浦和戦~森島の活躍

2019/05/26 浦和レッドダイヤモンズvsサンフレッチェ広島 埼玉スタジアム2002

 呼吸をすると熱せられた空気が肺の中に入りそれが一段と体温を上げそうな気がしてくる。もはやこれは夏の気温。5月でこれだから真夏はどうなるのだろう。地球の温暖化に真剣になって心配をしてしまうのだった。
 だがスタジアムへ向かうこのぼくの行為はそれ以上の心配事を抱えることになりそうだ。。5連敗中のチーム。相手はサンフレッチェに異様なライバル心を持つ浦和。数年前、毎年のようにサンフレッチェの選手を引き抜くのにサンフレッチェが優勝するという時期があった。もはやそこはメンツに関わる問題だけに致し方ないだろう。
 そんな逆境を打ち返す底力を見せてくれることを期待して東部スカイツリーラインに乗る。まるでサッカー観戦客らしき人がいない。本当に今日試合あるんだろうかと不安になる。赤い人、赤い人はいないのか。
 それでも北越谷駅に降りるとシャトルバスは待機していた。あ、単にぼくの出かける時間が遅かっただのようだ。そう、ぼくはあまりにもぎりぎりになってしまった。キックオフ間に合うだろうか。幸か不幸か指定席しかチケット購入できなかった為に席の心配がないというのは仇となってしまったのだった。
 とはいえかろうじてキックオフには間に合い見下ろすような位置で席に座った。スタンドに屋根が掛かってるのは観戦者の日よけになるだけでなくピッチも程よい影を落として選手のパフォーマンスにおいても有利に働くのだった。
 白いアウェイユニフォームのサンフレッチェ。いつものように守備から入りカウンターを狙う。そんな戦術はいつも力でねじ伏せられるもののこの日は違った。右サイド柏が持つとドリブルを仕掛けるのは勿論のこと、裏へのスルーパスが面白いように通る。サイドからクロスが上がる。ゴール前での混戦。ごちゃごちゃっとした状態でかろうじて放ったシュートはカツンとゴールバーに弾き返される。だがセカンドボールに反応したのは森島だった。脚を振り抜きシュート。ドンという音が聞こえてきそうな豪快なシュートがゴールネットに突き刺さったのだった。
「うおおおおおおおおおおおっ!」
 一斉に立ち上がったアウェイの紫のサポーター。長い長いリーグ戦での無得点を今季初スタメンの森島が打ち破った。期待されつつ結果が出ないまま時を過ごした森島。ACLで結果をだしたことからの大抜擢に見事応えた。そのゴールは勿論本人が一番喜んだろうが、応援してるこちらも熱く、燃え上がるものがあるのだった。
 早々に点を入れたサンフレッチェ。でも1点などすぐに吹き飛ぶ。試合は始まったばかりなので気を抜くわけにはいかない。
 ところが今度はサイドで柏がボールカット。その勢いに乗りドリブルで突き進み折り返し。中からエミルがシュート。完全に崩したかと思ったそのシュートはGK西川に弾かれてしまい天を仰ぐ。それでもCKは得ることができた。
 セットする森島。キックを放つとドウグラス・ヴィエイラがヘッドで叩き込む。だがゴールから跳ね返ってしまう。ああ、入ってないのかと思いきや主審はゴールの判定。一度入ったらしい。入った、入った、入ったと喜びを分かち合うもそれは遅れた反応となってしまった。
 2点差となり後半に入る。GK大迫のパントキックから裏へロングボールが出る。駆け抜けた森島。追走するDFを置き去りにしてGKと1対1。決定的場面。このシュートをGK西川にぶち当ててしまった。ああ、これは決めて欲しかった。ここでループシュートを打つ技術があればと嘆いてしまう。
 ところがその後中盤でボールを受けるとゴール前へスルーパス。エミルに代わって入ったハイネルが鬼神のようなスピードで裏に出るとシュート。西川ブロック。だがボールがこぼれそれを再びハイネル、シュート。入った。ゴールに叩き込んだのだった。
 ハイネル初得点。あれだけゴールから遠ざかっていたのに2人も初得点が生まれた。そしてハイネルのゴールへ向かう迫力。それはパスでの崩しにこだわったサンフレッチェにとってもっとも不足してる部分なのだった。
 そしてこのゴールによって浦和の士気はガクッと落ちてしまった。バイタルエリアにスペースが生まれ、森島を経由してまたしても裏のスペースへ出る。そしてそれを中盤の底から駆け上がってきた川辺が追いつきそのままドリブル。深くえぐると折り返し。ゴール前で待ち構えてた渡が当てるだけできめ、4点目が入ったのだった。
 もはやこれは勝利を決定づけるゴールだった。しばらくぶりの渡のゴール。出場機会の割に決めてないことは本人も意識してただろう。それだけに喜びを爆発させる。そしてそんな渡を祝福する為に渡コールが響き渡るのだった。
 勝った。リーグ戦6試合振りの勝利。ああ、酔いしれたい。勝利とは何とよい響きをもたらすのだろうか。ただ、次節が勝てるかどうかが問題である。さすがに5連敗もしてしまっただけにこれだけで不調を脱したとは思えない。ただ、全ての得点に絡んだ森島には大きな可能性は見いだせたのだった。

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