オーストラリア戦~試合を決めた浅野のシュート

2021年10月12日 W杯予選リーグ 日本 vs オーストラリア 埼玉スタジアム2002

勝たない限り自力でのW杯出場の望みがなくなる。1勝2敗とかなり分の悪い成績にそれも現実味を帯びてきた。特に印象的だったのがアウェイでのサウジアラビア戦。全くいいところなくミスにより失点。何もかもうまくいかないチームには森保監督の力量すらも疑問を抱かせるにも至った。
緊急事態宣言が明けスタンドに観客は入っていた。制限があるので半分も埋まってないもののやはり無観客よりは雰囲気が上がる。そもそも客を入れないのならホームでやる意味がないのだった。
試合前のセレモニーで『君が代』が流れる。口ずさむ選手にこの追い込まれた状況を何とかしなければならないという決意がみなぎる。森田、田中碧が入ることでサウジアラビア戦とは変化をつけてきた。そしてその選択をした森保監督もコーチ陣と肩を組み国歌の流れに身を浸していた。
そんな決意の下でのキックオフ。まずは日本が伊東の抜け出しからゴール前へ送り込むもこれが中と合わなかった。そこからのセカンドボールを拾われ攻撃は単発に終わる。決まらないまでもここでもう少し攻撃の時間が続ければ相手にペースを与えなかったのにと悔やまれる。
屈強な体格を誇るオーストラリアは肉弾戦へ持ってこようとするだろう。ゴール前へボールを上げさせなければいい。だが何気にテクニックもあって簡単にかわされる。そして崩しにかかるも人数を掛けた守備で守り切ると再び好機が訪れた。
左から駆け上がる南野に入るとそのまま縦へ。DFのスピードは振り切れない。その瞬間ターンをして逆に振る。DFの触れないスペース、そこに田中碧が受けた。ワンタッチで抜けシュート。勢いのあるボールがグラウンダーのまま地を這いファーサイドのゴールにぶち込まれたのだった。
先制、田中、田中、田中!
早い時間の先制点。点の取れないチームだっただけにこのゴールは大きな勇気を与えた。そしてスタメン起用に応えた田中碧も凄いが森保監督もここで田中を使うという決断が功を奏した。勝たなきゃいけないという決意ははっきりとした結果として現れた。
ただまだ1点。全然余裕はない。突き放しにかかるべく伊東は右サイドをスピードでぶち抜くと中央へ送り込むも合わない。ワントップ大迫がターンでゴールに突き進むも枠に入れることはできない。決まりそうで決められない。それが後々大きく響くことにならなければいいが。
そんな不安は早くも訪れた。それまでペナルティエリアに入れることのなかった最終ラインを抜かれシュート。強烈な弾道はガツンとポストに弾かれた。あとボール1個分。GK権田のポジショニングがよかったのかもしれないがやられててもおかしくはなかった。
そして後半も半ばを過ぎるとプレスが掛からなくなり所々にスペースができるとそこに出される。ゴール真正面。森田がクリアしようとスライディングするも先にボールにアプローチしたオーストラリアの選手を倒した。PK。ここにきて痛恨のPK
だった。
ところがVARの判定が入りFKに変更となる。それによって救われた。壁を築きあとはGK権田に頼むしかない。セットされたボールには左右2人の選手が立っている。どちらが蹴るか。そして蹴ったのは左足の選手。インパクトの瞬間まるで轟音を放つかのように速い弾道がゴールに叩き込まれてしまった。
同点。何てことだ。
まさかあんなキックを蹴ってくるとは。せっかくここまでリードをたもっていたのに。この試合、引き分けでも森保監督は責任を取って更迭になるのだろうか。そんなことが頭をもたげつつあった。
前線は浅野、古橋、伊東のスピード系の3トップになっていた。その3人のスピードを生かしたい。その意図もあってか最終ラインから前線目掛けてロングボールが蹴り込まれた。もはや時間がないのでヤケクソになったのかもしれない。
ところがこのボールの落下点に浅野が入った。ワンタッチで落とす。するとそのままペナルティエリアに突き進む。ゴール前へ走る味方は間に合わない。すると追走するDFに構わずシュート。GKの頭上を超えるもパンチング。ところが縦スピンが掛かってることでそのまま流れる。ポストに当たった。だがそのリフレクションはボールを追った敵味方の塊に跳ね返りそのままゴールに零れ落ちたのだった。
入った。入った、入った、入った。恐らくオウンゴールだろうが間違いなく浅野のキックによってもたらした。この土壇場で、どうしても欲しい状況で見事に決めてみせた。チームメイトになぎ倒される浅野。そしてこのゴールが決勝点となりこの試合を制することができたのだった。
ここのところ大した活躍ができてなかった浅野。それだけにこのインパクトは大きかった。奇しくもこの前のリーグ戦で弟の浅野裕也が同じようなシュートを決めてチームを勝たせた。チームを勝たせる選手、元々浅野はそういう選手だった。そんなことを思い出し、いつまでも陶然とした感情はいつまでも冷めやることを拒むのだった。

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