札幌戦~追いついた力、その先へ行けない壁

2020年11月28日 サンフレッチェ広島vsコンサドーレ札幌 エディオンスタジアム広島

 サブメンバー中心の前節からメンバーを総入れ替えをしたがそれは当然の選考であった。あの中で一人でも気概を発する者がいればこのスターティングメンバーも変わってきたかもしれないと思うとやるせなさが残る。それだけにレギュラーとしての結果を見せつけてもらいたい。
 だが札幌は同じシステムを敷くことでサンフレッチェにとって相性の悪いミラーゲームとなってしまう。しかも前線からのプレスを掛ける戦術も一緒。共に譲り合わないガチンコ対決の様相も札幌のワンタッチパスによって守備を崩されるようになった。
 ドリブルで剥がされ、パスで剥がされ前を向かれるとバタついた守備からファール覚悟のタックル。相手を倒すもプレー続行でシュートまで打たれるも外れたことで難を逃れることができた。
 しかし、主審はここでゴール真正面からのFKを宣告する。シュートまで打たしといて外れたら戻ってFKってどういうこと?そんな疑問に城福監督も激高してたものの、ACLを目指すチームとしてこういう不可解なジャッジは慣れておかないといけない。アジアでの戦いは言葉の通じない相手がもっとヘンテコな判定をしてくるものだ。
 壁をつくって構える。キッカーの福森、落ち着いた動作から軽いステップでのキック。それがバーに当たり枠に入った。GK林跳びつくも掌に触ることもできないのだった。
 早くも先制されてしまった。しかもそれがセットプレーというのがやるせない。もう最初から絶対に入るという確信を持ってたような様子だった。それに対してサンフレッチェのセットプレーは全くといって決まらないのだった。
 森島の放ったFKは壁に当たって跳ね返されてしまう。CKでも相手の身体に当ててしまいどうにも落ち着かない。そうこうしている内に今度は札幌のCK。混戦の中を中央で合わせられ決まってしまった。2点差。逆転勝ちのないチームにとってこれはもう終戦宣告されたようなものではないのか。
 そんな悲嘆に暮れ意識が朦朧としてしまいもはやピッチの中がぼやけて見えてしまった。そんな幻惑は札幌の中にもあったかもしれない。いつの間にか前線までボールが来て浅野がワンタッチで折り返し。そこに喰いついたペレイラシュート。逆サイドへと流し込まれたのだった。
 入った、入った、入った。さすがペレイラ。この決定力、そしてそれを信じて出した浅野。最高のタイミングで最高のコースを辿ることができ、わずかな時間で1点差にまで戻したのだった。
 そのゴールの後柏に代わってヴィエイラが入ると野上が中盤でカット、川辺に渡す。ドリブルで駆け上がる。そしてゴールへと向かうヴィエイラへのパス。その疾走速度、追走するDFの追いつく場所、パスカットされないタイミング。全てを計算しつくした緩くもピッタリと嵌るパスを受けたヴィエイラがシュート。これがゴールに突き刺さったのだった。
 同点、同点、同点。2点差を追いついた。それはまるでありえないことだった。それだけに勢いは増す。炎が燃える。攻撃への圧力が増していくのだった。
 中央で受けた森島シュート。左で空いてた東に出さなかったのはセットプレーのキッカーとして福森に違いを見せつけられたが故の焦りだったのだろうか。それを皮切りに札幌にボールが入ると今度は札幌が押し上げをしてくる。その圧力を消せない。たまらず右サイド深い位置で浅野がファールを犯してしまいFKを与えてしまいまたしてもセットプレーを与えてしまう。今度こそ、今度こそは防いでやりたい。
 もはや札幌のセットプレーは全部決まるような雰囲気があったもののクリアすることができるも札幌の攻撃は続く。最後はシュートを外してくれたことでようやく攻撃をを切ることができたものの、もはやその時には反撃への炎は見事にしぼんでしまった。
 それでもわずかに灯った火は攻撃への機会を与え、森島のキックから佐々木のヘディングが炸裂する。ただ浮いてしまった。その後もカウンターから3人目の動き、ヴィエイラからのラストパスに浅野打てない。更にゴール前にGKと1対1になった決定機が来る。だがこれも浅野決めきれなかった。
 惜しい。もう少し。あと一歩。何だか毎試合こういう言葉が出てしまう。特に浅野はパワーを持ったシュートを打つのは得意だがGKを外すような力の抜けたシュートが打てない。その為にシュートパターンが予測できてしまう。
 やはりこのチームには決定力が欠けている。残りわずかな時間、本当なら勝ち越しへと怒涛の攻撃を掛けるべきなんだろうがそこでまたバイタルエリアのFKを与えてしまった。それだけでチャンスになる札幌。セットプレーがまるで実りそうもないサンフレッチェ。両者の違いはそんなところにもあったことでラストプレーとなった札幌の直接FKが枠を外れてくれたことで大いに助けられたのだった。
 2点差を追いついたのは評価していいのかもしれない。8試合負けなしというのも悪くはないのかもしれない。だけど勝ちきれないもどかしさもあった。そして決定力不足。これについてはもはや監督の力の及ぶところでもないような気がし、城福監督に対しても同情する部分もあった。
 勝ってないのだから当然かもしれないが、どこか身の置き所のなくスッキリしない試合後の心情なのだった。

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