神戸戦~気まずい勝利

2020年10月18日 サンフレッチェ広島vsヴィッセル神戸 エディオンスタジアム広島

 城福監督不在の為、沢田ヘッドコーチが代行監督となった。更にメンバーには野津田、エゼキエウという久々のチャンスを貰った選手がいた。前節の屈辱的な敗戦を受け、この試合もトップのペレイラ先頭に前からプレッシャーを掛けてきた。それにより高い位置でのボール奪取に成功して押上が起こる。間違いなく幸先のいいスタートだった。
 ところがバイタルエリアから最後の崩しのパスになるとまるで獲物を待ち構えていたかのようにボールカットしてしまう。そこでミドルシュートを放とうとするも全てブロック。シュートにすら持ち込めない。そうやって奪ったボールはイニエスタの元へ。そこからたった1本のパスでゴールへ向かうカウンターを生んでしまう。迂闊なボールロストは自らの首を絞めることになる。そんな警戒感はサンフレッチェから攻撃への勢いを奪ってしまった。
 攻勢を強める神戸。イニエスタだけでなく個々でボールを扱う技術に秀でた選手が多い。ブロックをつくって守る。跳ね返してもセカンドボールを拾われる。一方的な展開。だがそれでいながらボールカットから押し上げをするとペナルティエリアでペレイラが受ける。外に流れるもクロスに茶島ヘッド。いい展開だったもののヘディングの威力が弱くGKにキャッチされてしまう。またしても決定機を決めきれない。
 再び神戸の時間が続くもまたしても神戸が前掛かりになってる分、2人、3人と剥がすと一気に前線まで持っていける。そこでCKを得るのだった。相手ペースの時のセットプレーはありがたい。右サイドコーナーにセットした森島。右足で蹴ったボールは高くゴールから離れる弧を描くと佐々木が助走から飛び込んだ。ガツンと放たれたヘディングはGK飯倉の掌を吹き飛ばしてゴールにぶち込まれたのだった。
 先制。
 前半の内にリードすることができた。佐々木の周りに群がる選手達。まずは優位に進めることができる。だがまだ1点差。まずは前半を無失点で乗り切って終わりたい。
 ボール支配率を依然として保つ神戸。古橋がサイドでドリブルを仕掛けてくる。トップのドウグラスに入ると無理にでもシュートを打とうという姿勢をみせる。無事このまま前半を乗り越えたい。そんな時エゼヒエウがサイドのチェックへ行くと出しどころを止めた。更にライン際粘って奪いきると縦へドリブル。中央ペレイラへ預けそのまま縦へ上がっていく。ペレイラのスルーパスを呼ぶ動き。だがペレイラはそのまま中央を突き破ってシュート。弾丸のようなシュートは再びGKの掌を吹き飛ばしてそのままゴールに叩き込まれたのだった。
 追加点。このまま1点差を守っていきたいと思ってたところでの追加点は大きい。これによりもっといけるという確信が生まれた。それにより後半になってもより自信を持って攻勢を強めることができたのだった。
 まるでボールが吸い寄せられるようにサンフレッチェの選手のとこにボールが落ちる。ブロックされてもクリアされてもセカンドボールが拾える。これはこのまま3点目も狙えそうだ。ところが肝心なとこでまたしても皆シュートを外す。ゴール前で完全なフリーで受けた茶島はシュートを思いっきりふかしてしまう。折り返しを望んだペレイラは怒ってた。怒る理由も分かった。とどめを刺す機会を逃したことは神戸に心置きなく攻撃へ向かわせるのだった。
 変幻自在なパス回しにボールの獲りどころがない。人数を掛けてブロックをつくるも中盤がポッカリ空いた。そのスペースにボールを落とされると最後尾から鬼人の速さで駆け上がったダンクレーがシュート。キャノン砲のような破壊力でゴールにぶち込まれたのだった。
 1点差。マズい。この規格外のゴールによって神戸の攻撃は一層活力を得、もはやサンフレッチェはマイボールの時間がつくれない。もはや全員攻撃に向かいいつでも点が取れると言わんばかりだ。強い、上手い、速い。神戸のプレーに対処のしようがなく水中に潜ってるかのような息苦しさを感じる。クリアして息継ぎしてもまた水に潜るよう。苦しい。苦しくて苦しくてたまらない。そして古橋のドリブルに遂にペナルティエリアに入られた。マークに着いた東。放たれたクロスが手に当たってしまった。
 ああ、PK。だが笛は鳴らない。猛烈に抗議する神戸のベンチ。判定が覆らないようにプレーを続けた。残りはあとわずか。そしてすでにアディショナルタイムだったこともあり程なくして終了してくれた。
 勝った、勝点3である。PKにならなくてよかった。でもこんなんで喜んでていいんだろうか。神戸が抗議をする気持ちはよく分かる。でも勝点3。喜んでいいんだろう。いや、でも・・・・・・。
 気まずいものはある。それだけに数ある決定機をことごとく外してしまったことが悔やまれる。少なくとももう1点入れておけばこんな気まずい想いをしなくて済んだだろう。勝ったにも関わらず、ゴール前で茶島がシュートをふかした場面が残像のように浮かび上がってくるのだった。

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