東京戦〜負けた直接対決

2919年4月19日 サンフレッチェ広島vsFC東京 エディオンスタジアム広島

首位攻防戦。
去年もこんなこと言ったなあ。そんなことを思い出しふと苦笑いが浮かぶ 。結局のところ両方とも優勝できなかった。なのでこの時期の順位はそんなに関係ないということが実証されて、試合へ臨む意識も過剰になることなく、単なるリーグ戦の1試合でしかなかった。
そんな達観した気持ちでいたものの、平日のナイトゲームとは思えない観客がいて自分の冷めた装いに恥辱を感じるのだった。更にスタメンの発表でワントップに渡が入ってることで息が荒くなった。ここ数試合のゴールという結果には他のFWを押しのけてついにトップというポジションを手にしたのだった。
勝ちたい。勝ちたい、勝ちたい、勝ちたい。そんな情念がふつふつと沸き立った。首位決戦。だからこそ勝たねばならないのだ。
そんな情念を持つも攻撃という意味ではまるで活路が見いだせなかった。ストロングポイントである左サイドの柏は縦へのドリブルができない。クロスが上げられない。そして中央はというと蟻の入る隙間もないくらいにびっしりと守備を構築され攻めあぐねる。その結果中途半端な攻撃で終わってしまうとロングボールを蹴られてしまう。永井が走る。快速が追いつけばビッグチャンスになる。そんなシンプルな攻撃だった。が、俄然そちらの方が相手に与える脅威は大きいのだった。
サンフレッチェもそういうカウンターには警戒はしてる。攻撃を遅らすことができれば全員戻ってブロックを敷く。だがFC東京と比べると盤石には見えない。それもそのはず、永井がボールを持つとスピードだけでぶち抜くからだ。その度にサンフレッチェの土塁はナイフで突き刺されたような瓦解を見せる。永井が切り裂きその折り返しのパスを高萩が打つ。真正面のシュートだったが足にヒットしなかったお陰で枠を外してくれたのは幸運だった。
しかし、その前にはディエゴ・オリベイラの折り返しをシュートするという場面があった。ポストに当たったことで難を逃れたが間違いなくそういう危うい場面はFC東京の方がつくり出してる。サンフレッチェの攻撃は全てのパターンが読まれてるかのようだ。それもそのはず、東京の長谷川監督はサンフレッチェの試合には絶大なる老獪さを発揮する人なのだった。
パスをつなぐだけでは駄目。そこで自陣から最前線の長いボールを入れる。ターンをして前に繰り出す。だがラストパスはゴールラインを割ってしまった。ワンタッチ多かった。更に右のサロモンソンも敵の背後を突いて上手く抜け出したのに最後は摘まれてしまった。これもワンタッチ余計な気がした。手数を掛けてしまい却ってそれが仇となってしまってるようだった。
FC東京の攻撃は効率的だ。その違いを生み出してるのは高萩のワンタッチパスだった。永井やディエゴがパワーで壁を崩そうとしてるのに比べて高萩はほんの小さな穴に針を突くようなパスを入れて岩をも砕くようだった。
最終ラインに入ってくるボールにクリアで対処するもそれは一杯一杯のような余裕のなさを感じた。まるでどこから襲撃されるかわからない。そのタイミングもその位置もその角度もまるで五里霧中。そしてゴール正面に来たボールには頭に当てるのが精一杯になり横にルーズボールが落ちる。それを拾われ横パスはディエゴ・オリベイラへ。シュート。吉野の懸命なスライディングも大迫の横っ飛びも空しくゴールに突き刺さったのだった。ああ、決められた。ほんのわずかな瞬間である。あのワンチャンスを決められてしまった。
もはやこれでお手上げ。そんな気がした。それもそのはず、サンフレッチェにはチャンスらしいチャンスがまるで訪れなかったから。どこをどうやってもシュートすら打てそうになかった。
が、そんな時、渡が中盤からドリブルでゴールに向かった。個で打開していきCKを得たのだった。
ああ、渡。諦めてない。
そしてそのプレーに触発されたかのように川辺がミドルシュート。更にはサイドからもクロスが入るようになる。でも徹底的に東京は跳ね返す。クリアする。もはや競り合いにすらなってないと思いきや、短いクリアボールを渡が胸トラップ、落ちるボールをボレーシュート。弾丸のようなボールがゴールに放たれた。
ガンッ!
ゴールポストの乾いた音と共にボールは弾き出されてしまった。ああ、入ったと思ったんだが。でもここにきてああいうシュートを打つ渡に大きな希望を見出した。
ところが反撃はここまで。0-1で負けてしまったのだ。そういえば昨シーズンも初めて負けたのが東京だった。また今年も同じパターンを繰り返すのかよと自嘲気味になる。
勝敗は点を入れたか入れなかったかの違いだ。決めたディエゴ。決められなかった渡。少々酷な評価だがワントップのポジション争いの中での敗戦は印象としてはよくない。それでも最終的に一番ゴールを近づける動きをしたのは渡。できればもっと早い時間にそれをやってほしかった。それがないから東京は気持ちよく攻めることができた。
過大な要求なのは分かってる。それでも渡には負けて欲しくなかった。ディエゴに負けて欲しくなかった。あのポストに当たったシュート、あと何センチずれたら入っていたんだろう。ただの枠外シュートでしかないはずなのにあのシーンだけずっと残像として残っているのだった。

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