神戸戦~渡の2ゴール

2019年4月14日 ヴィッセル神戸vs サンフレッチェ広島 ノエビアスタジアム神戸

 1点追う形でハーフタイムを迎え後半に入る。それでも大勢は変わらない。神戸がボールを持つと付いていけない。せめてイニエスタだけにはボールを入れさせたくない。といってそこだけマークしてると右に振り左に振られる。そうやって惑されるといつの間にかイニエスタがボールを持ってる。今度はどこに出してくるか。わからない。読めない。掴みどころがない。神戸の攻撃に完全に幻惑されてるのだった。
 プレスを掛けるも徹底的に取れない。逆にマイボールになった時には神戸の圧力に負けてロングボールに逃げる。するとそれをまた神戸に処理される。パトリックはターゲットとして機能してない。ついに交代を告げられると悔しそうに振舞ってた。自分でもうまくいってないと感じてたのだろう。だが代わりに入った皆川は得点力がない。その為、同点の期待は到底望めそうにないのだった。
 左サイドで柏と野津田がパス交換。そこから打開を試みるも神戸DFが集まり次第に窮屈になってくる。もうそこから攻撃を組み立てることがわかっているのでそこへ人数を掛けられる。その分、右にスペースがあったのだろう。中盤の底である川辺が右に上がるとボールが入りクロス。密集するゴール前。渡が競り勝つ。ボールが浮かぶ。野津田が当てた。更にゴールの前に立った柏が頭を振ることによりボールはゴールネットを揺らせたのだった。
追いついた、追いついた、追いついた。もう絶対このまま点が入らず終わるんだと思っていた。まさかまさかの展開である。柏も野津田もさっきまで左サイドいたのによくゴールエリアまで走ってきたものだ。混戦状態の中、訳も分からず入ったようにも見えたが決して偶然ではなかった。
このままいけば一先ず負けはない。アウェイで勝ち点1なら十分である。前半、追いついたと安堵すると簡単に勝ち越しゴールを再び決められたことがトラウマになっている。とくかく失点だけはふせぎたい。
 そう思っているとまたしてもイニエスタがペナルティーエリアに侵入してきた。吉野がマッチアップ。だが取れない。取れない、取れない、取れな。そしてCKに逃げたのが精一杯だった。
またしてもプレー。緊張が走る。イニエスタのキックには一瞬たりとも気が抜けない。が、 さすがに2回もやられたとあってこれは跳ね返すことができた。だが古橋のドリブルを防ぐ流れの中でまたしてもCK。今度蹴るのはポドルスキ。これをGK大迫キャッチ。それによりボールをつなげることができる。中盤を経由して縦パスが入ると川辺がドリブル。ペナルティエリアに侵入、そしてクロス。が、大きすぎた。と思ったら逆サイドでサロモンソンが拾う。クロス。フワッと浮いたクロスは誰も触ることができない。そう見えたそのボールに下がりながらも脚を投げ出した渡。それがヒットしゴールに入った。
逆転、逆転、逆転!2度追いついた後、逆転してしまった。しかもそれが渡のゴール。身体を投げ出すアクロバティックなシュートはかつてのエース、久保竜彦を思い出させた。そんな郷愁も入り混じりその喜びは僥倖と化すのだった。
このゴールは神戸の精神に大きなダメージを与えた。それからというものサンフレッチェに俄然勢いが増す。前半から飛ばしてる柏の運動量が止まらない。縦パスを受けると迷わずドリブル。DFに立ちふさがれるとまたぎのフェイント、そこから野津田へスルーパス。ボールに追いつきクロス。ゴール前、合わせた。渡のダイビングシュート。わずかな時間で2点も決めてしまった。そしてそのどちらもFWらしいゴールだった。
駄目押しとも言える追加点。この時間で2点差は大きい。ここから渡を稲垣、サロモンソンを清水と交代させていきいよいよ守備への意識を高める。ポドルスキの弾丸シュートは大迫が止め、DFが剥がされゴール前までの侵入にはボランチの松本がカバーをし、皆が最後まで走り神戸の攻撃に対処した。それが功を奏し2-4というスコアで終わることができたのだった。
イニエスタがいると勝てないのか。2度勝ち越された時にはそう思ってしまった。でもそれを追いつき追い越した。そして何よりもうれしいのは渡の2ゴールであった。
ストライカーというのは単純にゴールが多いだけではない。その選手が決めることによって大きく盛り上げチームを勢いづける性質を持つ。そんな存在になることを入団してきた時から期待していた。そしてこの試合の2つのゴールはその理想像に大きく近づくものであった。

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