アジアカップ、サウジアラビア戦~堪えることによる勝利

2019年1月21日 アジアカップ1回戦 サウジアラビア vs 日本 ジャルジャ・スタジアム

 UAE。中東。午後。
 それだけで太陽が燦燦と照り付ける灼熱の天候を感じてしまう。そして実際ピッチの選手の顔からは汗がにじみ出ていた。きつそうであるが気候的にはサウジアラビアの方が慣れてそうだ。そしてキックオフ直後からサウジアラビアは飛ばしてきた。その寄せの
速さから日本はボールを持つこともままならなくなった。
 全員が下がって相手の攻撃を跳ね返すのに必死だった。クリアしてクリアしてクリアする。そしてそのセカンドボールがほぼ100%サウジボールとなる。クロスを入れられドリブルで突破を掛けられシュートを打たれる。苦しい。苦しい、苦しい、苦しい。息つく暇もなく防戦をしなければいけない。真正面からのシュートもあるも吉田が顔面でブロック。まさに身体を張ったディフェンスなのだった。
だがいつまでもこの状態は続かないだろう。なぜならサウジは飛ばし過ぎている。いつかはバテるだろう。そこに希望を見据え堪えるのだった。
 そしてそんな圧倒的ボール被支配率の中にあってやっと前線で原口がボールを受ける場面ができた。左サイドから切込みクロス。が、ブロックによってCKとなってしまった。いや、CKはチャンスなのだった。
 ボールのセットは柴崎。放ったCK。中央に落ちたボールは富安の頭へ。ヘディング、GKと逆サイド。入った。入った、入った、入った。ディフェンダーである富安が決めてしまったのだった。
 先制。一方的に攻められてる中において相手の出鼻をくじく値千金のゴールだった。これで楽になった。更にもう1点決めることができればこの試合は貰ったも同然だろう。追加点、追加点。そんな欲が沸き立った。
 ところがサウジアラビアは意気消沈するどころか益々その闘志に火をつけた。日本にボールを持たせる隙さえ与えない。次々に前線に選手がなだれ込み攻撃を仕掛ける。2次攻撃、3次攻撃とその勢いは増すばかり。日本は跳ね返すのが精一杯。そしてセカンドボールはことごとくサウジアラビアに渡るものだから苦しさは増すばかりだった。
 どこかでこの苦境から抜け出せないか。わずかな隙な見つけてつないでいく。だが裏を狙ったロングパスは精度がない、もしくは受け手とのタイミングが合わずカウンターへとつながらない。トップである武藤にしてみればフラストレーションが溜まるだろう。そんな焦りから相手へのプレッシャーがイエローカードとなってしまった。いよいよ苦しくなってきた。
 スピードのある伊東、ディフェンスに厚みを持たす為に塩谷を投入するも劇的な変化は起きない。それもそのはず、フィジカルコンタクトがあるとサウジアラビアの選手が倒れて全て日本のファールとなってしまうからだ。さすがにそれは違うだろと疑問を持つ中、完全にマイボールのはずのCKをGKにされてしまった。もうプレーが止まると全てサウジアラビアのボールとなってしまうのだった。
 納得のいかないジャッジに文句を言いながらもはや時間の経過を願うしかないのだった。堪えろ、堪えろ、堪えろ。そして時間よ、早く経ってくれ。アディショナルタイム4分。意外とまともな時間だった。そして前線でファールを貰った。時間が稼げる。だけどここでFKをまともにゴール前へ入れてきたが為にカウンターへとつながってしまった。最後の最後までチャンスであればそれに挑むというスタンスなのかもしれない。そしてリスク管理もちゃんとできている。果たして攻めて攻めて攻めまくってるサウジアラビアにゴールを与えることをさせずに試合を終えてしまった。0-1で勝ったのだった。
 深い安堵の溜息と共にぐったりと倒れこむ。最後の最後まで電池切れを起こすことなく攻め続けたサウジアラビアは脅威だった。全身全霊で掴んだ勝利。トーナメント1回戦でここまで厳しいとなるとこの先はどうなるんだろう。気が遠くなりそうだった。
 それでもこういう勝ったことが信じられない試合を制するというのを森保監督はサンフレッチェでもやってきた。確実に日本代表は森保監督のカラーになってきたようなのだった。

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