ルヴァンカップC大阪戦~ルヴァンカップ初優勝

2022年10月22日 ルヴァンカップ決勝 セレッソ大阪 vs サンフレッチェ広島 国立陸上競技場


 決勝を迎える前日、工藤壮人の訃報を受ける。サンフレッチェで2017年から2シーズン在籍し、その後チームを移したものの現役でプレーしてる選手だった。それはさっきまで隣にいた人が突然いなくなるような喪失感をもたらした。そして決勝の舞台には当然工藤の追悼として黙祷が行われた。

 沈黙に包まれたスタジアム。そして黙祷が開けられた後は両ゴール裏での応援が始まる。セレッソは昨シーズン決勝で敗れた。そしてサンフレッチェは1週間前に天皇杯を逃した。お互いがお互いの事情で絶対に勝たなくてはいけないものを持っているのだった。

 そんな中でのキックオフ。最初から前に行く姿勢を見せる。それには消極的だった天皇杯の反省が伺えた。前へ前へとパスを向けていく。満田がペナルティエリアへ突き進む。迷うことなくシュート。GKキム・ジンヒョンにキャッチ。だがその積極性に熱が上がる。が、このすぐ後ボールカットからあっという間に前線まで運ばれシュートを打たれる。枠には入らなかったがセレッソの攻撃にはナイフのような鋭さがあるのだった。

 最終ラインからパスを繋げ攻撃を形作るサンフレッチェ。だがセレッソの守備は帰陣が速くなかなかチャンスが見出せない。更にはボールを刈り取ってからの攻撃の後は縦へのロングボールで前線を狙ってくる。そしてそれが前線の選手に収まった時、広大なスペースをドリブルで持ち上げられゴールを脅かす。その都度佐々木、荒木、塩谷の3バックが身体を張ってブロックするものの、それはサンフレッチェの戦法を熟知した戦いだった。それだけになかなか有効な攻撃ができないのはボールを持たされてるようにも思えるのだった。

 攻守が激しく入れ替わりつつも0-0で折り返す。点を入れる為のあと一歩が足りない。それでいてやってるサッカーは悪くはない。その為、両チームハーフタイムでの交代はなかった。試合は1点で決まる。後半に入りサンフレッチェはペースを高めたのだった。

 だがなかなか前が開かない。スルーパスを狙っていくものの前を閉じられ後ろに下げやり直し。更に佐々木がGK大迫へバックパス。それを狙ってた加藤陸次樹。猛然としたダッシュでボールカット。そのままゴールへ向かっていく。飛び出したGK大迫。するりをかわすと角度のないとこからシュートはゴールに入ってしまうのだった。

 なんというミス。あまりにも呆気ない失点に呆然としてしまうもまだ時間はある。追いつくべく更に攻撃への圧力を高める。森島が、満田が運動量を高める中、佐々木もオーバーラップによりゴールライン際からクロス。これをGKキム・ジンヒョンがキャッチしてしまうとパントキック一閃、前線の毎熊にピンポイントに渡してしまうのだった。前の空いた毎熊、ペナルティエリアまで持ち上がりシュート。これをGK大迫止める。危なかった。流石にもう1点入れられるとお終いだった。

 早く追いつきたい。セレッソの守備はよりアグレッシブになるものの一人が潰されても別の誰かがサポートしてゴールに近づく。左サイドからの横パスに森島のシュート。GKキム・ジンヒョンのキャッチ。右サイド野上からのクロスにナスのヘッド。これもキム・ジンヒョンのセーブ。シュートまで辿り着けても最後の砦を崩せないのだった。

 ここでボランチの松本を下げピエロスを入れる。完全に点を取りに行く交代。ただ、ピエロスは未だに公式戦1ゴールしかない。身体の強さ、裏への飛び出しの感覚は持ってるもののどうも機能してない。それだけに過大な期待は持たなかったものの早速見せ場が訪れる。CKのカウンターから森島のクロス。ピエロスのヘッド。が、枠に入らない。その後も再三ゴール前でクロスのターゲットとなるも触ることができない。セレッソの守備も確実に挟み込んで抑え込むのだった。

 それでもピエロスが入ることによってゴール前への厚みが増す。奪われても次から次へと後ろから選手が湧き上がりサポートすると森島がクロス。川村ヘッド。これもGKキム・ジンヒョンのキャッチ。そしてキム・ジンヒョンのフィードは確実に攻撃に繋げるのだった。

 素早い攻撃に速い帰陣により凌ぐとロングボール一本。ナスとヨニッチの競り合い。両者譲らない中もつれあい倒れる。そして立ち上がる際にナスが倒れた。顔を押さえのたうち回る。ヨニッチによるファールとしてカードが出される。が、この時VARが入り試合が止まるのだった。

 その動向に固唾を飲み見守る中、サンフレッチェのコールが湧き上がる。そしてモニターに映し出された映像に場内が喚き立つ。そして出された判定、ナスの顔面に対してパンチが入ったということでヨニッチに対してレッドカードが提示されたのだった。

 数的有利。そこに喜ぶももう時間が残されてない。セレッソは1点を守り切るという明確な目標ができたが為より守備が強固になっていった。攻めても攻めても打開できない。川村がミドルシュートを狙う。が、枠外。その中で野上、塩谷と守備の選手を下げて柴崎、茶島という攻撃の選手を入れていきより圧力を高めていくのだった。

 その中で川村がペナルティエリアに潜り込みシュート。これも防がれCK。満田のキックが中央のナスとピエロスに飛び頭に合わせる。が、ブロック。だがこの瞬間ピエロスが猛抗議。プレーが切れた瞬間にVARチェック。モニターに映し出されたオンフィールドプレヴュー。それによると当たってる。ヘディングシュートはハンドによってブロックされていたのだった。

 それにより判定はPKを宣告。沸き上がるスタンド。だがここで決めないと何も変わらない。そして今度はピエロスがボールをセット。相手のGKキム・ジンヒョンはこの試合でも何度もシュートブロックによりゴールを許さなかった。主審のホイッスルが鳴り響き、ゆっくりとした助走からステップを踏むピエロス。そしてタイミングを図りながら放ったシュートは見事ジンヒョンの逆のコースへと突き刺したのだった。

 同点、同点、同点。もはやこれまでと思っていたものの思わぬ形での振り出し。これにはセレッソの精神的ダメージは大きいだろう。もはやアデåィショナルタイムに突入してるもののここで更に押し込みたい。もはやDFの人数を割いて攻撃への比重を高める。佐々木の縦パスから森島を経由して満田の突破、クロスは阻まれたもののCK。最後のチャンスかもしれなくキッカーの満田は急いでセットするとキック。ゴール前の密集に落ちるも荒木の頭を超えた。が、次の瞬間ゴールに向かってボールが飛ぶとフワッとした軌道で入ったのだった。

 ゴール裏へ走り込んだピエロス。それによりピエロスが決めたのを知った。まさに一瞬の出来事で状況を把握できなかったものの、落ちてきたボールをボレーで合わせたようだった。

 逆転、逆転、逆転。アディショナルタイムで決めた。キプロス代表の肩書きに過度な期待を寄せたものの今まで結果として残せなかったピエロス。この土壇場で、この欲しい状況で決めた。これこそストライカー。サンフレッチェに欠けてた要素がここで具現化した瞬間なのだった。

 沸き立つ紫のサポーターと選手達。このまま負けてまたしても準優勝の称号を集めてしまうことも覚悟していた。最後の最後の逆転。まだ試合は終わってないことはわかっていつつもこの歓喜は止められないのだった。

 残り時間はもうないはず。再びピッチに戻り試合を再開するとパワープレーに来たセレッソ。ロングボールは最前線で受けられその落としをダイレクトシュート。強烈な弾道がゴールに向かう。GK大迫が止める。一旦は弾いてしまったものの再び拾うことでことなきを得たのだった。

 そしてパントキックによりタイムアップ。延長戦に入ることなく90分の内に勝利し、ルヴァンカップ初優勝を成し遂げたのだった。喜びを爆発させる選手の中で数人の選手は涙を浮かべていた。それは1週間前の天皇杯で勝てなかった悔しさから来てるのは明白だった。そしてあれがあったからこそ優勝というものの難しさを改めて思い知らされた。そしてこの優勝によりカップ戦のシルバーコレクターを脱却することができたのだった。

 バックパスを狩られることによる失点から相手に退場者が出てそこからアディショナルタイムに逆転。これは2015年のチャンピオンシップと同じ展開だった。それをデジャブとして思い浮かべたサポーターも多かっただろう。

 タイトルが獲れた。ルヴァンカップ初優勝。これでクラブに新たな歴史を刻むことができた。カップ戦の優勝はどんなものだろうと想像したことがあるが、実際に獲ると感極まることにより目から溢れるものを抑えることができないのだった。

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