マリノス戦~城福監督、引き出しの枯渇

2021年3月7日 横浜Fマリノス vs サンフレッチェ広島 日産スタジアム

 デイゲームであるにも関わらず入場した選手はベンチコートを羽織っていた。両サイドにエゼキエウ、藤井というスピードのあるアタッカーを入れて裏を取ることで攻撃を進める作戦だった。そのせいか開始早々マリノスにボールを支配されてスピードに乗った前田がシュート。早々に決められたかと思ったが外れてくれた。これを皮切りにして完全にマリノスのペースで試合が進められるのだった。
 ボールが取れない。エゼキエウが走ることで左サイドを深い位置まで押し込める。だがCBへといなされると再度そこへもプレッシャー。するとその強引な追い込みによりボールを奪った。入れ替わりゴールへ向かう。ペナルティエリアに入った。倒された。PK、PKだ。そこにはパスワークの華麗さも技巧めいたこともない。こういう愚直なまでのプレーが道を切り開くという手本のようなプレーだった。
 PKスポットに立ったのはジュニオール・サントス。確かに一番確実性がありそうだが緊張する。笛の合図と共にステップを踏みボールを叩きつける。次の瞬間にはバチンという音がゴールネットの揺れと共に響き渡るのだった。
 先制。点の取れないチームにとって幸先が良い。これにより両サイドのスピードを生かすという作戦もより効いてくる。左サイド藤井はボールが入ると縦へ抜けようとする意志が強い。ただカットインでは奪われてしまう。まだミキッチのレベルには達してない。預ければ単独でなんとかしてくれる。そういう選手がいると攻撃は楽だ。そしてそういう選手がトップにいたのだった。
 ジュニオール・サントス。中盤でボールを持つとボールを奪われない。そして機をみるや前へドリブル。ドリブル、ドリブルと突っかけていくと倒された。少し距離はあるがいい位置でのFKが貰えた。
 キッカーは青山。フワッとした壁を超えるボールをファーサイドに出すと佐々木が飛び出し角度のないシュート。DFのブロックによってリフレクション。それをヴィエイラシュート。GKブロック。が、そのこぼれ球を東が押し込んだのだった。
 追加点。雄たけびを上げる東。だがここで水が入った。VARによるチェックである。静まり返るスタジアム。オフサイドがあったか主審による確認が入る。そしてピッチに出て示したのはゴールだった。やった、間違いなくゴールが決まったのだ。
 2点先制したことで精神的にも有利になり更に畳みかけようとする。中盤でもプレスでパスコースを限定する。それで中途半端に前線へ浮き球を出される。荒木が目測を誤り倒れる。落下点にいた前田は野上を張り倒しゴールに突き進みシュート。ゴールにぶち込まれてしまった。
 前田大然。また前田である。この選手は本当にサンフレッチェ天敵である。とてもゴールが生まれるような状況じゃなかった。それを決められた喪失感はあるもののだがまだ1点差である。これ以上やられなけりゃいい。
 だがマリノスの波状攻撃が続く。サンフレッチェの悪い癖だが一旦攻められるとみんな下がってしまう。2つのラインになったゾーンディフェンスはボールの獲りどころもないしクリアしても相手ボールになる。これで守り切れないのに一向にこの守備戦術を修正しようという気配がない。たまらずファールをしてしまうとクロスを送るのに都合がいい場所でのFKを与えてしまいゴール前へのクロスからヘディングを合わせられる。タイミングドンピシャリ。だがここでGK大迫が横跳びにより弾いた。
 助かった。大迫には助けられてる。CKやクロスに対しては飛び出してキャッチする。それにより相手の流れを一旦切ってくれる。ただ、ゴールキックの後がマイボールにならないものだからほんの一時の息抜きにしかなってない。それでも右サイド藤井に入ると縦へと推進していく。たまらず倒されFKを得たのだった。
 青山がセットしてFK。混戦の中最後は弾き返される。そしてプレーが続いて行ったがプレーが切れたとこで主審の笛により中断する。VAR。一体何が起こったか。リプレイが流れるとマリノスの選手が不自然に上げた手にボールが当たってる。これってPKじゃないか。すると主審はペナルティスポットを差しPKのジャッジを下した。
 思わぬ形の得点のチャンス。2回目は外す可能性が高い。そのせいか今度はヴィエイラが立っていた。主審の笛と共に長い助走から足を振り抜く。GKが飛んだ。読みは当たってた。が、ボールの威力が勝りゴールに叩き込まれた。
 3点目。凄い、夢のようだ。思わぬ形で再び2点差としたのだった。
 そのままハーフタイムを迎えマリノスは選手を入れ替えてくる。元々ボール支配率はマリノスにあったが尚の事ペースを上げていく。全体的に重心が下がるが佐々木がロングボール1本でヴィエイラの裏抜けを導き出す。が、簡単に奪われすぐに攻守交替する。嵩にかかってゴールに向かうマリノスはペナルティエリアにパスを入れる。エリア内で受けたオナイウ反転、シュート。GK大迫も掌に当てるも防ぎきることできず決められてしまったのだった。
 もう後がない。それなのにどんどんサンドバック状態になる。メンバー交代で浅野、森島を入れるも試合のペースは変わらない。対してマリノスは交代選手がそれぞれの特徴を生かしサンフレッチェの守備を翻弄する。そしてついにサイドからのクロスを入れられると飛び込んだ前田に決められてしまったのだった。
 同点。追いつかれた。前節に続いてまた追いつかれた。もはやこれは同点なら御の字なのだろうか。戦況は圧倒的に押されてる。跳ね返しても跳ね返してもセカンドボールを拾われる。前にいるのがヴィエイラ一人、奪っても出しどころがなくこれでは3バックだろうが4バックだろうが関係ない。いい加減この守備戦術は限界じゃないだろうか。
 この一方的展開の中でも浅野がカットインからミドルシュートを打つ場面はあった。それでもGKに防がれてしまうのはペナルティエリア内に入れないというのが大きい。攻撃はジュニオール・サントス頼み、戦術に上積みがない。このまま同点で終わったのは悔しいようでいて救われたかもしれないのだった。
 さすがにもう城福監督も引き出しがなくなってしまったかもしれない。ここからよくなるイメージがまるで沸いてこない。果たして今シーズン勝てることができるのだろうか。4チーム降格するだけに早くも勝ち点が気掛かりになってしまうのだった。

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