磐田戦~心地よき緊張感

2019年8月31日 ジュビロ磐田vs サンフレッチェ広島 ヤマハスタジアム

 ヴィエイラはまた怪我をしてしまった。代わりにレアンドロ・ペレイラがワントップを務めるものの、果たしてこれが機能するかどうか。それいかんによってはこの後の成績に大きく影響する。なにせFWがいない。パトリックは移籍してしまった。渡も何度も試されたものの結果を残せなかった。現状においてペレイラ一人というなんとも心細い状態戸なってしまった。
 残留争いのただ中にいる磐田。その切羽詰まってる状況は試合の入りから火がついていた。サンフレッチェのボールには果敢にプレスを掛けてきて思うようにボールを回させてくれない。バイタルエリアでのパスはことごとく読まれてる。フィニッシュまでたどり着けない。それなのに一旦磐田がボールを持つとなかなかに粘っこいボールキープをする。そして最前線で張ってるルキアンを狙ったボール。これをルキアンはことごとく収めてしまう。更に前を向くことによって磐田の選手はどんどん駆け上がってくる。まるでそれは空母から戦闘機が飛び立つかのようだった。
 それぞれが鋭い飛び出しで深い位置までえぐる。ペナルティエリアに入る。そこへクロスが入る。シュートが打たれる。その都度GK大迫のセーブに助けられるのだった。
 その劣勢を打開しようとボール支配率を高めようとパスをつなぐ。磐田の前からのプレスに自由を与えてもらえない。前線の選手を狙ったパスはなかなかつながらない。それなら裏を狙ったキックを出すとオフサイド。まるで活路が見いだせない。ゴール前はしっかりと蓋をされてる。その圧力を避け柏が逆サイドのハイネルに出す。ハイネル受けるとクロス。中央でペレイラ。ヘディングシュートは枠を外れてしまった。が、初めてまともなシュートを打ったような気がした。それだけでも救われた気分になるのだった。
 そして依然として磐田の攻撃は続く。その圧力からサンフレッチェにミスが目立つようになる。サンフレッチェのパスは読まれてる。パスカットするとそのままミドルシュートまで打たれてしまう。更にアダイルトンがドリブルで仕掛けてくるので守備の狙いどころがない。そんな翻弄される中、森島が負傷で退いた。そして青山が入るのだった。
 ちょうどハーフタイム直前だった。試合を動かす為に青山の投入は必ずあっただろうがあまりにも早い時間だった。そしてハーフタイムで仕切りなおすものの後半に入ってもそれほど戦況に違いがあるように思えなかった。やはりボールを持つとすぐに追い込まれる。奪われる。磐田はとくかく前に出せばルキアンとアダイルトンが何とかしてくれる。が、これを青山が読んでいた。パスカットから前線へ放り込むとペレイラが収める。前線へ走る川辺へ出る。中央へ走った東へ。数人の敵を前にしつつキープからペレイラへ落とすとシュート。ゴールまで距離はあったもののグラウンダーのシュートをねじ込んだのだった。
 先制、ペレイラ。
 これまで存在感のなかったペレイラが決めてくれた。DFとGKの間を縫うシュート。決して簡単じゃないシュートをよく決めることができた。これでサンフレッチェ加入後早くも2点決めることができたのだった。
 それでもたった1点差。磐田の攻撃は鳴りを潜めない。ルキアンを狙って入れれば何かが起こりそうな危険がある。そうして中ばかり意識すると外で展開される。クロスボールをブロックするもCK。ここからCKの応酬が始まるのだった。
 跳ね返しても跳ね返してもCK。全員戻ってのディフェンス。息をつく暇もない防戦が続く。だがこれを耐え忍ぶと球際を激しくすることによって磐田の攻撃を食い止める。体力的にもキツイだろうが運動量を落とさない。そこで磐田DFのトラップが大きくなったのを柏が見逃さなかった。猛然とした勢いでボールを奪うとそのままゴールへ突き進む。そして迷うことなくシュート。GKカミンスキーが跳びつくも実らず入ったのだった。
 決まった、決まった、決まった。意表を突かれたゴールだった。2点差としたことで大きく余裕が生まれた。そしてこれは磐田の戦意を落とすのに十分で明らかに足が止まってきたのだった。
 それでも昨シーズンこのスタジアムで2点差をひっくり返されたという事実がある。気を抜くことはできない。手を緩めることなくそれぞれが高い意識とパフォーマンスを繰り出す。ハイネルと交代したサロモンソン。東と交代して渡が入る。彼らは彼らでこの短い時間でアピールをしないといけない。チームで内でのポジション争いがいい緊張感を生み出している。
 守備では一人一人が身体を張る。競り合いでも負けない。混戦で蹴られるリスクがあっても頭で跳ね返す。その気迫はこのまま2点差を保ったまま試合を終わらせるのだった。
 11戦負けなし。3試合無失点。いつの間にかこれだけの成績を残してた。ただこの数字は意味がない。目の前の1試合1試合をこなすだけ。そんな緊張感を心地よく感じることができるのだった。

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