ルヴァンカップ清水戦~ルヴァンカップによる希望

2021年4月28日 ルヴァンカップ・グループステージ 清水エスパルス vs サンフレッチェ広島 IAIスタジアム日本平

 未だ1ゴールもなく未勝利のルヴァンカップ。この大会での大敗はリーグ戦へ悪い流れをもたらせたこともあって縁起が良くない。もはやグループステージ突破は諦めたてしまった。若手には線の弱さばかり見せられたことで期待値がどんどん下がってる。鮎川、長沼はそろそろ目に見える結果を出さないと厳しいのではなかろうか。もはや勝つことなど望んでない。せめて何か爪痕くらい残してくれ。爪痕くらい。
 そんな切迫感があったのだろうか、試合序盤から執拗なるプレスを掛け続ける。奪えなくともそれは相手のパスコースを限定し、高い位置でのボール奪取を成功させている。右サイドのエゼキエウが受けるとドリブルで運ぶ。縦パスを入れる。が、こういうパスを長沼は収めることができない。その結果中途半端に攻撃を終わらせるものの、清水も攻撃がぼんやりとしたものにしかなってないので大した脅威にはなってないのだった。
 ただしそれはサンフレッチェの守備が効いてたのかもしれない。守備陣も時には中盤まで出てパスの受け手を潰す。そして右SB清水が中盤に当たりにいった。積極的な守備というのだろうか。だがこのプレーで清水は負傷。せっかくの出場機会だったものの東との交代を余儀なくされるのだった。
 引いて守る展開は続く。クリアしても自陣に引いてるので相手ボールになってしまう。だが高い位置を取った柏がヘディングでディフェンスラインの裏へ出すと鮎川が飛び出しシュート。ネットが揺れた。だがサイドネット。惜しい。入らなければ意味がないとはいえゴールに近づくプレーに胸躍る。そして長沼もペナルティエリア内でループシュートを放つ。アイデアはいいが打つまでのタイミングが遅すぎた。DFにクリアされてしまうのだった。
 すると今度は左サイド東から鋭いクロスが入る。ゴール前エゼキエウは合わせられないものの徐々に攻撃のシーンが増える。守備に入ってもボールカットからエゼキエウがドリブルで駆け上がる。カウンターにつながるそのプレーに対してエスパルスは上手く遅らせる。茶島が最前線へ上がったことでパスを導くと左サイドへはたく。それを受けた東がクロスを入れるとDFに囲まれた長沼が頭に当てる。勢いのない球が飛んだ。すると当たり損ねだったことが幸いしたかGK反応できずゴールの隅に決まったのだった。
 入った。決めた。長沼が決めてしまった。恐らくたまたま入ったゴールだろう。それでもゴール前に入ってターゲットになったというのがゴールにつながったんだろう。あまりにもスタジアムの反応が静かだったのはアウェイであるから仕方ないだろう。そしてチャイナウィルス感染防止の為の声出し禁止のせいであるが間違いなくゴールであった。
 後半になるとエゼキエウに代わってハイネルが入る。せっかく先制点の起点となれたのに勿体ない交代のような気がした。それでもまだスピードを持った藤井がいた。カウンターから中から左へ。そこに駆け上がった藤井がその勢いのままゴール前へキック。するとゴールに向かったエスパルスのヴァウドに当たってゴールに入ってしまったのだった。
 追加点。オウンゴールはラッキーかもしれない。でもそれ以上に藤井の駆け上がるスピードとクロスの勢いが強かったのであった。
 2点差。こうなるともしかして勝てるかもしれないと考えてしまうも清水エスパルスは3人替えをしてくると途端に盛り返してきた。それに対してサントス、川辺を入れて安定を目論むと清水は指宿を入れてきた。この交代に不吉なものを感じたが、試合は一歩的に清水が攻める展開に持ち込まれてしまうのだった。
 奪えない。2人掛かりにいっても奪えない。ルーズボールも拾われる。クリアボールも回収される。走って走ってボールを追いかけるも清水の攻撃は止められない。するとサイドから中央へ入ったボールをワンタッチで裏へ出されると走りこんだ指宿に決められてしまうのだった。ああ、指宿。やっぱり指宿。1点差となったことでいよいよ危なくなってしまうのだった。
 守備でもさぼることのない鮎川が倒れる。足をつってしまった。さすがにもう交代だろと思ったがピッチを退いたのは長沼だった。これは最後までやれというメッセージだった。入った森島が前線でボールキープのドリブルをするとサポートに入る。献身的に時間稼ぎに加担する。サントスが変なボールロストする中でその動きはとても助けられるものだった。
 何度も何度もゴール前に迫られる。身体を張ってブロック。ギリギリな状態でのクリアはまともに前にいかない。勝ちたい、勝ちたい、勝ちたい。そんな気持ちが最後の最後を防ぎきりタイムアップを迎えるのだった。
 勝った。ルヴァンカップ初勝利。何よりも長沼がゴールを決めたというのが大きい。そして藤井もオウンゴールを誘発し鮎川は最後まで足を止めることなくチームプレーに徹した。若手が活躍した。そうすることによってチームに競争が生まれる。そしてルヴァンカップによって悪くなった流れはルヴァンカップによって変えることができるのでは。そんな希望を抱かせてくれたのだった。

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