湘南戦~不安感に満ちた未来

2018年8月5日 サンフレッチェ広島vs湘南ベルマーレ エディオンスタジアム広島

 毎日毎日暑い。日が落ちても一向に気温が下がらないのは休まる時間がない。そこにおいて中3日の試合、身体的負担は相当なものではなかろうか。それなのに前節と同じメンバーというのはいいような悪いような。固定されてるとも言えるがそれ程他のオプションがないのという危惧も感じてしまった。
 そんな中、パトリックと渡は前線の守備に走る。身体を寄せボールをむしり取ろうとする渡のプレスは時にはファールになり時にはボール奪取につながる。が、その後が続かない。せっかく高い位置で奪ってもどうにもシュートへ結びつかない。湘南の守備への戻りが速いのだろうがそれ以上にサンフレッチェのプレーに精度がないのだった。
 いくら攻めてもシュートを打てない。その事実が湘南を活気づけたのか、一旦ボールを奪うと雪崩を打ったように選手が飛び出しゴール前まで差し迫ってくる。そのお陰で湘南の方がシュートを打っている。手数を掛け手間を掛けてゴールに向かうもシュートの打てないサンフレッチェに対して効率性においては大きくリードされてるのだった。
 そしてその極めつけが左サイドでボールを奪われた場面だった。スカッと抜かれると縦へ猛ダッシュ。フリーで放ったゴール前へのクロスに千葉が競った。が、これがPKとなる。よりによって千葉はボールを手に当ててしまったのだった。
 2試合前に続いてまたしてもPK。いくら何でもこれは取られ過ぎである。ここまで取られると審判にも妙な固定観念が刷り込まれてしまう。サンフレッチェはPKを与える。それにより余計にファールを取られやすくなるのだ。
 このPKを山崎が決める。GK林も読みは合ってたものの届かないギリギリのコースに決められてしまった。これはマズイ。この展開から考えてこのままゴール前を固められて点が取れずに終わってしまうパターンではなかろうか。
 そうはさせまじとサンフレッチェはパスによって打開しようとする。裏へのロングキック、サイドからの攻撃、青山のミドルシュート。だがどれも決まらない。パトリックと柴崎がヘディングシュートをした場面があったがGK含めDF陣に最後の最後が決めさせてもらえない。堅い堅い湘南の守り。そしてサンフレッチェはこういう守備を崩すのが苦手でしょうがないのだった。
 CKを蹴っても競り負けるし向かうとこ打開策がないと思われたその時、ペナルティエリアで笛が鳴った。佐々木が倒されたということでPKを獲得した。おお、やった。蹴るのはパトリック。GKの逆を突いてきっちりと決めたのだった。
 振り出しに戻った。これで湘南も前に出てくるのでやりやすくなりそうだ。
 その目論見通りそこからはサンフレッチェの攻撃が続いた。クロスを入れ跳ね返されるとそのセカンドボールを拾い波状攻撃を掛ける。それでも決まらない。何度も訪れるCKでは競り合いにすら勝てない。攻めてるようで決めることができない。そこで現状を打開する為にティーラシンが投入され、川辺が投入された。といってこの2人が出て戦況が変わったという例がここのところない。特に川辺が入ると余計に点が入らなくなる傾向があるのだった。
 そんな川辺が左サイドで受ける。ゴール前へパスを送ると思いきやドリブルで切り込んでいった。ゴール前の密集。グラウンダーのクロスを出すと後方へ落とされると走りこんだ柏。右足を振りぬいたシュートはDFの股下をすり抜けゴールにぶち込まれた。
 逆転。柏、柏、柏!パトリック以外がゴールを決めたということに勇気を与えられた。どんなに振り動かしても崩れない壁が崩れた瞬間だった。そしてその柏を下げて吉野を入れたのだがこれはもう守備への意識を持つというメッセージである。残り時間をやり過ごし試合をクローズさせる。ところがその割にボールを支配できる。次はどう展開してやろう。ティーラシンはそんな余裕すら持ってしまったのだろうか、中盤でボールを掻っ攫われるとそのままカウンターに持っていかれてしまう。奪われたティーラシン本人がファールによって止めたのだがここから流れが変わった。湘南の一方的な攻撃になっていったのだった。
 跳ね返し跳ね返し跳ね返す。サイドも何とかクロスを上げさせまいと踏ん張る。そんなセカンドボールをパトリックが受けるとそのままカウンターへとつながる。ただ相手の人数の方が多いし。ここは無難にボールキープに徹すればいいだろう。ところがここでシュートを打ってしまう。そしてそれが入るのならいいが枠にすら入らないでただ単に湘南にボールを返しただけの状態になってしまう。それにより湘南も尚更攻めやすくなってしまうのだった。
 そんな折、前線に1本のロングボールが入る。千葉が競るもかすりもしない。そして最終ラインにいた和田が頭で後ろに逸らした。が、この時GK林も飛び出していたのでそのまま無人のゴールに入ってしまったのだった。
 同点、しかもオウンゴールである。あと数分で終わりだったのにみすみす勝ち点を分け与えてしまった。そのまま引き分けで終わるもそれはもはや負けに等しいものだった。
 PKとオウンゴール。それは自滅としか言いようがなかった。和田や林だけじゃない。時間稼ぎをすればいい場面で入りもしないシュートを打ちにいったパトリック。真正面のシュートをGKにぶち当て、とんでもない場所でボールを取られて相手に流れを与えたティーラシン。守備の空中戦に弱い千葉。これはもうお笑いだった。喜劇としか言いようがなかった。ぼくは笑った。力ない笑いを発してしまった。その表情は青ざめていただろうが。
 これでは勝てない。90分の中での時間にストーリーをつくることができてない。勝ってる時期はそういうのが上手くできてた。それがここ最近はまるでやってる内容が劣化してしまったのはどういうことなんだろう。
 試合後、城福監督はピッチにいる選手に向けて露骨に怒りを露わにした。さすがにこの試合だけは言い訳のしようもなかった。シーズン後半になって明らかに内容が悪くなった。実際に勝てなくなってしまった。危機的状況である。果たしてこの先勝っていくことはできるのだろうか。不安ばかりが募るのだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?