札幌戦~ミシャに打ち勝つ

2020年9月5日 コンサドーレ札幌 vs サンフレッチェ広島 札幌厚別公園競技場

 城福監督にとってミシャは天敵である。この2年、ルヴァンカップでやられてしまって以来そういう印象が拭えない。サンフレッチェを知り尽くしたミシャ、対策をして相手の良さを消す以上に自分たちのストロングポイントを際立たせることによって勝ってきた。そんな戦い方での敗戦は強く敗北感をもたらしたものだった。
 ところがそんな札幌は6戦勝ちなし。対するサンフレッチェも4戦勝ちなしと似たもの同士の対戦となってしまった。それだけにこの試合は落としたくない。そんな決意の表明として開幕スタメンをそのまま持ってきた。確かにこのメンバーで勝ってた時期があった。だが今やDFは失点続き、攻撃陣も点が取れず中でもヴィエイラの決定力のなさは致命的でもあった。同じ負けるなら若い選手を使ってもらいたい、そんな気がしていたのだった。
 そして勝ち点3を渇望する両チームの戦いにサンフレッチェは前からプレッシング効かせFKを得た。ハイネルの蹴ったキックをペレイラが押し込むもオフサイド。ラインコントロールに引っ掛かってしまったものの、幸先のいいスタートであったものの、すぐに札幌の小気味いいパス回しに翻弄されるのだった。
 まずはトップのジェイにロングボールを当てると必ずと言っていいほど収めロペスに落とすとサイドに振りクロス。これをジェイ短らが飛び込むと打点の高いヘディングが炸裂する。枠を外し安心するもその後も札幌の猛攻は続く。自陣に引きこもって守備に徹するサンフレッチェ。クリアしてもクリアしてもセカンドボールを拾われる。そしてついにそんなクリアボールをがら空きのバイタルエリアに飛んでしまうとルーカス・フェルナンデスがシュート。GK大迫は飛び出していた為無人のゴールとなってしまいシュートを打たれた時はよもやこれまでと思ったものの跳ね返された。そのこぼれを押し込まれるもまたしても跳ね返された。後になって分かったが、青山がカバーに入ってブロックしてたのだった。
 最後の最後をやらせなかった。そしてこういう粘りがハイネルに縦へロングフィードを打たせた。ただこの一発を狙ったキックはキムミンテに処理されようとした。が、追走したヴィエイラは長い脚を入れる。ペナルティエリア内で入れ替わった。その瞬間倒れた。キムミンテにより倒された。主審の笛、PKの宣告だった。
 ヴィエイラのボールへの執念が実った。キッカーはハイネル。先制のチャンス。短い助走によりキック。横跳びしたGK。次の瞬間「ガンット!」という乾いた音が鳴り響きポストに跳ね返されてしまったのだった。
 ああ、ハイネル。何となくマズイ予感はしてたんだよな。やっぱり得点力不足のチームはこんなのも決められないんだ。そんな現実をまざまざと見せつけられたのだった。
 ハーフタイムを挟み、出てきた時にハイネルは茶島と交代をしてしまった。そしてチームも前線からプレスでボールアタックするようになっていった。するとどういう訳か奪った後攻撃が行き詰らない。DFの野上が右サイド茶島の追い越しを掛けて2人目、3人目の動きが生まれる。更に茶島がドリブルで仕掛けると一旦は奪われるもまたボールが戻って来る。まるで攻撃の意思にボールが感化されたかのようだった。中央に渡り左の柏へ。プレッシャーのない状態でのクロスはゴール前。密集の中へ飛び込んだのはヴィエイラ。見事GKのいないスペースにヘディングで入れたのだった。
 ヴィエイラ、ヴィエイラ、ヴィエイラ!あの長身がDFとのミスマッチを生んだ。PKも獲得した上に自らゴールを決めてしまった。今まで決めきれないだのシュートが下手だの言ってゴメンナサイ。ちゃんと狙ったコースにヘディング決めたのだった。
 ここで引くことなく攻めていきたい。浅野と東を入れて活性化を狙った。が、後がない札幌はぐんぐんと攻め立ててくる。さすがにその圧力には気圧されるものがあり遂にトップのペレイラに代わりDFの井林を入れる。それはもう逃げ切りのサインだった。時間はそろそろ90分に迫っている。ここは堪え凌いでいこう。
 だがサンフレッチェは守備をする中でもインターセプトを起こし、札幌DFの裏へスルーパス。前掛かりに来てる分スペースがある。裏へ飛び出した浅野が追いつく。バイタルエリアに運ぶとDFにコースを切られるもカットイン、シュート。ニアサイドのゴールに叩き込んだ。
 追加点。圧倒的にボール支配をされてる中で逆に引き離した。もはやこれは勝ちを決定付けたゴールなのだった。スーパーサブがいないと言われたチームにおいて交代選手の決めたという意味でも大きな意味を持つゴールなのだった。
 5分のアディショナルタイムをやり過ごし試合を終えることができた。ヴィエイラの狙いすましたヘディングシュート。浅野の相手を振り切ってのシュート。どちらも高い技術の賜物である。どうして今まで決められなかったんだろう。さすがにあそこまでシュートを外しまくってるので城福監督が可哀想になってたところだった。
 調子が悪いとはいえミシャの札幌に勝てたのも呪縛を解き放つような気分だった。主導権を握られる時間が多かっただけにまだまだ課題は多い。それでも久々の勝利は停滞してた何かを打破するきっかけになったのではないか、そんな気分になってしまうのだった。

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