見出し画像

鳥栖戦〜監督不在の開幕戦

2022年2月19日 サンフレッチェ広島 vs サガン鳥栖 エディオンスタジアム広島

 広島は雪が降っていた。ピッチの上には白い雪化粧が掛かっており、スタッフによる掻き分け作業により芝生は顔を覗かせ。ただ根元には白いものが残されてただけにボールが滑ることが予想された。
 試合開始が近づくと雪は雨へと変容すると冷えた雨粒が容赦なく身体に打ちつける。そんな過酷な天候での開幕戦、スキッベ監督は昨年のメンバーをベースに大卒新人の仙波、入団3年目の鮎川を外国人選手を押し退けて先発起用したのだった。最もそのスキッベ監督は政府の入国規制の為に現地にはいない。代行の迫井ヘッドコーチがいかに新シーズンのサンフレッチェを魅せてくれるのだろうか。
 鳥栖のキックオフから試合は始まった。前からプレスを掛けるサンフレッチェ。それによりボールを奪うと塩谷の縦パスからシャドーの浅野が走る。ここで中を伺い溜めて溜めてクロス。鮎川が飛び込んだものの踵に当てるのが精一杯。浅野のスピードがあれば自分でゴールに向かうことができたはず。味方の上がりを待つもののその時には敵も戻ってきてしまう。それでチャンスを潰しまくった昨シーズンと同じ光景が繰り広げられたのだった。
 前からのプレスは掻い潜られると手薄になった守備を突かれ縦へ突き進まれる。全速力で戻って人数を揃えるも奪えない。鳥栖の攻撃は続く、続く、続く。跳ね返してもセカンドボールを拾われる。前線にクリアしても鮎川では収めることができない。結果鳥栖の攻撃は途切れることなくハーフラインより後ろでばかりボールが回っていくのだった。
 防戦一方。あれ、これってどこかで観たような。そう、これは昨シーズン散々観た光景である。守ってばかりで何も面白くないサッカー。ああ、結局去年から何も変わってないのか。そんな悲嘆に暮れていたら左サイドに高い位置で入る。佐々木がオーバーラップ。縦へ抜けた。が、DFのクリアにあってしまうもCK。前半終了間際のワンプレーを浅野が蹴った。ゴール真正面で野上。ガツンという音でクロスバーを叩いて逸れてしまった。
 ああ、タイミングが合っていた。いい弾道だった。ただボール1個分浮いてしまった。入れたかった。いい攻撃に恵まれなかっただけにセットプレーこそは決めておきたかった。
 ただ、この1つのプレーによってまだこの試合に希望が残されてることを知り、後半で仕切り直されるとばかり思ってた。鮎川や浅野は頑張って前から嵌めようと努める。努めるもののちっともボールへのプレッシャーはかかることなく前へ運ばれる。それに対して2人掛かりで奪いにいくも奪えない。それによってスペースに出されると鳥栖の攻撃が止まらない。サイドで切り込みペナルティエリアに侵入すると最後はDFのクリア。そのセカンドボールを拾うべくDFの選手が上がってくる。ああ、またサンドバック。鳥栖は前線の選手がちゃんとボールを収めるのに対してサンフレッチェはせいぜい4秒くらいしかキープできない。かといって単独で駆け上がることもできない。同じプロの選手としてどうしてここまで差が出てしまうんだろうと悲しくすらなってくるのだった。
 この状況の打開に向け浅野、藤井というアタッカーをベテラン柴崎、大学在学中の中野に代える。するとボールが落ち着くようになると再び前からのプレスを敢行すると鳥栖のビルドアップを高い位置でカット。塩谷に渡すとGKが前に出てた無人のゴールにシュート。が、これを枠に入れることができない。GKもパス回しに加わってる鳥栖に一撃を与えることができないのだった。
 ここで鮎川、青山に代わりサントス、川村が入ると鳥栖が後ろで回す場面が増えてくる。するとGKを交えてのパス回しでサントスが奪った。ゴールへ向けてドリブル。GKはサントスへのプレッシャーへと出てきた。無人のゴールへシュート。が、これが枠から大きく外れた。決定力ない。せめてもう少し惜しいシュートであったなら相手のGKもビビったことだろうが、ビビらすことすらできなかった。今年も得点力のなさは健在なのだった。
 その後も後方からのフィードに対しては裏抜けするもオフサイド。チャンスを潰しまくると歯噛みするものの鮎川と比べて間違いなく存在感はある。それはあの厳つい風貌のせいだろうか。それだけに中途半端に終わってしまう攻撃が逆に強烈に印象付けられてしまうのだった。
 もうこれは引き分けなら御の字。時間もアディショナルタイムに突入してそんな感じに思ってたその時、右サイドのワンタッチパスから数人が絡みバイタルエリアへ出されたボール、最後尾から駆け上がった野上が打った。ファーサイドへ強烈なシュート。ここでしかないタイミング、弾道、スピード。一瞬腰を浮かしかけた次の瞬間聞こえたのはまたしてもカツンというクロスバーを弾く音だった。この日野上の2回目のバーに当てるシュート。あとわずか低ければ。そのあとわずかが決めきることができなく頭を抱えてしまうのだった。
 ところがその食後、一気にカウンターを受けゴール前へ迫られる。前掛かりになってただけにまずい。遅らせろ、遅らせろ。だがボールに触れることすらできずにペナルティエリアまで突き進まれシュート。悲鳴を上げそうになったその瞬間、ボールはブロックで弾き飛ばされた。足を出したのは野上。攻守において野上の存在の大きさを見せつけられるのだった。
 そしてこのままタイムアップ。正直負けなくてよかった試合だった。完全に鳥栖の方が押していた。大きくメンバーの入れ替えのあった鳥栖に対してメンバーの替わってないサンフレッチェは後手を踏んでいた。果たしてこのままでいいのだろうか。そんな疑問の残る中、まずは監督が来日できれば何かが変わるのではというのを心の支えにするのだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?