横浜FC戦~様相を変えた前後半

2021年4月7日 横浜FC vs サンフレッチェ広島 ニッパツ三ツ沢球技場

 静かな立ち上がり、に見えた。だがその割に両者は激しいプレスの応酬を繰り広げている。照明の灯ったナイトゲーム、入場制限による観客の少なさ、声援の規制によるスタンドからの声のなさがそんな印象を与えたのかもしれなかった。
 そんな中、左サイドに入ったエゼヒエウプレスは開始早々立て続けにファールになってしまう。それはそろそろ目に見える結果を出したいという欲求の現れだったかもしれないが、その位置が不味かった。ゴールへ向かっていくゴールを蹴ることのできる位置。そう、中村俊輔にとってそれは絶好のFKのポイントだった。その恐ろしさをエゼキエウは知らないのかもしれない。
静まり返ったスタジアムの中、中村の左足が炸裂する。鋭い角度でゴール前へ向かう。だがこれを今津がクリア。かつてあれだけ脅威だった中村のキックも今津が壁となり跳ね返してくれるのだった。
 そんな危機を脱した後に押し上げを図ると横浜FCは自陣に引き籠った。ブロックの中へ入りこめずサイドから崩そうとするも打開ができない。ショートパスをつないでは後ろへ戻すことが繰り返される。この先がいけない。停滞してしまう。そこで今度は逆サイドにボールは流れた。
 左サイドのエゼキエウが受けるとすぐに囲まれた。た後ろへさげるのか、そう思った瞬間相手の股を抜き猛ダッシュ。立ちはだかるDFを3人かわしドリブルで突き進む。ボックスに入ってシュート。枠には入らなかったものの可能性のある攻撃。その強引なプレーに沸き立つのだった。
 その後もエゼキエウのボールへの執念は続く。DFに対しての果敢なプレスはボールコントロールを狂わせ攻撃の隙を与えない。そして前線で自身にボールが入るとテンポよく落とす。そこにはオーバーラップした東が走りこみシュート。枠外になったのが悔やまれるが味方を生かすプレーを活性化させる。この試合、ゴールが生まれるとしたらエゼキエウのところからかもしれない。
 ところがボールはまたしても右サイドに入るとゆっくりとしたパス回しにより停滞。左を使えよと思ったその瞬間、野上から浅野に速いパスが入った。フリックした浅野。ワンツーで川辺が前に叩くとボックスへ走りこんだ浅野へ。左足を振り抜きシュート。強烈な弾道がファーサイドのネットにぶち込まれたのだった。
 先制。浅野久々のゴール。シュートは打ってるもののなかなか決めることができなかっただけにやっと報われたという気がした。そしてこのゴールを皮切りに更なる攻撃への姿勢を魅せるのだった。
 エゼキエウと東がポジションチェンジを繰り返すことで相手を幻惑させる。浅野はバイタルエリアに入って攻撃にスイッチを入れる。機を伺っては後ろの選手も前線へ駆け上がってくる。そしてエゼキエウのプレスがGKへのバックパスを生みヴィエイラが詰める。更に逃れるパスを出すと今度は浅野が沸き上がりカットしてシュート。決まった。2点目をっ叩き込んだのだった。
 浅野の2ゴール。よく決めた。まるで今まで溜まってたものを吐き出したかのようだ。そして溜まってるといえば森島もそうだった。絶好の位置でのFK。そろそろ決めておきたい。だが直接狙ったボールは壁に当たってしまい跳ね返される。舞い上がったボール。その落下点に柴崎がいた。トラップでコントロールすると狙いすましたシュート。ゴールの隅に巻いて来るボールが入ったのだった。
 3点目。これはもうかなり有利になった。だがここで浮かれてはいられない。今シーズンは3点差を追いつかれた試合があっただけに。それだけに後半追加点を入れて止めを刺して欲しかった。
 ところが決まらない。森島が低い弾道のミドルシュートを放つもGK南にブロック。交代で入ったサントスは何度も個人技によりシュートを放つも入らない。メンバーを代えるも活性化することはなく逆に防戦一方になる。もはや自陣に引き籠ってクリアしてばかりである。
 もはや追加点よりもこのまま無失点で終わることに主眼が置かれる。ボールを奪ってもつながらない。堪えて堪えて堪えることによって終了のホイッスルを迎えることができた。0-3の勝利。結果的に完勝となった。
 完璧な前半、守備に追われた後半。この正反対の様相を呈したのは果たして意図的なのだろうか。それとも選手を入れ替えたことでの力の差なのだろうか。だとしても若い選手に経験を積ますことができた。怒涛の17連戦はまだ始まったばかりなのだった。

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