川崎戦~完膚なきまでの敗戦

2020年9月13日 川崎フロンターレvs サンフレッチェ広島 等々力陸上競技場

 ぶっちぎりで首位の川崎。ベストメンバーで臨んだサンフレッチェに対して川崎は主力を休ませての対戦となった辺りに川崎の余裕が伺える。そんな相手にまともにやり合うと玉砕してしまうという恐れがあっただろう、サンフレッチェは自陣にブロック敷いて受ける体制で試合に入っていった。
 するとそんな後ろ向きな姿勢が川崎に勢いを与えた。ボール支配率で上回れ、ボールの獲りどころも与えなかった。個による剥がしも上手く一旦は防いだとしてもそこでまたハードなプレッシャーによりすぐに奪い返す。そんな圧力がサンフレッチェのパスにブレを与える。青山がサイドチェンジをしようと蹴ったものの誰もいとこに飛んでしまい空しくラインを割ったのが象徴的だった。もはや蹴れるとこに蹴るしかない状態なのだった。
 人数を掛けて守備に徹する。その守備ブロックの中を3人のパスがワンタッチで切り裂く。そしてペナルティエリアに入るとシュート。入ってしまった。角度のないシュートであったがあまりにも簡単に決められてしまったのだった。
 終わった。元々天の取れないチームが守備に徹してやられてしまった。攻めていったら尚更やられてしまう。前半の早い時間なのにもうそんな悲観的な気分になってしまった。
 それでも吸水タイムによって一息つくと前を向く姿勢が見えてきた。こぼれ球に反応し柏がクロス、ペレイラのヘッド。GKを外したがカバーに入ったDFにクリア。決定的だった。更には森島がクロスを上げるもペレイラオフサイド。この時ファーの柏に任せていれば当てられたかもしれない。そんな攻め手を見せたことで後半に向けて大きな希望を見出すのだった。
 メンバーを3人代えた川崎。するとその交代選手である三苫はドリブルでハイネルをあっさりと抜くとそのままゴールに向かう。追うサンフレッチェのDF。が、これもあっさり抜くと中央へ流し込むとダミアンが合わせた。後半早々もう決められてしまった。脆い、なんて脆いサンフレッチェのDF。せっかくの反撃の狼煙はこの追加点によって早々に腰折れにされてしまった。
 すると今度はバックパスしかできないサンフレッチェはGK大迫まで戻すとロングキック。これが必ず川崎ボールになってしまい再び攻められる。密集だろうと中央へ平気でボールを入れる。そして1人に対して5人掛かりでクリアするとそのセカンドボールをDFの山村にミドルシュート。決められた。またしても決められた。もうシュートを打てば入るとでも言わんばかりの軽快さだった。
 もはやこれだけでも繊維を喪失してしまったのにまたしてもすぐに川崎ボールとなりサイドからクロス。これを中盤から走りこんだ田中碧によりシュート。4点目を決められ終わってしまった。試合としてはもう完全に終わってしまったのだった。
 哀しかった。何が哀しいといって5分くらいの間に3点も奪われるというのが哀しかった。これは本当にプロのチームなのだろうか。そんな疑問を感じざるを得なかった。それでもこのまま終わるのはあまりにも空しい。せめて1点だけでも返したい。
 そんな想いも届かない。いつものようにバイラルエリアまでたどり着くも数人のショートパスでこねてばかりで何の脅威も与えていない。そんなフィニッシュにたどり着かない中途半端な攻撃はカウンターを招いてしまう。その都度DFが全速力で戻り何とか食い止めるも遂に裏を取られてしまうとそのグラウンダークロスを佐々木がハンドを犯してしまう。PKの宣告。佐々木は支え手であったことを主張するが、そもそもあそこまで完全に裏を取られた時点で負けである。これもPK苦手な大迫はキッカーの逆を飛んで見事に5点目を与えてしまった。
 惨め、惨めだった。まるで大人と子供の試合。これが同じJ1のカテゴリーの試合だろうか。少なくとも他のチームはこんな恥ずかしい試合はしてないのだった。
 最後まで諦めない姿勢。それを慰めにでもしようか。確かにこの状況で誰も諦めてない。そこを希望の糧としようか。そういえば川崎にはかつて7点取られて負けたことがあった。でもその時は退場者がいたのでまだハンディがあった。でも今回はベストメンバーでこれだけ完膚なきまでにやられてしまった。もはや何の言い訳もたたないのだった。
 視界が霞む。意識が混濁する。感覚が麻痺する。そんな虚無の中に漂うと途中交代で入ったエゼキエウの落としから浅野が切れ込みミドルシュート。スワーブが掛かった鋭い弾道がゴールに入った。返した。1点返した。相手の一瞬の隙を突いたシュートはまさに浅野の個人技だった。最後の最後にその1点で救われたのだった。
 間違いなく今シーズンのJリーグの中でも一番の一方的な試合だった。チームとしても個人としても課題が多いことを思い知らされた。中途半端な負けよりもよかったかもしれない。シーズン終わった時にこの試合が契機になる変革を魅せてくれたらと願うのだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?