清水戦~現れなかったニューヒーロー

2021年3月3日 ルヴァンカップ予選リーグ サンフレッチェ広島 vs 清水エスパルス エディオンスタジアム広島

 日の落ちた山の上に建つスタジアムは気温8度だった。入場した選手はベンチコートを羽織ってる。まだまだこの時期の夜は冷え込みを感じる。そんな中ピッチに立ったのはリーグ戦とは総入れ替えのメンバーだった。
 中でも注目は鮎川だった。入団2年目の日本人FW.寿人の後継者となりうる人材として掛かる期待は大きい。ここで活躍してチーム内での序列を上げてもらいたい。他の選手にも言えることだがここから新たな戦力として停滞したチームに活力を与えてもらいたい。
 そんな野望を魅せたのは大卒入団の藤井だった。右サイドをスピードで抜けクロス。それはシュートに結びつかないものの今度はワンツーによる飛び出し。が、これを読まれてしまう。その後もスピードを生かして裏を狙っていくものの完全に蓋をされてしまった。もはや藤井のスピードは完全にケアされていたのだった。
 そして逆の左サイドではエゼキエウがドリブルでペナルティエリアに侵入するもクロスは鮎川のヘディングはヒットしない。いや、まだこれからと丁寧にボールをつないでいくも打開がはかれず後ろへ下げ、清水のプレスに喘いでいる内にGKまで戻るとロングキック。それが相手ボールになっていく。それでも鮎川が前線でプレスを掛け続けてくれる為に自由な攻撃をさせてないのだった。
 ただそんな試合運びも段々と清水のボール支配が続くようになっていった。たまにマイボールにしても攻撃が遅い。ワンタッチでのパスがない。その癖ドリブルで抜ける選手がいない。かつてあれだけ頼りにしてた柏のドリブルは一向にその姿を現さなくなってしまった。唯一エゼキエウが密集への切り込みを狙うものの最後にパスがズレて逆襲を喰らってしまう。もはや2番手に甘んじてる選手が奮起するどころかもうまともな試合の様相すら呈してないのだった。
 そして後半ついにジュニオール・サントスが入ってしまった。佐々木が入り、浅野、森島とレギュラーメンバーが入ってくる。するとサントスのボールの収まりと突破力は前を向かせ森島のボール捌きは攻撃への押し上げをはかる。そんな間隙を縫って浅野がドリブルで駆け上がりシュート。GKに弾かれたもののゴールへ向かう姿勢が観れた唯一のシーンではなかったろうか。そしてこのままスコアレスドローのままゲームを終えたのだった。
 鮎川はもう1本ヘディングシュートを放ったもののGKに阻まれてしまった。スーパーセーブかもしれないが少しヘディングの威力が足りなかった。高さが足りないという身体的理由があるかもしれないがそれでも佐藤寿人はゴールを量産した。一体寿人はどやって点を取ったんだろう。そんなことすら分からなくなるくらいこのチームには得点の臭いがしないのだった。
 3年前、ACLで森島や荒木が活躍してレギュラーの座を取った。そんな若手の突き上げを期待しつつもカップ戦であのような躍動感は観れなくなってしまった。果たしてこのチームの停滞感はどうやったら突き抜けることができるんだろうか。

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