鹿島戦~屈辱の敗戦

2016/07/09 サンフレッチェ広島vs鹿島アントラーズ エディオンスタジアム広島

「浅野、オリンピックで活躍したら海外移籍してしまうだろうな」

 そんなことを誠しやかに話してたものの、その前に決まってしまった。アーセナルへの移籍が決まってしまったのである。そういえばU23代表でトゥーロン国際大会の時ヨーロッパのスカウトが浅野に興味があるなんてインタビューで答えてた。すでにA代表にも選出されてるし情報はとっくに流布してるようだった。でも一つ気になるのがJリーグで2点しか取ってないというとこだ。そういう意味では若さ故の青田買いの意味合いもあるのだろう。

 浅野に残されてるのは3試合。その内にJリーグでの実績を上げたいとこだ。一つでも多くゴールを増やしたいものである。

 トップ下、もしくはシャドーと言えるポジションに入った浅野。カウンターからウタカや千葉が何度かスルーパスを狙うもディフェンスに引っかかったり浅野の追いつけなかったりした。更には柏が右サイドで抜き去り何度もクロスを上げるのに合わすことができない。勿論これは浅野のせいではない。鹿島のゴール前が相当に堅いせいだ。だが海外ではもっと屈強なディフェンダーがいるというのを忘れてはいけない。

 前線までボールが行っても最後にパスが引っ掛かってしまう。どうにも次のプレーを全て読まれてるようだった。そんな守備への自信が攻撃への勢いを強めた。GK林のセーブなどで失点は許さなかったものの悲劇は思わぬとこから生まれた。守備ラインでのパス回しに塩谷がトラップミスをする。するとそれをかっさらった金崎がシュート。弾いた林。が、こぼれを遠藤にガツンと入れられた。ああ、決められた。プレゼントしたような失点。塩谷、何であんなゴール前であんなリスキーなトラップしてしまったんだよ。

 鹿島には負けたくない。かつて完璧なゴールを審判へ抗議して取り消されて以来それは強く感じるようになった。だがその後トントントンっとパスを回されゴールを決められるとその怨念は更に強くなるのだった。鹿島には負けたくない、鹿島には負けたくない、呪怨がこぼれ落ちるのだった。

 シュートまで行けない。どうも鹿島の方が守備が堅く攻撃も鋭い。もう駄目だ。これはもう芽がない。段々と諦めの境地に陥った時、丸谷のスルーパスが出た。浅野、GKと1対1。この千載一遇のチャンスを決めた。ちゃんと決めたよ。劣性の中、1点差に縮めた浅野のゴールはスタジアムをブワッと盛り上げた。

 これから追いつくぞ、そんな機運が高まった。だがそのすぐ次の瞬間、あっさりとゴールを決められてしまった。それはあまりにもあっさりと、あまりにも易々と、まるで赤子の首を捻るが如く決められるとその失意も消え去らない間に更なる失点を重ねてしまい1ー4となってしまった。奇しくもファーストステージと同じスコア。またしてもぼろ負けかよと毒ついてしまうのだった。

 終わった。もはやこの試合は負けてしまった。でも何かを残したかった。その何かを残す為に宮吉と茶島が交代で入ると流れに変化が現れた。まるでそれまでの淀んだ水瓶をかき回すかのように前への推進力が増してきた。そしてそれまで何度も潰されてたゴール前のパスを宮吉が裏へ出すとまたしても浅野がフリーで受け2点目を決めた。それはイタチの最後っぺぐらい無駄なあがきだったもののほんの少し溜飲を下げることはできたのだった。

 だが反撃もここまで。そのまま2ー4で負けてしまったことでえ鹿島との実力差を認めざるを得なかった。鹿島には勝てない。そしてそれだけまた怨念が積もっていくのだった。

 惨敗を喫したにも関わらずサポーターのチャントは切らすことなく鳴り響いてた。そのひたむきさにきっとピッチの選手たちも責任を感じただろう。でももはや敗戦が決まった状態からも尚もゴールを狙った姿勢はすがすがしかった。そして実際に2点返した。ただそれを決めた浅野は移籍してしまう。色んな意味で課題を突きつけられたような気がしたのだった。

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