川崎フロンターレ戦~引き分けしか望めないチーム

2021年8月21日 サンフレッチェ広島 vs 川崎フロンターレ エディオンスタジアム広島

 スタジアムには雨が降っていた。豪雨の影響で前節中止になったものの、西日本を包む低気圧は依然として滞留し続けている。2週間の中断期間を得たのだが、なぜかその間に怪我人が続出してしまい限られたメンバーしか残されてなかった。ただ、ベテランの柴崎がリハビリから復帰したのだけが救いであるのだった。
 守りに入ると余計に嵩になって攻め立てられる。川崎にはかつて惨敗したことによりそれは痛いほど叩き込まれてるだけに序盤から徹底的に前からプレスをかけていった。相手に主導権を与えない。エゼキエウが前に出て、更に青山が中盤の底から上がって圧力を掛ける。そんな二重三重のプレスにより川崎にもミスは生まれ攻撃へと転じる場面が生まれるのだった。その度によくやったと賞賛する。もはやゴールまでは望まない。あまりに惨めな試合にならなければよかった。
 ボールを奪ってもパスの出し処がない。そんな中、前線のエゼキエウに渡って前を向いた。ゴールへ向かって上がるサントス目掛けてスルーパス。が、合わない。そしてエゼキエウ自らパスカットするとそのまま上がっていく。前に走ったサントス、柏。どちらを選択するかと逆を突いたパス。だが精度がなく柴崎に届かなかった。
 ああ、エゼキエウはパスが下手だ。守備をさぼらないしドリブルで変化をつけられるのに今一つ試合に絡んでないイメージがあるのはそういうとこだったのかもしれない。
 それでもゴールへ向かう姿勢はしぼむことはなく2人、3人とペナルティエリアに入り込む。ゴールまであとわずかな距離まで迫りながらも打てずに終わってしまう。ああ、やっぱりシュート打てない。
右サイドのスローインからリスタートされ藤井が入れる。受けた柴崎はサイドに追い込まれる。それでも強引に引きはがしサイドをえぐる。立ちはだかる川崎のDFの目線を逆手に取りマイナスクロス。スルスルスルと流れると柏がシュート。入った。ゴールの隅にグラウンダーのシュートが叩き込まれたのだった。
決まった、決まった、決まった。あれだけ点を取ることができなかったサンフレッチェがちゃんとした流れの中で先制することができた。この流れは悪くない。まだ時間は無限のようにあるので喜んでばかりはいられないものの今季無敗のチームからゴールを奪ったというのは限りない勇気を与えたのだった。
 追いつこうとボールを運ぶ川崎。それを佐々木が食い止めるとサントスへ預ける。そこからタテパスはエゼキエウへ。DFと競りつつもライン際に持ち込みシュート。が、GKにブロックされCK。ハイネルが蹴ると異常な変化を起こすものの山を越えてしまった。風が出てきたようでコントロールも定まらなくなったのだった。
 すると後半では川崎が風を味方に波状攻撃を掛けてくる。ブロックしてブロックしてブロックしてクリアする。パス回しに翻弄され、たまらずファールしたのはゴール正面。FKは風に運ばれるので脅威。だが蹴られたボールはゴールの上を素通りして助かった。だがGK大迫の蹴るゴールキックは100%の確率で川崎が収めてしまうのだった。
 マイボールにできない。スローインすら取られてしまう。エゼキエウに代わって浅野が入るも情勢は変わらない。むしろ裏に出されたボールに反応できてない。逆に川崎は再三裏を狙ったロングボールを蹴るようになった。それを何とか食らいついてクリアしてたもののメンバーを代えることで一層裏への鋭さが出てきた。
 中盤で獲り切るべくボールにアタックする。が、逆サイドへロングボールを放たれると旗手が抜け出し佐々木と1対1。シュートコースを切ったものの中へと入れられるとダミアンに入られ打たれた。そのまま一直線で入ってしまった。3人もの選手が戻ったもののたった2人の攻撃を止めることができなかった。
 同点。もはやこうなると勝ちは望めない。シュートどころかボールを持つことすらできない。その後サンフレッチェも交代でフレッシュな選手をいれていくものの今一つどういう意図なのか読めない。そして間違いなく交代する毎にチーム力が停滞していった。青山でなく柴崎、ハイネルが下げた。そしてついにはサントスまで下げてしまった。すると前線でキープできる選手がいなくなったことで一層防戦一方になってしまうのだった。
 投入された東、松本、長沼。この3人が途中から出ると余計に悪くなる傾向があるがそれはこの日も変わらなかった。FWとして出場した東はボールをちっとも収めることができない。松本も存在感がない。長沼はもはや信用してない。すると今度は青山が座り込んでしまう。限界だったようだ。それを見極められなかった城福監督の判断は完全なる失敗だった。
 早く終わってくれ。何が何でも勝ちたいとゴールに向かってくる相手に対して引き分けで終わらせようとするもがくサンフレッチェ。いささか情けなくもなるが現実的な戦いであった。もうボールもつなげることもできないので取ったらロングボール。GK大迫もラインを割ってもいいのでとにかく前に蹴り上げる。そしてペナルティエリアでクリアしたとこで終了の笛が鳴り、見事勝ち点1を取ることができたのだった。今シーズン11回目の引き分けだった。
 これを勝ちにすることができれば。当然順位も上がるものの点が取れないのでしょうがない。そして先制しても追いつかれる。攻撃に重心を傾けた相手に弱いというのはこの試合でも露呈してしまった。
 前半が良いと後半やられる。何度同じことを繰り返してるんだろう。勝てるチャンスはあったと思う。だけど負けなくてよかったとも思ってる。もはや最初から勝つという気がしなくなってるのが最も哀しくあるのだった。

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