FC東京戦~立て直せなかった1年

2021年11月27日 サンフレッチェ広島 vs FC東京 エディションスタジアム広島

 雨が落ちてると思ったら向こうの雲の切れ目からは晴れ間が覗いてる。その為雨に打たれてるという感覚がない。ホーム最終戦、不甲斐ないシーズンの締め括りにせめてこの試合だけは勝ちで終わらせようという気概は激しいプレスにより感じることができた。
 1人がかわされると2人目が入ることによって最終ラインまで侵入されてもDFは楽に回避できる。それもボランチに塩谷が入った効果だった。当たりが強くポジショニングが的確な為相手はポゼッションに余裕がない。それによって絡め取ったボールも攻撃へと転じやすい。右サイドに出すと藤井が走る。だがここは長友に蓋をされる。ここを突き抜けて欲しい。長友が日本代表であるからこそ突破してもらいたいのだった。
 再びFC東京の攻撃。それを最終ラインで食い止めるとロングキック。するとこの落下点に鮎川が入ってる。今まで誰がFWをやってもクリアボールに対する予測がなかった。それをやってくれるだけで相手の攻撃が遅れる。それにより佐々木も単純なクリアをせずに左サイドを駆け上がるドリブルで前線まで持ち上がるのだった。
 今日はいつもと違う。もっさり感がない。停滞感がない。突き抜けるような爽快感。塩谷が入ってることでボールへの関わりが良くなってる。そこに柴崎というもう一つの収まりどころがあるので連動が生まれ右から左へと散らすことができる。するとフリーで東のところに入ると素早くクロス。相手にブロックされたもののCKを取ることができた。
 キッカーは柴崎。蹴ったボールはゴール前の山を超えファーへ伸びると塩谷。ダイレクトボレーがゴールにつき刺さったのだった。
 ゴール、ゴール、ゴール。先制。点の取れないチームにおいて早々に決めることができた。やはりいつもと違う。これは追加点いけるんじゃないか。それはトップに入った鮎川の献身的な動きからも期待することができた。
 いつもはヘンテコなプレーでボールを奪われてしまうハイネルもいいアクセントになっている。いつもとメンバーをかなり替えて来たのだがそれだけでこれだけ変わるというのが不思議だった。そしてボックス内へ鮎川が侵入し単独で前を向いた時、決めれるかと固唾を飲んだ。が、DFに倒されてしまった。掌は掛かってたもののあまりにも簡単に倒れてしまいファールは取ってもらえなかった。いい動きはしてるものの今ひとつ結果に結びつかないのはこういうところかもしれなかった。
 そんな押せ押せムードが続いていたものの柴崎がピッチにうずくまることで暗雲が立ち込める。筋肉系を痛めたようで茶島と交代してしまった。レッドカードを貰ったり怪我をしたりどうもこのところの柴崎はついてない。プレーは秀逸なもののやはり年齢の影響を考えざるを得ないが、ベテラン選手に頼ってるサンフレッチェにとっては一つの象徴的なシーンであるように思えた。
 それでも前半は続いた勢いも後半になると徐々に押し込まれる様になってくる。ボールが奪えない。持たせてる様に見えるのは勝ってるからだが高萩のワンタッチプレーやスルーパスに段々と守備の陣形が崩れていく。そしてサイドから放り込まれた浮き球にボックスに入り込まれると折り返し。そこに飛び込んだアダイウトンに決められてしまったのだった。同点。一瞬の隙だった。あれだけ気追い込んで入った試合だったのにこういう瞬間を作ってしまう。一体今シーズンは何度こういう場面を見たことだろう。
 再び攻めなくてはならなくなりハイネル、エゼキエウに代えて青山、サントスが入る。青山のキックとサントスの馬力に賭けたものの大勢は変わらない。FC東京のCKが続く。森重がフリーでヘディングシュート。GK林が真正面でキャッチして難を逃れると一息つけたものの野上が倒れ込んでしまった。混戦の中で足を捻ったらしく交代を余儀なくされた。
 代わって入ったのはJ1初出場の住吉。ついに出てきたのだがあまりにも使わなかったのでもう出場はないと思っていた。そういう起用選手の偏りもチームが硬直してしまう原因でもあるような気がした。
 ところがこの住吉、いきなりDFラインでトラップの方向を誤りボールを奪われゴールに向かわれる。追走するDF。ラストパスを出され他もののそこを何とか食い止めた。まだまだ終わるわけにはいかない。追加点を取らなければならない。
 すると左サイドにポジションチェンジした藤井が縦へ抜ける前にクロス。GKの頭上を超えるそのボールはゴールに吸い込まれそうになるもののバーに阻まれてしまう。惜しかった。が、どうも相手に当たったようでCKになったのだった。
 この CKを大事にしたい。セットしたのは東。左足のキックは弾き返されたものの再び拾いゴール前へ入れる。が、これもクリア。ただそのこぼれをサントスが拾った。間髪入れず蹴らずにプレーに迷いを生じると全速力で戻った東京の選手に奪われカウンター。慌てて戻るサンフレッチェの選手。ゴール前までは戻った。が、バイタルゾーンでの守備が甘くミドルシュート。GK林の横飛びも虚しくゴールにぶち込まれてしまったのだった。
 逆転。残り時間を考えてももう決定的だった。このまま1−2での敗戦となりホーム最終戦は何とも盛り上がることのできないものとなってしまった。
 1点入れると逆転される。先制されると追いつけない。なんだか今シーズンを象徴するような試合だった。まだ残り1試合を残してるとはいえ沢田代行監督は1試合も勝ててないことで将来的に監督をする道も閉ざされてしまった。
 新監督にドイツ人のミヒャエル・スキッベが決まったことで沸いたもののまだ見ぬこの新監督の元で本当にこの停滞したチームを立て直すことができるんだろうか。そんな冷めた感情でシーズンを終えるのが寂しくあるのだった。

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