福岡戦~数的有利の引分け

2021年8月9日 アビスパ福岡 vs サンフレッチェ広島 ベスト電器スタジアム

 オリンピックが閉幕した翌日、早くもリーグ戦の再開となった。制限はあるとはいえ観客が入ってるのは気持ちいい。照明で照らされたピッチはより一層の芝の緑が栄えていた。ただ、それを観るぼくの眼はどこか曇っている。勝てない試合を繰り返してたサンフレッチェが中断期間中に立て直しができたか。そういう期待をことごとく裏切ってこられただけにどこか冷めた感情になっていた。
 ところが試合が始まればサンフレッチェがボールを持つ。左サイド藤井がドリブルで上がる。そこからショートパスをつなげて全体が押し上がる。ブロックを敷いて固める福岡の守備網を縫うように中央に入れると森島がシュート。グラウンダーのボールはGKがキャッチ。もっと近いとこからシュートしたい。するとまたしても森島のフリックでサントスが抜けた。スライディングに入るサロモンソン。逆からグローリに入られ止められた。崩したと思ったが食らいつかれたのだった。
 攻めてる内に決めたい。いつもの課題がまたしても現れた。ゴール前に人数をかける福岡。そこを崩せないサンフレッチェ。そして攻めあぐねているとどこかでボールを掻き出されサロモンソンに繋がる。単騎で前を向かれると青山がファールで止めた。当然のことながらイエローカード。果たしてそのファールは必要だったろうか。
 そしてこういういい時間に点が取れなかった時の常でどこかで一発喰らうような気がする。するとそういう悪い予感というのは的中する。右サイドを抜かれGK林が飛び出した。スピードを持ったファンマはあっさりかわす。無人のゴールに向けてシュート。やられた、と思った瞬間「ガツン」という音を出しポストから跳ね返った。そのまま林の手の内に収まったのだった。
 助かった。ついてる。今日はそういう日なのかもしれない。このツキを活かしたい。
 そう意気込んだものの後半に入ると福岡にペースを握られる。ああ、やっぱり取るべき時に取らなかったツケが回ってきた。サロモンソンがサイドを駆け上がる。中へ入れられるとファンマのボールが取れない。クリアしてCKに逃げる。そしてまたサロモンソンのキック。弾くとこぼれ球を打たれる。ボールに対して福岡は餌を攫う魚群のように反応がいい。対してサンフレッチェは水中でもがいてるだけのようだった。
 またしてもクリアボールをダイレクトでミドルシュート。これをGK林がキャッチしたことで息がつけた。もう少しで窒息するとこだった。どうにかしてマイボールの時間を増やしたい。そこで今度は右サイドを使う。すぐに囲まれ停滞すると細かいパスで外すと柏が抜ける。ペナルティエリアへ向けて切り込むと倒れた。その瞬間笛が鳴り主審が指し示したのはペナルティスポット。押されたと認定されPKとなったのだった。
 更に志知が2枚目のカードで退場。数的優位も得ることができた。ただここで誰が蹴るか。これは絶対に外してはいけない場面。ボールに立ったのはサントスだった。
 静まったスタジアム。主審の笛により始まる。ゆっくりたした助走。そして放つ。飛んだGK。ネットに深く食い込んだボール。読みを当てたGKの掌も吹き飛ばす威力のあるシュートを叩き込んだのだった。
 先制、先制、先制。4ゴールしかなく思ったような数字の残せてないサントスが決めることができた。どんな形であれ決めるべき人が決めた。点を取れないサンフレッチェにとってこういう形でゴールができたというのはやはりツキがあったのだろう。
 一人少ない相手に一方的な展開に持ち込める。あうるとこのいきおいに乗じて森島がDFの間に入ったサントスに出す。食らいつくDF。かわしたサントス。かわしてかわしてGKの動きを見たシュート。入った。追加点。サントスが乗ってきた。これは勝利を確実にした得点だった。
 が、ここでVARが入る。長い沈黙の後下された判定はオフサイド。とんだぬか喜びをされてしまった。
 それでも攻める姿勢を見せつつ無理もしない。そんな試合巧者ぶりを見せて引水タイムでエゼキエウを浅野に交代してさらに前への推進力を高めるはずだった。とろこがここから様相が変わっていった。
 まず最初に前線で前を向いた森島がDFの背後へ出る浮き球を出したものの浅野は反応してない。不満を唱えた森島。更に左サイドからの展開で浅野は簡単にボールを出してしまう。まずい、浅野のパフォーマンスが悪すぎる。これでは数的有利はなくなってしまったのと同じ。浅野がこういう状態というのを城福監督はわかってなかったんだろうか。
 徐々に圧力を高めてきた福岡の攻撃を食い止めるべく松本が呼ばれると交代で表示されたのはハイネルだった。これにハイネルは激怒。献身的に動き回りボールにも絡んでいる。むしろすでにカードを貰ってる青山を代えるべきだというのはぼくも思い、その理不尽さには同情の余地があった。そして森島、柏を下げて鮎川、東を入れるとボールキープできる選手がいなくなってしまっのだった。
 防戦一方の展開にクリアしていくだけ。するとたまたまDFの間にボールが出て東がそれを奪った。ゴールまで一直線。走る、走る、走りGKと1対1。「打てーっ!」と叫ぶもその瞬間を逃すと追走したDFにより詰まれる。ああ、あそこで打たないなんて一体何をしたかったんだ。
 完全にトドメを刺す機会を逃した。久々に出場した東は自己のアピールをするどころかむしろ自らの市場価値を下げてしまった。そしてこのプレーは福岡に一層の活力を与えたのだった。
 すでにアディショナルタイムに入ってるものの福岡の攻撃が途絶えない。左サイドのサロモンソンだけはマークを外せない。だがサポートに入った前が受けるとそのままカットイン。マークについた浅野はあっさり振り切られそのままペナルティエリアの外からシュート。青山がブロックに入る。が、これがリフレクションとなりループシュートとなってゴールに吸い込まれてしまったのだった。
 終了間近の失点。恥ずかしい。罵声を浴びせたくなる。何であと2分が耐えられないのだ。何で1人多いのに攻め込まれるんだ。1人多い状態で追いつかれた。今シーズン2回目。もうこのチームは永遠に勝てない、そう確信してしまった時だった。
 攻めても点が取れない。勝ってても追いつかれる。そしてそれらの要素が監督の采配にあるのは明白だった。明らかに選手交代してからおかしくなった。交代枠5人きっちり使い切らないと気が済まないのだろうか。余計な交代により自ら首を絞めたようなものだった。
 今まで少しは持ってた城福監督への信頼はもはや瓦解した。送り出された若手選手もあまちにもお粗末だった。もはや今シーズン我慢しかない。本気で残留を目標にせねばならない。そして果たしてこの瓦解したチームを誰が立て直すことができるのだろうか。

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