神戸戦~稲垣、まさかの2ゴール

2019年10月5日 サンフレッチェ広島vs ヴィッセル神戸 エディオンスタジアム広島

 凄い、人多い。
 スタンドの光景を眺めた時、思わずそう呟いてしまった。神戸のイニエスタ、ヴィジャといったスター選手が観客を呼んだのだろうか。敵とはいえありがたい。この多くのサポーターが選手の後押しとなることを期待した。
 そしてそのサポーターの声援は確実に後押しとなり立ち上がりから相手陣地でボールが回る。怪我明けのヴィエイラが真ん中にいることでボールが収まる。左サイドに出ると森島が単独ドリブル突破。折り返し。川辺シュート。入った、と立ち上がりかけたもののゴールの脇逸れて転がっていった。
 外すかよ。ゴール真正面だったのに。ああいうシュートを決めないでどういうシュートを決めるのだ。得点力不足の原因を垣間見た気がした。
 そこに気落ちしたのも束の間、再び似た場面が訪れる。最後列から上がったDF佐々木がスルーパス。森島抜ける。そしてマイナスパス。これに飛び込んだのが稲垣。GK飯倉が掌に当てるもボールの威力が優ってた。ゴールの中に入り込んだのだった。
 稲垣、ゴール。GKの脇、ほんのわずかなスペースに放ったシュート。しかも味方のラストパスの出どころにいつの間にか走りこんでるのが稲垣らしい。加入当初は下手な選手だと思ってたが、確実に技術を上げてる選手なのだった。
 早い時間の先制点に気をよくしながら試合を進める。このままリードを保ったままいきたい。だが一旦ボールを奪われると主導権が神戸に行く。ブロックを敷いて受けに回るサンフレッチェ。人数を掛けて砦を築いている。神戸の攻撃はそのブロックの周りを周回させるだけ。それでもイニエスタにボールが入ると危険度が増す。予測もつかない方向へパスが出る。DFの裏へ落とされる。ビジャが走りこんできたがGK大迫の飛び出しにより無事難を逃れた。
そういう受けに回る時間はその後も続くもバイタルエリアには入れさせない。周辺を回させてるだけ。ビジャがボールを受けた場所はゴールからずいぶん離れたとこだ。野上もマークには行ったものの後ろ向きになりバックパスをする体勢だったので厳しくいかなかった。すると反転、前を向くと前線にループパスを放った。DFの裏にポトンと落ちると、古橋が走っていた。佐々木が追いかけるもすでに遅くワントラップでシュート。入った、決まってしまった。一瞬、ほんの一瞬の隙を突いたプレーなのだった。
やはりビジャはワールドクラスの選手だった。決めた古橋も見事だった。でもこの失点は痛かった。追いつかれたというスコア上のこともあるが人数を掛けた上での失点というのが痛い。このところ繰り返してる失点のパターンである。それだけにまたかという失念が大きかった。
 早くも同点。簡単に先制したが、そのまま勝たせてはくれなかった。ここ1か月勝ってないという呪縛はやはり重い。なんとか負の鎖を断ち切りたい。その為にもゴールがほしい。でもそれが最も難しいのである。改めて開始早々のシーンで川辺がゴール真正面であるにも関わらずシュートを外したのが悔やまれる。
 その後も川辺はバイタルエリアでシュートを放つもDFにブロックされる。やはり枠に飛ばない。そして攻守が入れ替わる。神戸はGK飯倉もフィールドに出てパスを回す。高い位置で奪えばチャンスだがプレスは軽くいなされてしまう。それでも森島のプレッシャーの掛け方が効いてラインを割ってマイボールになる。それを中盤でつなぐと
右から左へ。そして後ろへ下げてまた前へとボールを捌く。攻撃のスイッチを入れようとするも詰まれば下がりまた組立直し。それらの中心には青山がいた。そしてその青山からサイドに入れると野上から縦パス。裏へ向けたヴィエイラ。そしてゴール前へ折り返すと走りこんだ選手の足元へ。走った勢いのままシュート。入った、入った。入った。決めたのは稲垣。本人もキャリア初となる1試合2ゴール目を決めた。
叫んでしまった。得点力不足の中、決めたのが運動量を生かして守備に貢献する稲垣だった。本当に稲垣は神出鬼没である。どこに現れるか分からない。それがこの選手の魅力でありストロングポイントである。
だが1点では覚束ない。実際すぐに同点にされてしまった。ここは畳みかけて追加点が欲しい。とそんな気概から前線での守備、セカンドボールの反応につながり青山がミドルシュート。DFのブロックに阻まれる。が、ここで笛が鳴ってPKを宣告される。ハンド、手に当たったようだった。
雄たけびを上げる青山。ボールを置いたヴィエイラ。2点差になれば大きい。笛が鳴る。大きな助走からヴィエイラのキック。が、それをGK飯倉に反応され決めきることができなかった。
ああ、ヴィエイラ。ハイネルにでも蹴らせればよかったのに。せっかくのリードを広げるチャンスをみすみす逃してしまい不穏な空気が漂う。たった1点差のリード。果たしてこのままリードを保つことができるのか。そんな不安を抱きつつ前半を終えるのだった。


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