大分トリニータ戦~同点ゴールの効能

2021年8月28日 サンフレッチェ広島 vs 大分トリニータ エディオンスタジアム広島

 ジトーッとした蒸し暑さが皮膚にまとわりつく。風を送っても熱風でより不快感が増す。ナイトゲームで日が落ちたとはいえ不快感と体力の消耗は日中と大して変わりないのだった。
 5試合勝ちのないチーム同士の対戦。順位もお互いボトムハーフに入ってることからこの結果は今後の戦いに大きく影響しそうだが、そこにサンフレッチェはスタメンを7人替えてきた。森島が復帰し、ヴィエイラがスタメンに入ったことでボールの収まりどころが計算できる。ただ、ボランチに入った土肥には不安しかなかった。どうも彼にはこれといった特徴が見いだせなく魅力というものがないのだった。
 両者共に結果の欲しい一戦。それは柏の落としからエゼキエウが抜けることによりヴィエイラのシュートというサンフレッチェの攻撃で始まり、その後も決定機をつくり出していくのだった。
 左サイドに入った東が深く侵入しペナルティエリアに流し込むとエゼキエウがワントラップでシュート。ダイレクトで打たなかったことによりブロックされてしまったもののゴールに近づくプレーができている。もっと攻勢を強めようとした矢先にボールが奪われて縦へ侵入された。前線も自陣に戻る。ドリブルでペナルティエリアに入られる。マークにつくもののフェイントに後れを取り縦へ抜かれたのをエゼキエウが身体を投げ出す。倒してしまった。その瞬間笛が吹かれペナルティスポットを指示されたのだった。
 ああ、やってしまった。決定機に決められなかったエゼキエウが余計なファールをしてPKを与えてしまった。5試合勝ててない中で日替わりで足を引っ張る選手が出る。それがこの日はエゼキエウなのだった。そしてPKはGK大迫がもっとも苦手としているだけあって完全に逆を取られきっちりと決められてしまうのだった。
 失点。もう終わった。得点力のないチームにとって先制されるとその時点で負けを意味していた。リードした大分は活力を生みパス回しに余裕が生まれる。前からのプレスが効かない。たまに攻撃に転ずることができて東がボックスに入るもシュートを打たずに折り返し。これが摘まれてしまうと大分のカウンターである。一気にゴールに向かうその攻撃は次々にゴール前になだれ込む。そこでもボールの獲りどころがなくまるで水中に潜らされてるかのような息苦しさが続くのだった。
 せっかくいい形をつくってもそれを決めきれない。その内に相手が調子づいてしまって防戦一方になる。またこのまま守ってばかりの苦行のようなサッカーを観ないといけないのかと絶望感に打ちひしがれるのだった。
 ビルドアップでは後ろで回すだけで前に運べない。土肥が下がって受けると出し処がない。すると左サイドの裏を突くボールを放つと東が飛び出た。ボール目掛けて走ると追いついた。ゴール前へグラウンダー。そこへ走りこんだエゼキエウがシュート。電光石火のような素早さでゴールに叩き込んだのだった。
 だがエゼキエウの冴えない顔。副審のフラッグが上がってた。東の飛び出しがオフサイドだったらしい。やっぱりそうか。ここのところ得点機会をオフサイドで消され続けているのでもう慣れてしまった。ただ、そこで主審は試合を止めたのだった。
 インターホンでのやり取り。VARが入ったようである。静まり返るスタジアム。長い沈黙。でもどうせ得点にはならないだろと気持ちを切り替えていると判定が出た。得点を認めた。エゼキエウのゴールである。おお、エゼキエウ、自らの失点を自ら取り戻したじゃないか。同点、これにより振り出しに戻ったのだった。
 息を吹き返したサンフレッチェ。中盤の土肥がバイタルエリアまで上がってくる。最終ラインで受けるとスルーパス。柏には合わなかったが崩しの形がつくれてる。そして守備では大分の波状攻撃に対してセカンドボールの予測でクリア。更には攻撃に転じた時、ペナルティエリアにまで侵入し自らドリブルで3人引きはがしてしまう。残念ながらこれはオフサイドで止められてしまったもののこの積極性は素晴らしい。土肥がボールに絡めば面白い。ようやく自分の特徴を見せるようになった。そしてそれは間違いなく得点できたことによる気持ちの高ぶりだった。ゴールの高揚感はやはりとてつもなく大きいのだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?