川崎戦~負けのパターン

2018/08/19 サンフレッチェ広島 vs 川崎フロンターレ エディオンスタジアム広島

 お盆を過ぎて急に秋の気配を感じるようになった。日中はまだ蝉の声も聞こえるものの日が落ちるとコオロギの音色が響く。日没を迎えたスタジアムの空はコバルトブルーへと色彩を変えていきつつあった。
 ピッチにはナイターの光が降り注ぐ。首位決戦。これで勝つか負けるかというのは勝ち点の上でも精神の上でも大きく変わる。その意味を噛みしめていたのか、サンフレッチェは開始から飛ばしていく。前線からのプレッシング。それにより川崎の自由を奪っていく。いい時間が続く。それなのにシュートが打てない。パスで打開しようとするが最後は読まれてしまう。最後の最後でカットされるのだった。
 そういう場面が続くと川崎がペースを戻してきた。守って守って守る展開。それでもボールホルダーへの寄せをサボらないことで最後の攻撃に蓋をしていた。それにより前半はスコアレスのまま終えることができ後半へとつなげる。
 右サイドで柴崎が抜けクロス。ゴールに入ったパトリック。ヘディングが決まりゴールネットを揺らした。入った。先制。
「よっしゃあああああ!」
 パトリック。やっぱり前線にこういう強い選手がいるのが頼もしい。やはりパスサッカーのチームに対してはこういうパワープレーの方が効果がある。もう一人パトリックもいるだけにもっとサイドからクロスの入る場面をつくりたいものだった。
 ところがここからボールを持たれてまたしても守備に回る。それでも先制したことで気分が高揚してたのだろうか、中盤から縦へポーンと蹴られると簡単に裏を取られてしまう。エーシーニョが折り返し。小林にあっさりと中で合わせられてしまったのだった。
 早い。あまりにも早い同点だった。先制してすぐに追いつかれるというのは前節と同じ。こういう悪癖をつけるとどんどん悪いサイクルに入ってしまうのは昨シーズン嫌という程味わった。そしてその残留争いをしてた頃と同じ光景が繰り広げられるのだった。
 マイボールにしても前線に収められない。スローインもマイボールにできない。ゴールキックさえ奪われる。それによって川崎はいよいよ攻撃への重心を高めていった。それもそのはず、絶対にボールが奪われないのだから。
 いくら何でも攻められすぎだろう。どうしてここまでサンドバックのようになるのか。もはやつなげることなんて考えない方がいい。それなのにつねげようとしては数人に囲まれて奪われてしまう。窒息しそうな守備への圧力。そしてついにサイドを突破されクロスを上げられると追走した千葉の手に当たってしまった。主審の笛。ハンド。PKだった。ああ、千葉はまたしてもPKを与えてしまったのだ。
 GK林も読みは当たったものの小林のPKを阻止できず逆転されてしまう。あれだけ攻められ続ければこうなるのは当然だろ。そんな溜息が出てしまうもここから追いつくべくギアを上げる。相手陣地へ向かう時間が多くなる。だけどさすがに何でこういう状況になってから尻に火がつくんだろうとこれまた昨シーズンの悪癖がぶり返してしまったのだった。
 コーナーキック、サイドからのクロス。やはりこういうシーンでパトリックの強さが生き得点の匂いを感じさせる。遅かった。やるのが遅すぎた。もう1回くらいチャンスがあればと思った時に終了の笛がなってしまった。川崎は遅延行為でスローインにちっともいかなかったりしたがその分の時間は延長してくれなかった。カードも出してくれなかった。そして何かにつけ倒れて大袈裟なジェスチャーをする阿部選手に注意を与えることもしなかった。そしてそんな相手に負けたというのが大いなる屈辱であった。
 何を言っても負け犬の遠吠えである。確かに手も足も出ない時間帯があった。負けるべくして負けたと言われればそれまでだった。
 パトリック以外の得点のなさ、押し込まれる時間帯からの立て直しができない、PKの多さ。負ける時のパターンそのままの試合だった。サブのメンバーの突き上げもない。首位にいるという心の余裕がちっともないのはどういうことなんだろう。吉野や川辺といった期待の若手がちっとも活躍しないのはなぜなんだろう。その謎がもはや迷宮入りの様相を見せているようなのだった。

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