東方戦~弾みのついた試合
2024年12月5日 AFCチャンピオンズリーグ2 グループステージMD6 サンフレッチェ広島 vs 東方 エディオンピースウイング広島
平日の17:00。何とも中途半端な時間での開催であるが、これはグループステージの最終節ということで他の試合と同時刻に設定した結果らしい。ただ、観客動員に関しては当然マイナス要素であり、どんな悲惨な状況になるだろうと思いきや1万人を満たない程度にはスタンドは埋まったのだった。
そして引退の決まった青山がキャプテンマークを着けてピッチに出る。そこに応援に熱が籠る。更に退団の決まった柏もいる一方、越道、中島といった若手を始め出場機会の少ない選手が入っている。それでいてワントップにパシエンシア、GKに大迫というレギュラーメンバーが入ってるとこは単なる記念試合にしないという意思の表れでもあった。
東方からのキックオフ。ボールが放たれるとスタートから全速力でのプレスが始まる。まるで何かに取り憑かれたかのよう。それはそうである。満田、マルコスのように何がなんでも結果を残したい選手もいる。そしてパシエンシアにしても2ヶ月もゴールから遠ざかってる。そして何よりも青山のホームラストマッチという舞台を無駄にしたくないという想いは熱量を帯びさせた。もはや双方にとって消化試合でしかないのに本気で勝ちにいったのであった。
プレスで追い込み、追い込み、高い位置で奪いに行こうとするもののそこをすり抜けられると右サイドをワンツーで裏を取られる。ドリブルで切り込むウー・ユーシー。細谷が相対すると切り返しで逆を突かれシュート。ニアに放たれたボールはGK大迫も対処できずゴールにぶち込まれてしまったのだった。
失点。何ということ。細谷は完全に1対1で負けてしまった。確かに相手のプレーが上手かったのはあるがだからこそ厳しい目を向けたい。出場機会が欲しいのであればこういうのを相手にしなければいけない。押せ押せムードの中での先の失点は確かに水を差された面はあったものの相手にこういう選手がいることはありがたいことでもあった。
早くも追う展開になったサンフレッチェはやはり高い運動量で相手を押し込めていく。相手もラインを整えて簡単に中を割らせない。その分ミドルシュートが多くなるもののいずれも枠に飛ばない。それでも消極的な時はそれすらもないだけに勝ちへの執念は感じる。ただ、いいとこまではいくけど最後が決まらないといういつものジレンマに陥るのだった。
そんな時間が続くことで次第にジリジリとしてきたが密集したペナルティエリアへボールが入った。パシエンシアがボールコントロールに時間を掛ける。それにより前を閉じられる。相手との混乱の中でボールがこぼれる。満田が拾いスペースへと落とした。そこへ駆け上がった志知がミドルシュート。強烈な弾道はGKブロックもこぼれる。そこを見逃さず突っ込んできた選手がいた。ふわっと浮かしたループシュートがゴールに入った。
同点。押し込んだ。そしてこれを決めたのが青山。本人にとってのホームラストゲームに決めた。このゴールにスタジアムは沸騰する。このゴールが引き金となり一層サンフレッチェの攻撃に拍車がかかっていくのだった。
だがこのまま前半は1-1ドローのまま終える。後半いつものパターンではパシエンシアは交代であるがメンバー交代はなし。出来る限りこのメンバーでやらせたいという監督の意図が伺えた。それに応えるべく越道が右サイドを縦へ仕掛けクロスを上げる。入り乱れるゴール前。ファーに流れたパシエンシアが合わせた。ヘディングで勝ち越しゴールを決めたのだった。
ゴールが決まると流れるBGMが鳴り響く。パシエンシア、パシエンシア、パシエンシア!本人にとっても久々のゴール。だけどそれ以上にぼくらも観たかった。これで逆転。最低限のノルマは達成した。だがこんなものでは足りなかった。
お祭り状態になるスタジアムにおいて、東方も火を消していなかった。隙を伺ってはカウンターを仕掛けてくる。完全な2対2の局面をつくられたものの松本大弥が個の対応で防ぐ。そこに本人も手応えを感じたか、攻撃でも気を吐いた。最終ラインからトップのパシエンシアへ縦パスを入れるとそのまま右サイドを駆け上がっていく。中盤を経由して右に出ると大弥の中央へのグラウンダー。そこに入ってきた中島。ミドルレンジながらもシュート。これがゴール隅に突き刺さり3点目を決めたのだった。
中島、中島、中島!このゴールを演出した大弥も凄い。もはやこれで勝利は確信できた。もっと観ていたいという気分になったもののここでパシエンシアに代えピエロスが入る。残り時間を考えてリーグ戦へ弾みをつけさせたい選手の投入である。するとこのピエロスが魅せた。左サイドから運ばれたボールを満田が受けるとドリブルから相手のマークを引き剥がすパスをピエロスへ。DFのマークに遭いながらも身体の向きを変えると一振り。その一瞬の出来事にシュートを打ったという気すらしなかったもののゴール隅に吸い込まれていったのだった。
4点目。ピエロス、ピエロス、ピエロス!もうお祭り状態が止まらない。こうなると皆が皆結果を残したい。中島、満田に代わって川辺、トルガイが入ると余計に前掛かりも待っていく。あと1点、あと1点。とにかくゴールが観たかった。トルガイが、ピエロスが、とシュートを放っていく。決めきれずにその度に次への渇望が湧く。確かにこの試合には何の意味もない。だけどそれがリーグ戦最終戦へ向けての勢いに繋がるのがわかっているのだった。
かくして4-1のまま試合を終えた。充足感がありながらもう1点が奪えなかったことへの残念さがあるのは2008年J2での最終戦にあと1点が奪えず100ゴール達成できなかった時の感覚に近いものがあった。
結果を出して欲しい外国人FWが決め、次の世代を担う中島も決め、そして引退する青山が決めた。出来過ぎの内容である。この勢いをこのままリーグ最終戦へと持っていきたい。全ては3日後の決戦の為に。