天皇杯セレッソ戦~終了間際の逆転勝利

2022年9月7日 セレッソ大阪 vs サンフレッチェ広島 ヨドコウ桜スタジアム

 ウェイクデイのナイトマッチ。一発勝負の舞台として敵地桜スタジアムに乗り込む。サッカー専用の上にコンパクトな造りのスタジアムの照明はピッチだけにしか光を当ててないのでどことなく暗い印象がある。その為観客席の人もよく見えない。そんな中での声出し応援であるがそれでも応援があるというのは気分が乗るのだった。
 そして試合始まると最初からヒートアップする。両者プレスと走力の応酬でなかなか主導権が行き渡らない。サンフレッチェが高い位置からプレスに行けば正確なキックで前進され攻めてきたところをDFが食い止め反転攻勢に出ようとするもパスの出どこに必ずセレッソの選手が食いつく。あまりにもボール保有する時間がない為にそもそもピッチも狭いんじゃないかと錯覚してしまうのだった。
 だがそれも時間の経過と共に徐々にセレッソに傾いていき速いテンポのパスワークと走力でゴールを脅かす。その都度DFが最後の最後に身体を入れ、脚を入れてブロックする。そしてそれすらも通り抜けてしまうシュートはGK大迫が的確に処理するのだった。
 均衡状態。今ならまだそう言えるだろう。だが前線に出そうにもナスはボールの収まりが悪くピエロスに至っては完全な空回り感がある。右サイド茶島は縦への突破力がなくて打開策がない。もはやメンバーの入れ替えをするのは必須であるだけに何とかこのまま無失点で前半を終えたい。そう思った矢先、右サイドから為田のアーリークロスが入る。ゴール前に並んだ選手の中でタガートの頭に触れるとGK大迫の反応も追いつかずゴールに吸い込まれてしまった。
 やられた。そもそもが右サイド茶島は縦を警戒して中へ入られたことでマークが遅くなってしまった。だがそれにしても距離的な危険も薄かったもののそれをタガートの頭にピンポイントに合わせた為田のキック精度の高さは如何ともし難かった。たった一つのキックでゴールをこじ開けてしまうセレッソの攻撃力はやはりすざましかった。
 そして何とか1点差のまま前半を終えるとやはりメンバーを入れ替えてた。ナス、松本、佐々木に代えてエゼキエウ、川村、住吉という今まで途中出場で活躍した選手を入れてきたものの些かそれは期待しすぎという感じはした。それでも後半開始早々は特にエゼキエウのドリブルがチーム全体をひっぱり上げていく効果を生み出し攻撃へと舵を切っていったのだった。
 最終ラインから出したボールを一人で持ち上がるエゼキエウ。セレッソの守備も追走するも取れそうと思った瞬間に切り返して後を向く。これだけの能力がありながら出場機会に限りがあるというのは不憫な気がしたもののそれだけに試合数を多くすべくこの試合を勝ち抜けなければいけない。そんな気概から僅かな隙にもシュートを打ち込むものの枠に入らなかった。やはりセレッソの守備は簡単に崩れない。むしろその守備ブロックの硬さに攻め手をなくしてるかのようだった。
 すると今度はセレッソの方が息を吹き返したかのように攻めてくる。追加点を取ってシャットアウトに来てる。これには住吉も健闘し何とか耐え切ったもののGKからのビルドアップの時点で頭うち感が出てしまうのだった。
 GK大迫から塩谷に渡すと前からのプレスに遭い再び戻して蹴り出したボールが相手に渡る。それによって再び守備に戻るのだが負けてる状況で急いでないその一連のプレーが不思議でならなかった。本来ならもっと手っ取り早くロングボールを蹴って前線のピエロスに競わすというのが常道なような気がする。負けてるのに全く急いでる感がない。どういうことだろうか。
 そんな疑問を抱えてる内に遂に前線ターゲットとなるヴィエイラがピエロスと交代で入った。よし、今度こそはヴィエイラ目掛けて蹴り込めば何とかなるだろう。だけどもう少し早い投入でも良かったのではと思うのだった。
 かといってヴィエイラを狙った放り込みをやる訳でもなくあくまでも人の動きとパスの連動で押し上げていきゴール前の崩しに掛かる。エゼキエウがヴィエイラを狙ったボールを入れるもクリア。やり直しから左サイドから柏がクロス入れ森島が入り込むもCK。だがCKも弾き返され再びゴール前へ放り込むもまたクリア。どうにもヴィエイラの高さが生かせないと思ってたもののヴィエイラはボックス内で受ける。詰め寄るDFを前にしてキックフェイントからヒールパスで落とすと塩谷。シュートと見せかけ左のハーフスペースへ出す。そこで受けた柏カットインからシュート。入った。入った、入った、入った。間違いなくゴールネットの中にボールは入っているのだった。
 土壇場で同点。少ない残り時間。当然セレッソも勝ちにきてる。両者終盤の体力の消耗した中で誰も脚を止めない。もはや誰も延長戦のことなど考えてはいないようだった。
 そんな中、攻撃の中心であるべき森島は思うようにチームを先導してない責任を感じたか更にギアを上げてボールに絡んできた。一度は奪われてパトリッキのドリブルを許してしまうも諦めず後ろからのタックルでこぼれ球にして野上のフォローから再び前を向く。ゴール前に陣取ったDF陣。ほんの少し間合いを置いて中央へと入れたボール。何の工夫もないように思われたボールに飛び込んだのは川村。その走り込む場所、タイミングを見計らった見事なクロスとそれを合わせた川村のヘッドは見事ゴールに叩き込まれたのだった。
「決まったーっ!」
 もはやこの瞬間勝利は確信した。そしてこのまま試合を終えると7年ぶりの天皇杯ベスト4進出を決めたのだった。
 そう毎回毎回奇跡のようなことを繰り返すかと思ってた川村がまたしても奇跡を起こしてしまった。でもそれは最後の最後の森島の粘りでもありそれまでのチームとしてのなせる業だったろう。正直今はタイトルのことを口にするのは時期尚早だ。でもそれ以上にこの試合をやってくれる今のチームはただただ試合を観てるだけで興奮していられるのだった。

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