清水戦~FWの胆力

2021年3月17日 サンフレッチェ広島 vs 清水エスパルス エディオンスタジアム広島

 大型補強した清水。トップのチアゴ・サンタナは体格が良く、迫力がある。対するサンフレッチェはトップで鮎川、右SBで今津が入り外国人のいないスタメンとなった。いつかはやりたかった構成であろうがこんなシーズン間もない時期に勝負に来たのだった。
 立ち上がり、清水がボールを支配していきなり受けに回る。前線で鮎川はプレスで踏ん張る。GKも含めたパス回しにプレスが掛からず持ち上げられ、クリアしても前線でボールを収めることができない。ビルドアップでつないでいく清水のサッカーには余裕さえ感じた。引いて守るサンフレッチェ。ああ、これはもう一方的な試合になってしまうだろう。
 ところがそんな流れを切ったのは鮎川のチェイシングだった。プレッシャーに圧された清水はサイドラインにボールを出してしまいサンフレッチェボールになった。そこからパスワークによりボールを支配していくのだった。
 全体に前掛かりになると右サイドバックの今津もオーバーラップを見せクロスを上げる。スワーヴの掛かった鋭いボールだったものの高くそびえ立った清水のDFはクリア。だがCK。再びゴール前へと放たれるもまたしてもクリア。そのセカンドボールを拾いボール支配が続く。そしてクロスを入れて跳ね返されるとサンタナに渡るも荒木が身体をぶつけることでカウンターを食い止めるのだった。
 サンフレッチェの攻撃は続いていく。左サイドで浅野にボールが入るとそのままスピードで抜ききりクロス。ファーサイドに入った柏がダイレクトシュート。ジャストミートせず枠外。完全に崩した場面だったが決めきることができない。その後もゴール前の混戦から跳ね返りを浅野カットインからシュートも枠を外れてる。DFラインを飛び出した鮎川がドリブルでゴールまで迫るもシュートはGK権田にキャッチされる。
 決めきれない。だがシュートを打つ意識が高い気がする。打たなきゃ入らないというごく当たり前のことを躊躇してしまうサンフレッチェがなぜかシュートへのチャレンジが散見されるのだった。
 またしても今津の上りからグラウンダーのクロス。ペナルティエリア内にいる浅野の足に入るとヒールキック。ゴールへと角度が変わる。が、これもGK権田はキャッチしてしまった。権田の壁は厚く堅いのだった。
 攻めてはいても仕留めることができないままハーフタイム。ここで清水は選手交代を行いまた清水ペースへと持って行く。だがその勢いに気圧されることなく守り切ると徐々にペースはサンフレッチェに戻ってくる。CKからは佐々木のヘッドが放たれ一瞬歓喜に沸き立ちそうになるも枠外。ここでもやはり決めきれない。そして森島が左サイドで高い位置までドリブルで持ち運んだが最後は潰される。更は鮎川に再びゴールへ向かった状態でパスを受けたものの自らシュートを打つことなく横パスを出してカットされてしまった。あそこでパスを出してしまうとは、FWなら自分で行けと叫んでしまった。
 チャンスはあっても決めきれない。そこでCKが入る。森島の蹴ったキックは高い清水の守備網を超えファーの今津へ。中央へとヘッドでつなぐと東がゴール前へと頭で放る。するとその落下点に入った荒木、押し込んだのだった。
 先制、先制、先制。どうやっても崩れなかった清水の壁、3人の連携が突き破った。SBとして存在感を出していた今津がここでも見事に絡んでいたのである。毎回毎回甲府から移籍してきた選手はレベルが高いが今津もその例外ではないみたいなのだった。
 この流れなら追加点もいけるかもしれない。森島のキープ力はファールを受けFKを獲得する。これは実らず相手ボールになるも浅野が鋭い読みでパスカット。ドリブルで駆け上がりそのままシュート。ポストに当たって外れるも迫力は充分だった。守ってはハイボールであればGK大迫はキャッチしてしまうので安心感がある。ただ追加点が取れないことで徐々に守りに入っていくようになるのだった。
 交代で個で打開できるサントスを入れる。すると相手のパスカットからドリブルで突き進む。味方は上がってない。目の前には2人のDF。それをシザースで抜き去るとシュート。ガツンとバーに跳ね返された音が響き渡った。
 惜しい。決まってないがああやってゴールを目指す姿勢が相手に恐怖心を与える。ゴール前でパスを出す鮎川とはここが違うとこだ。FWであったならやはりゴールに向かってほしいものである。
 残り時間が少なくなっていく。それに従い清水の攻撃も厚みをましていく。防戦一方のサンフレッチェ。先制しても追いつかれる試合が続いた。ここで守れるかは大いなる試練だった。跳ね返し、跳ね返し、跳ね返す。ボールホルダーへプレッシャーを掛ける。1秒1秒時間を削っていく。そして終了が近づくと清水はパワープレーに来た。
 ゴール前に入ったボールを跳ね返す。そしてセカンドボールを拾われ再度放り込まれ跳ね返す。サイド放り込まれるもクリアするとやっとのことで終了の笛が鳴った。勝った、今シーズン初となる無失点による勝利である。しかも外国人選手の力を極力使わないで成し遂げたというのが大きかった。
 鮎川のチェイシング、今津のSBによる展開力。これらの新しい要素がいい形として現れた。そして更なる飛躍の為にも鮎川にはゴールが欲しい。その為にもやはり打ちに行ってもらいたい。そこに今後の行く末が掛かってると言っても過言ではないだろう。

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