ルヴァンカップ名古屋戦~自滅的敗戦

2023年3月26日 ルヴァンカップCグループ サンフレッチェ広島 vs 名古屋グランパス エディオンスタジアム広島


 桜が花を開いてきた時期ではあるものの全国的に雨模様でどことなく陽気な休日という雰囲気ではない。そんな中でのルヴァンカップ。この大会での注目点はまず持ってメンバーだ。21歳以下の選手を1名は出場させるルールの為、それが誰が当たるのか、そしてその為にどういった選手を割り当てるのか。それでいて勝ちにはこだわらなければいけない。単純にベストメンバーだけを選出させればいいリーグ戦よりも頭を悩ます要素が多いのだった。

 そして21歳以下の選手としてはワントップに棚田が入る。更に若手に松本泰志、大哉、山﨑が入りリーグ戦メンバーとして満田、佐々木、塩谷、川村が入り、ベテランとして柴崎、柏、GK川浪が入る。対する名古屋には21歳以下としてアタッカーの甲田、元サンフレッチェの稲垣と野上が入るという陣容だった。

 雨上がりのピッチでの試合開始。前から嵌め込むプレスの中には棚田も加わっていた。それにより名古屋に優位なボール運びをさせていない。後ろへ下げると野上がロングキックで1発を狙うも最終ラインはそつなく対応する。そしてビルドアップしていくも松本泰志の縦パスはわずかなズレが起きてしまう。その後も左サイドで高い位置へボールが出たものの名古屋の守備ブロックに対して上げることができずパスを2本繋げての松本大哉のシュートはGKランゲラックがキャッチ。どちらかというと手詰まりにされ打たされたという印象だった。

 主導権は握っていながらもワントップの棚田に収まることはない。そこに存在感の希薄さを感じている時、DFラインが相手の攻撃を跳ね返した。相手に渡ってしまうかと思ったそのクリアボールをい拾うとマークを振り切り抜け出していく。ああ、それだ。あれをマイボールにしてくれることで2次攻撃を受けることがなくなる。若手はこうやってどんどん自分をアピールしていってもらいたい。

 そう思ってたら名古屋の甲田がサイドを仕掛けてきた。満田のマークを振り切っての突破は思い切りの良さを感じた。が、ここで存在を見せつけられたことにより満田の闘志に火が付いた。

 塩谷のチェックに始まりボールのこぼれが起こるとすかさずそれを拾い右サイドを駆け上がっていく。そのまま縦を突き進むのかと思いきや中央への横パス。バイタルエリアで受けた川村。トラップからシュート。グラウンダーのミドルがゴールへ向かって走る。飛びついたGKランゲラックの掌の届かないコースに入ったのだった。

 先制。幸先がいい。川村の今シーズン初ゴール。打っても打っても決めきれない川村がやっと決めたというのは今後に向けての弾みになる。そしてこのリードは試合を優位にした。この後の展開において名古屋に有効な攻撃をほとんどさせることはなかった。この分なら棚田はハーフタイム挟んでも使ってもらえるのではと思った。

 ところが後半になると棚田に代わって鮎川が入ることになった。経験値で上回る鮎川が入ったならもはやこの試合は安泰だろう。事実いつこのリードを広げるのかという展開は続いた。が、シュートまで辿り着けない。このまま1点差で終わってしまうのかと思った時、名古屋は交代で3枚替えをしてきたのだった。

 森下、永井、米本。本気のメンバーである。するとこの3人の関係で途端に攻撃への圧力を強めペナルティエリアで森下が受ける。対峙した塩谷。だがこの時柴崎もいたことで数滴有利であったもののカットイン、シュート。その動きに剥がされゴール隅に決められてしまった。同点。あまりにも呆気ない同点なのだった。

 この時、柴崎は歩いていた。間近にいながら塩谷一人に任せればいいという対応だった。ぬるかった。今まで散々勝利に導いてくれた柴崎だがさすがに限界が見えてきたような気がした。

 気を取り直して再びリードしたい。左サイドから中盤の鮎川へ向けてパスがいくとそれをポストプレーできずパスカット。真ん中で縦パス。更に米本がゴール前へスルーパス。抜け出した永井のシュート。あっさり決められ逆転されてしまったのだった。

 わずか数分の間に追いつかれ逆転されてしまった。なんだか夢でも見てるような現実感のなさだった。サンフレッチェも柴崎を下げヴィエイラを入れる。だが名古屋の勢いは止まらない。そこで松本泰志、柏に代えエゼキエウ、志知が入る。それでもペースは変わらない。むしろ名古屋がストラアイカーのユンカーを入れたことによりより守備への負担が掛かるようになってしまった。

 もはや名古屋には余裕があった。無理に攻めることもせずサンフレッチェにボールを持たせるようになった。人数をかけて押し上げるも名古屋の守備ブロックは崩せない。シュートまで辿り着かない。相手にリードされて守備を固めた相手を崩せない。これはサンフレッチェの王道のマケパターンでありもはやなす術はないのだった。

 そしてこのまま試合終了。選手交代が効いた名古屋と効かなかったサンフレッチェの違いが明確に現れてしまった。やはりトップが弱い。相手の守備をこじ開けるストライカーがいない。そしてリードしているのにその優位を活かせない。無念さが残る試合となってしまった。

 やはり一番シュートにパンチ力のある満田を真ん中に持ってきたい。だが右サイドで満田以上のパフォーマンスのできる選手がいない。そしてトップの弱さ。うっすらと感じ取ってはいたけどそれが完全に露呈してしまった試合となった。果たしてこの課題を克服することができるのだろうか。補強というものが簡単にできないクラブなだけにそこは悩ましい問題として刻まれるのだった。

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