大分トリニータ戦~冷めやらない陶酔感

2021年8月28日 サンフレッチェ広島 vs 大分トリニータ エディオンスタジアム広島

 同点で迎えた後半。前からのプレスでパスコースを消すものの搔い潜られDFを押し下げられる。だがそれもパスカットから東が持ち上がりヴィエイラに出すとファーへ流されるボールに東追いつくもシュートはサイドネット。だがその直後も大分の攻撃をパスカットからヴィエイラへタテパス。そしてゴール前へのスルーパスにエゼキエウが飛び出しシュート。防がれた。防がれたけどCKになったのだった。
 左のコーナーにセットした森島。右足を振り抜く。中央の混戦に入るも荒木が頭に当てた。バーに当たる。そしてそのリフレクションはゴールの中へと叩き込まれたのだった。
 逆転。荒木久々の得点だった。決していい体制で打った訳ではない。ヘディングの強いDFがいるというのはこういうアドバンテージがある。それなのに何で今の今まで決めることができなかったんだろう。
 逆転に歓喜をするもののすぐに冷静に頭を切り替える。1点差は何が起こってもおかしくはない。現に1人少ない相手に2回も追いつかれてしまったという経験がある。まだ気が抜けない。ここで守りにいくか。それとも攻めにいくか。
 そしてサンフレッチェの取った戦いは後者だった。前に行く。チャンスが訪れる度に土肥が前線まで上がるのが効いている。それにより柏も右サイドでドリブルでの仕掛けが多くなる。フェイントにより抜けようとしたとこで倒されFKが貰える。このFKはブロックされてしまったもののもっとこういう場面を増やしていきたい。
 するとこれまで前線のターゲットとして機能していたヴィエイラが相手ボールをスライディングで止める。その際にあしをつり倒れ込んでしまった。ここでサントスとの交代が告げられる。今シーズンわずか5ゴールしかないサントスとの交代でまた攻撃が停滞してしまうのではという懸念が過ってしまった。
 大分もメンバーを入れ替えペースを変えてくる。前線へ運ぶと左右に振られ縦へ入れられる。だがこれを防いだ。ただ明らかに前線に入った長澤の高さは脅威となりサンフレッチェも土肥、野上をハイネル、今津に代えるのだった。するとこのハイネルが個人技で大分のプレスをするすると搔い潜っていくのだった。
 それによりリズムが生まれ右サイドクロス。ペナルティエリアに入った東は折り返すとすとサントスがエゼキエウへ。浮き球でのワンツー。胸トラップをワンタッチではたき自ら侵入してシュート。逆サイドに流し込まれたのだった。
 3点目。ジュニオール・サントスが決めた。エゼキエウとのコンビプレイは技巧的でその残像を思い描く。ああ、素晴らしい。2人共技術はあるものの今一つ結果の出せなかった選手。本来の力を出せばこれだけの別次元のプレーができるというのを見せつけられた。
 やはりブラジル人は別格。彼らの力がなければ試合は成り立たない。そう思っていたところで東が前に出たGKの位置を観てロングシュート。枠に入らなかったものの東も狙っている。そして攻撃に転じた大分が前に雪崩れ込もうと入ってくるとハイネルがカット。そしてそのまま左のスペースに向けて高速のフィードを放った。
 一瞬無謀とも思えたそのボールは前に進みながらも柏が追いついた。縦にドリブル、ドリブル、そしてペナルティエリアに近づきスピードダウン。中へ入れるとサントス振り抜く。決まった。まるでシュート以外の選択肢がないかのように弾丸のようなシュートがぶち込まれたのだった。
 4点目。サントス2ゴール。オープンな展開になりサントスの特徴が生きるようになった。そしてエゼキエウもハイネルも伸び伸びとプレーしている。もはや勝利は決定的となりこのまま失点することなく4-1で勝つことができたのだった。
 PKによる失点で絶望し、ぎりぎりオフサイドを抜け同点。それで精一杯いだと思ってたら逆転、追加点。こういうサッカーができたことに今までの暗黒のような感情が消し飛んでしまった。ヴィエイラで試合をつくり、スーパーサブとしてサントスが決める。一つの形が見えた。たまたま1試合だけ上手くいったのかもしれない。それでもこの陶酔感は冷めやらないのだった。

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