値を見せることができる。例えそれがPKでもゴールはゴールだ。
 主審の合図と共に助走する皆川。速い弾道のキックを放つ。が、止められた。単純にGKサラヌーンの読みが当たったというのもある。が、そもそもが皆川の蹴ったコースが甘いのだった。
 やってしまった。よりによってせっかくのチャンスを潰してしまった。これによりすっかり皆川への信頼感が失せてしまい、それ以降のプレーを全て悲観的に評価してしまう。それは単なる自分の気分を落ち着ける為に皆川へ焦りの矛先をぶつけてるというのも大きかった。
 ところがよくよく見ると柏とサロモンソンの両サイドが度々クロスを上げるものの、ボールの来る先には必ず皆川はいないのだった。CKで競り合うも決して枠に入れることができないことに気づき、皆川がターゲットマンとして機能していないのを認知する。
ポジション取りについてもままならないこともあって、そういうゴール前の攻防では一向に勝てることがなかった。ああ、皆川よ。その成長のなさは憐れみすら覚えるのだった。本当はPKを得た場面ではいいポジション取りがあったからこそのPKの獲得だったものの、それも決められなかったのだから忘れてしまったのだった。
 70%もの支配率を占め、あとは決めるだけであるもののそれが一向に決まらない。パス、パス、パスで崩しクロスを上げても跳ね返され、ドリブルで切り込むこともできない。人数を掛けたブロックを崩すことができずぐるぐるボールを回してるだけになってしまう。強烈なキックを持つ野津田もミドルシュートを打てず打開がはかれない。それにはかなり期待感を外された気分がし、後半に入ってルーキーの東に交代してしまった。その直後に東がドリブルで切り込むシーンがあっただけに当人としても不甲斐なさが残っただろう。
 ミドルシュートで打開。そんなゴール前を固められた時のセオリーも交代で入ったルーキーの松本大哉によって行われる。ただ、あまりにもその精度がなく地球の裏側まで飛んでいくような大きく外れるシュートになってしまった。
 点が入る気配がない。段々とサンフレッチェの攻撃に慣れてきたチェンライはボール奪取から前線へ速く展開するようになる。前線ではブラジル人FWが単独で突き進むと数人掛かりで食い止めるのがやっとだ。なんだかチェンライの方が効率のいい攻め方をしてるように見えた。
 いよいよ点を取る機運が見えない状況にパトリックが皆川に代わってピッチに入る。その途端に相手エリアの深い位置までえぐれるようになる。ゴールは近づいた。だけど入れることはできない。パトリック目指してボールを供給しようとするだけマークが厳しくなる。これって昨シーズン陥った典型的な上手くいかない状況なのだった。
 そしてついに延長戦。疲れてきた相手で対してこちらも疲れていた。精度が落ちる中、それでもダイレクトパスを駆使して放ったシュートが相手のブロックに。だがそのルーズボールをパトリックが押し込む。決まった。やはりパトリックだ。やっと決まったそのゴールにスタジアムは歓喜に揺れるのだった。
 ところがこれがオフサイドの判定により取り消される。
 え、嘘だろと唖然としてしまう。そしてそんな虚につかれた心理につけ込みチェンライは攻撃の圧力を強め、危機一髪で防ぐことができたのだった。そういう危ない場面で堪えることができたのはGK大迫の働きが大きかった。最後の最後に砦となる。そんな気概は近距離からのシュートもセーブしてしまい、延長戦終了してPK戦となっても決して臆するものがないのだった。
 ついにPK戦にまでもつれこんでしまった。チェンライから始まったPK戦は1人目で両者きっちり決め、2人目に入る。するとここで相手シュートがバーの上を超えた。GK大迫の読みが当たったことによりキッカーにミスが起きたようだ。更に3人目も外してしまうもサンフレッチェが決め圧倒的有利な状況に。
チェンライ4人目のキッカーが決めるもここで決めると勝ちが決まる。入ったのは川辺。何となく表情が厳しいなと思ってたが外してしまった。バーを叩く音を響かせながらボールは枠を逸れていったのだった。
5人目、チェンライは成功。2年目の松本泰志が入る。この大一番で出てきたが松本には雰囲気があった。決して相手に飲み込まれない、逆に食い尽くしてやるという鋭い眼光があった。そしてその期待に違わずきっちりと決めたのだった。
勝った。120分の死闘を制した。これはまだACLのプレーオフ。この先を思うと気の遠くなるものもあったがとりあえずは目の前の1戦を制した。若い選手が多く出場しただけあって得るものは大きかっただろう。どんな形であれ勝つというのは希望を感じることができるというのを改めて思い知らされるのだった。

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