大分戦~交代によるパワーアップとスケールダウン

2020年7月8日 サンフレッチェ広島vs大分トリニータ エディオンスタジアム広島

 九州を中心に駆け巡った豪雨はジトーッと湿度を高め籠った暑さを醸し出すのだった。照明の落ちたエディオンスタジアム、見慣れた光景のはずが違和感が拭えない。それもそのはず、無観客の試合。どことなく違うスタジアムのようにも見えるのだった。
 そしてチームの戦い方も前節と違い自らボールを持って攻めていく。そして高い位置で青山とヴィエイラが挟み込みペレイラへ。ゴールに向かうペレイラ。DFが追いつく前に振り抜く。GKの脇を弾丸のようなボールがゴールネットに突き刺さる。先制、早い早い先制点だった。
 これにより無理に攻めなくてよくなった。大分はブロックを前から来ない。その分後ろでのパス回しも余裕を持ってできる。仮にプレスに来たところで野上がフェイントで軽くいなしてる姿からこの試合はもう貰ったような気がした。少なくともあともう1点取れば間違いないだろう。
 ところがある程度のとこまではボールを保持できてもフィニッシュまでたどり着けない。やっとのことで入ったペナルティエリアでの攻撃、逆サイドに振ったとこでハイネルのハーフボレー。入ったかと思ったがポストに阻まれたのだった。惜しい、たった5センチずれただけでで入っただろう。その前に相手GKも触ったしいい反応をされてしまった。
 そんな攻めあぐねが大分に活力を与えた。攻撃を中途半端な形で封じ込められたのを機に大分左サイド田中が駆け上がる。対峙するハイネルが追う。一度は止めてもその後何度も同じとこでの個の突破が行われる。ハイネル、野上はその都度全速力で追いかけなければいけない。その都度粘り強く食い止めるが体力の消耗は大きいだろう。
 そして大分に動きがあった。知念をトップに据えるとそこにボールが収まるのだった。それにより徐々に圧力を高める大分の攻撃。必然的にラインは下がり押し込まれるようになっていった。
 クリアしても全て大分に収められる。そしてどんどんゴールに向かってくる。身体を当ててブロックしてたシュートも段々と最後の壁を抜かれるようになった。それも全てGK大迫に救われた。固いDF、優秀なGKによって食い止めているのである。
 ところがそのDFの一角である野上が倒れ込んだ。足をつったらしく続行不可能。井林との交代を余儀なくされる。堅固な守備を保っていたものの、井林だって出場に飢えていたはずである。モチベーションは高いはずだ。そしてこの後、両者で次々とメンバーチェンジが行われるのだった。
 そのメンバーチェンジで大分はどんどんギアを上げていく。ゴールへ向かっていく圧力がどんどん高まる。それを受けるサンフレッチェはもうアップアップだ。まるでそれは沈みゆく船のよう。船底の綻びを取り繕うが浸水は収まらない。そしてついにアーリークロスからのヘディングを決められてしまった。
 追いつかれた。DFが追走してたので頭に当てるしかできなかったはずである。それをよりによってGK大迫は飛び出してしまった。半ばヤケクソ気味に当てたヘッド、待ってれば簡単にキャッチできたはずだった。
 これにより点を入れなくてはいけなくなったサンフレッチェ。だけど交代で入った東、柴崎、茶島は存在感を見せられない。特にハイネルと代わった茶島は消えている。そして大迫がキャッチしたボールを速攻につなげようと右サイド茶島にスローするも敵にあっさりカット。刈り取られたボールはそのまま息つく暇もなくゴールに押し込まれてしまったのだった。
 逆転。やらなくていい失点。明らかな大迫のミス。そして受け手である茶島の反応のなさだった。メンバー交代は明らかにサンフレッチェにスケールダウンをもたらした。前線でペレイラが何度も落としをするも誰も反応してくれない。ダイナミックさがない。アグレッシブさがない。覇気がない。とても出場してアピールしたいといいう野望を感じないのだった。
 勝とうとした上での失点。それがそのまま決勝点とあり負けてしまった。プレーの精度、相手の勢いを押し返す強度、相手を崩すイマジネーション、その全てが欠けていた。厚いと思われてた選手層はちっとも厚くないのだった。
 やはい神戸戦は上手く行き過ぎた。そんな慢心があったのだろう。だがこの試合は明らかに交代選手の差で負けた。そして方野坂監督の作戦にもしてやられた。全てにおいて完敗である。そんな悔やみを抱きながらも4日後には次の試合が訪れる。そんなせわしなさも感じるのだった。

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