鳥栖戦~誤審に助けられつつ勝利

2019年7月13日 サガン鳥栖vs サンフレッチェ広島 駅前不動産スタジアム

 鳥栖に負けてから調子を崩した。
 昨シーズン、圧倒的勝ち点で首位を走ってたのも、鳥栖の敗戦から失速した。そして今シーズンも連敗中戦いまたしても負けた。いつしか大きな壁として立ちふさがり、鳥栖に勝つのは至上命題となるのだった。
 選手もそれは意識してるようで立ち上がりから速いプレスで鳥栖の自由を奪う。そしてボールを奪ったら前を向く。きっちりマークにつかれても前線の森島はターンをして敵陣へと突き進む。それによってチーム全体が押し上げられる。サイドからクロスが出る。するとパトリックがどんな体勢でもボールに合わせる。そんな強引さに鬼気迫るものを感じた。
 ところがよかったのはここまで。その後は前を向く意識が薄れバックパスが多くなり、いつもの遅行へと移るのだった。あくまでも自分たちの安定を優先する。だがその間に相手はみんな自陣に戻ってしまい網を張られてしまう。結果縦へのパスが通らなくなるのだった。
 最後尾から横パス、横パスと繰り返し、縦へとチャレンジのパスを入れれば捕らわれる。サイドで張るクエンカに渡るとボールを取れない。ドリブルのテクニックは異端だ。そこに原川が絡んで深くえぐりこむのでたまったものではなかった。
それでも何とか跳ね返す。そこまではいいもののセカンドボールを拾われてしまうので2次攻撃とつながっていく。何度食い止めても止まらない。ああ、悪い展開だ。いつもここからやられている。でもまだ集中力は続いていた。クロスは上がるもののそのほとんどをDF陣は跳ね返したのだった。
 一進一退。ボール支配率もイーブンで進むも後半に入ると一方的に攻められる時間に入る。全員が自陣に戻り守備に徹する時間。60分辺りから出るこの逆境。何かを変えないといけない。だけど変えるには均衡を壊す怖さがある。それでも城福監督はここで守備に強い稲垣に代わって松本を入れる。それはこの試合を引き分けで終わりたくないという明確なメッセージだった。
 そのせいか、ボールが前出るようになる。しっかりとした守備の後、柏につなげることができる。前へ運んでいきシュートにつなげる。そして相手のパスもカットでき再び前を向ける。ハイネルがスルーパスを狙う。柴崎が裏への飛び出しを狙う。サイドでのパス回しに柏も入るとCKを得ると渡が入った。セットプレーで競り合いに強い渡を入れるのは抜群のタイミングだった。
 CKはゴールにつながらないもののセカンドボールを逃さない。森島が倒されながらもサイドからクロスを入れる。中で合わないがルーズボールをパトリックが全力で追いハイネルにつなげる。クロスが入る。クリアされるももう一度入れる。またしてもクリア。それでもその落下点での競り合いにより柏がファールを貰ったのだった。
 直接は狙えないがいい位置でのFKである。蹴るのは森島。敵味方一列に並んだゴール前のスペースにギュンと落ちるボールを入れる。抜け出したパトリックの頭。折り返すと真ん中で合わせたのは荒木。GKの脇をかすめて入ったのだった。
 ただ、これはパトリックの出だしが早かった。オフサイドだろうと笛のなるのを待っていたものの笛は鳴らない。歓喜の渦にいるサンフレッチェの選手。認められたのか?どうやらゴールとして認められたようだった。
 思わぬ形で先制した。でもどこか居心地が悪い。勝って欲しいのは山々だがこのまま1点差で勝つと単に誤審で勝っただけとなる。それは許されない。絶対に追加点を取らないといけない。間違いなく勝ったという証明を出さないといけない。
 とはいえ先制点により勢いが増していき、鳥栖に攻撃の芽を与えない。中盤ではぽっかり空いたスペースで渡が受けることができ、サイドのハイネルに出すと自分もそのまま前線に向け猛ダッシュ。裏へのスペースへ出る動きにつられたDFによりカットインしたハイネルは余計中へ入ることができシュート。グラウンダーのボールはスルスルスルッとゴールの脇に吸い込まれていったのだった。
「よっしゃあああああぁっ!」
 立ち上がり吠え上がった。今度は純粋に喜ぶことができた。そして今度こそは間違いないゴールである。残り時間10分。勝利をぐっと手繰り寄せるゴールだった。
 鳥栖も豊田を入れパワープレーに出る様相だ。何度かサイドをえぐられるも最後はDFがよく跳ね返す。そしてセカンドボールも収まる為に防戦一方にならない。そこに余裕が生まれ前線のパトリックのスピードを生かすロングフィードが生きるのだった。
 そしてタイムアップを迎え、3試合ぶりの勝利に喜びを分かち合う。誤審により先制するもその後追加点が入ったことで心置きなく喜ぶことができる。久々に勝った。まるでもう何年も勝ってなかったかのような感覚だ。
 鳥栖の呪縛を解くことができた。そして運にも助けられた。これは良い兆候が生まれつつあるのでは。照明の光によって雨足がはっきりと浮かぶ中、そんな心地よい気分に浸るのだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?