2022ベストアルバム(22.12.24更新)

 2022年10月4日(火)23時42分 僕はこの記事を書いている。

 なぜnoteを書こうと思ったのか。それは、シンプルに自分の好きなものを、改めて文章として記録しておきたいと考えたからだ。Twitterの140文字はすぐに流されていって、自分のつぶやきさえ埋もれて思い出すことすら難しくなってしまうし。もちろんすぐに目の前からなくなってしまうものは、その瞬間的な手軽さに魅力があることを理解してはいるんだけれど。ただそれとは別として、僕はまとまった文章で記録を残すことにも意義があると信じていたし、ふとした些細なきっかけでそのこと思い出したわけだ。

 この記事の編集をしているMacBookは、自分の好きなものをジャンルにとらわれずに記録し、文章化していこうと考えて先日購入したものだ。それ以前のPCはとても重くて使い物にならなくなったから、買い替える必要があった。そして、このことは”文章を書く”ということに改めて挑戦するには良い機会だった。

 この記事では今年聴いたアルバムをランキング形式にしてみたいと思う。まだ、10月だし早い?と思うかもしれない。けど、毎年年末に一気に振り返るのは単純に疲れるし、後から思い返して見落としてたものがあったりとか、そういうことにも嫌気が差す。なら、早い段階で今年のベストアルバムを作って、随時更新していく。それでいいじゃないか、それが自分にとってやりやすい方法なら。という結論に至った次第だ。

 では、早速

1. Alpha Zulu - Phoenix

 

  単にPhoenixが好きなだけじゃないか、と言われれば弁明しようがない。確かにそうだ。ただし、このアルバムは彼らの最高傑作ではない。メディアの評価もおそらくそこまで大きくはならないだろう。けれど、妙に自分に引っかかって離れない音楽である。そういう作品にたまに巡り合うことがあって、それは本当に数年に1枚のレベルなんだが、世間の評価なんか気にせずに僕はずっとその音楽を聞いてしまう。そんなマジックがこのアルバムにはある。
 最初、Vampire Weekendのエズラとのコラボ曲(Tonight feat. Ezra Koenig)を聴いた時、かなりポップになったなと思った。そしてMVを見て少しがっかりした。MVではコラボ相手のエズラが東京でタクシーに乗るシーンが出てくるのだが、典型的な斜構な僕は「いつまでLost in Translationを引っ張っているんだ」と思ったわけだが、でもアルバムを通して聴くとそれは一部でしかないことがわかる。いや、当たり前のことなんだけど、ただ全体を見てみることで印象が変わった。
 このアルバムの曲はおそらくヒットチャートのトップを取らないだろう。フェスでアンセムにもならないかもしれない。でも、聴いた人の心に届けばいい。それは、スターとしての圧倒的カリスマとは無縁な、どこにでもいる誰かの物語を目指したからだ。そう、まるで遠く異国の地にいる人が、タクシーに乗って流れる景色を眺めるような。そんなどこかの誰かの日常にリーチしようとしている。このアルバムを聞いて、僕はそんなことを想像する。
 あとは、Twitterにも書いたことだが、このアルバムは前作より5年ぶりの新譜であり、かつて何度も製作を共にした名プロデューサーPhilippe  Zdar(Cassius)が死去してから初めてのアルバムである。バンドのSNSでもこのアルバムを捧げるといったステートメントを発信している。それを聞いたからか、このアルバム全体として、どこかノスタルジーを感じられるところが節々にあった。かつて、M83というバンドがインタビューにて、Daft PunkやAir、そしてPhoenixの名前をあげ、「フランス出身のミュージシャンには共通したヴィジョンを感じるね」「フランス人はとてもノスタルジックな人種なんだよ」なんて話をしていた。まあ、それを真に受けて一概にそうだと言ってしまうのもどうかと思うのだけれど、僕がPhoenixやフランス出身の他のアーティストに惹かれる理由の大部分がここにあるんだという気がしてならない。

2. Ramona Park Broke My Heart - Vince Staples 

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 一聴してすごく良いアルバムだと感じても、ひと月後にはほとんどリピートもせずに忘れてしまうような音楽って沢山あるのだけれど、Vince Staplesに関してはあまりない。つまりは、常にリピートし続けているアーティストである。僕にとっては。

 すでにキャリアもあるし、アルバムも多数出しているが、彼の趣向はずっと変わっていないように感じる。言うなればブレていない。今作もサウンドが今までよりファンクに寄っているとは言われるが、彼の軸は変わらない。ダークでダウナーでドープ。重めのビートでノリノリにも聴けるし、ダウナーにとことん落ちる気持ちで聴くこともできる。重い音楽なのに、軽い気持ちでも聴ける。野外でも、クラブでも、自分の部屋でも良い。この音楽が鳴るところは、気分も場所も限定されない。それが彼の音楽をリピートしてしまう理由なのかもしれない。

3. Sons Of - Sam Prekop / John McEntire

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 アンビエントやエレクトロニカなど、チルな音楽をここ数年聴いてきた。それはコロナ禍だから内省的な気分だったとか、チルな音楽が流行ってたからとか、そういう今の世間の流行とは別のところで、そういったジャンルの音楽が自分の中で個人的なヒットしていたからだ。このアルバムが目指すところもおそらく近いのではないだろうか。流行とは違う普遍的な音楽だ。

 何度も繰り返される電子音とビート。そして徐々に変化する上物のサウンド。清涼感のある冷たいエレクトロニカである。シカゴ音響派の流れにあるのは言うまでもないことだけれど。当人は今更そんなことを意識してることはなく、ただ趣味的にこのアルバムを作ったんじゃないかと想像する。このアルバムをかけると、自分の部屋に一気に清涼感で満たされる気がする。

4. In Spirit - Popstrangers

 個人的な思い入れ込みで言うと、このアルバムが一番になってもおかしくない。
 Popstrangersはニュージーランドのインディロックバンドで、レーベルはCarpark Recordsに所属していた。(※今作は別のレーベル。おそらく自主レーベルからのリリース)つまりは、同レーベルのCloud NothingsやToro Y Moiといったバンドと同じ系譜のバンドである。デビューの時期もおそらく同じくらい(2013年に1stアルバムをリリース)で、その頃流行っていたインディーロックバンドの潮流の中にいたバンドの一つである。簡単に言うと、メガネをかけていてガリガリな、ナードなギターボーカルがやたらハンドメイド感あるポップソングを歌う、と言う系統のバンドだ。ただし、その中でも一つ頭抜けて陰気だったのが彼らPopstrangersで、デビュー時は初期Radioheadに例えられていた。僕は1stアルバムのHeavenという曲を聴いて、彼らのストレンジなひねくれたポップさに一気にハマってしまった。その他にも、シングルで出したシューゲイザーなRats In The Palm Treesなど良曲多数のバンドであったが、2ndアルバムを2014年に出した後は全く音沙汰なし。とっくに解散したバンドだと思われていた。そんな折、8年ぶりに発表されたのが、このアルバムである。以前の作風との比較でいえば、よりダークで、楽曲のフックは薄い。落ちるところまで落ちようぜといった方向性。つまりは、僕の好みにピッタリと合っている。とはいえ、路線変更したわけでもないので、従来のインディーロック感も満載。インディーロック冬の時代なんて言われて久しいわけだけど、流行とは離れたところで、彼らが彼ららしい音を鳴らして、帰ってきてくれたことが素直に嬉しい。他の曲同様、このアルバムの曲もきっとずっと聴き続けるだろう。

5. Gemini Rights - Steve Lacy

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 Bad Habitの大ヒットで、人気者のSteve Lacy。ついにビルボードチャートのNo.1も獲得した(2022/10/8)。そんな流行りに乗って聴いて軽率にもハマってしまった。いや、Steve Lacyについては知っていたよ、なんてことを今更言ったら言い訳じみててカッコ悪いけれど、でもその時は自分の中ではパッとしない人だった。The Internetでギターを弾いてるとか、オレンジ色のスーツを着たジャケのソロ作とか、よく字面だけは見かけていた人。なんだかオシャレっぽい人。オシャレだけど、楽曲にフックがない人。そんなイメージ。でも実際はそんなことなかった。多分、音楽との巡り合わせにおいて、その時の気分やムードとマッチするかっていうものがあって、彼の音楽と初めて出会った時、そのムードのチューニングが僕と合っていなかったのだろう。そういうことが往々としてある、ということをつい最近の音楽との向き合い方として思うことがある。

 話を戻すと、このアルバムは良いアルバムである。バックの音数は少なく、奇抜なフレーズなんて用いられない。歌にフォーカスをしているが、過剰に歌い上げるわけでもないし、リラックスしてる。割と基本に忠実なポップスだと思う。暗いわけではないが、どこか内省的な雰囲気も良い。というか、これを書いていて思ったが、ちゃんと歌詞を追いたいな。I wish I knew you wanted me(Bad Habit)なんてリリックもキラーフレーズじゃないか。もしかしたら稀代のリリシストなのかも。彼のヒットの理由をもっと知るべきなんじゃないかと思う。

6. SICK! - Earl Sweatshirt

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 僕はずっとEarl Sweatshirtのファンだけど、一時期ついてけないと思った時があって、それはSome Rap Songs(2018)の時なんだけど、なんで急にこんなにミニマルになったのと思ったわけだ。1stアルバムの時はファレルがプロデュースに関わったり、どこか盟友Tyler the Creatorと同じ目線のメジャー思考を見せていたようにも思ったが、思いっきりアングラに舵を振ってしまった。そこに辿り着くには、父親との関係とかプライベートな事情もあるのだろうけれど、正直そこまで詳しくは追えていない。でも、そんなSome Rap Songsも聴いていくうちに馴染んできて、そんな折、発表されたのがこの最新作だ。方向性はSome Rap Songsからの延長線のものだろう。先行シングル(2010)を聴いた時、ミニマルで良いなと1発でピンときた。Sick!っていうアルバムタイトルも最高だと思う。明らかにコロナ禍、そして現在の病的な社会やアイデンティティ問題などを考えさせられるし。ただ、それ以上あまり語れることはなくて、単純に音が気持ちいと思わせてくれて、好きな音楽だった。

7. And in the Darkness, Hearts Aglow - Weyes Blood

 オールディーズ感満載の女性SSWアルバム。キャロルキングがそのまま現代にきましたって感覚。なんの捻りもなくて、サウンドも現代的であるとかは思わない。細かく聴いてみたら違うかもしれないけど、さらっと聴いた感じはそう。ただ、良い曲がそこにあるというだけ。だから良い。
 こういう静かめなSSWのアルバムを数年前は聴けないって気持ちになってて、それは結構仕事がきつめで追われてた時とか、割と人生に絶望してて、世の中ぶっ壊したいくらいに思ってた時なんだけど、その時はパンクロックとかヒップホップとかばかり聴いていた。数年前はトラップも流行っていたしね。で、転職をしたら、割と自分の社会人人生の中でもかなり落ち着いた環境と、時期になったわけだけど、そこでしっくりきたのが前作のTitanic Risingだった。で、今作は3部作の2作目らしい。ドライブしながら1曲目を聴いて、最初はわからないと思った。で、しばらくしてTwitterでの感想とか見てみると絶賛されていて、なんでだろうと思う。その感想の中に、これはペットサウンズなんだ、とあって。僕は家に帰ってコーヒーメーカーでコーヒーを入れて、安楽椅子に座ってペットサウンズだと落ち着いて聴いてみる。なんだかとてもしっくりきた。そのまま、2週目もすんなり聴けた。そんなアルバム。

8. Being Funny In a Foreign Language

 2022年はものすごく久しぶりにSummer Sonicに行った。確かChance The Rapperが出た時(2018)以来だから、約4年ぶり。もちろんコロナもあったし、個人的にも転職したりとか環境を変えようと思って色々動いてた時期で、あんまりフェスって感じでもなかった期間があって、そこからまたフェスに行こうと思えたのがThe 1975のヘッドライナーが発表されたからだ。今年は初めて大阪会場に行き、ずっと関東圏にしか住んでなかった僕は、聞きなれない関西弁が周囲から聞こえるのにかなりワクワクしたりして、で、ヘッドライナーのThe 1975は当たり前にカッコよくて最高だった。彼らと同世代であり、世の中への問題意識とか共有してるものも近かったりして、自分のヒーローであるとも同時に、同時代を生きている仲間でもあるなと感じた。その後、ライブでも多くの曲をプレイした前作Notes On A Conditional Formは大好きになって、多分現在The 1975で一番好きなアルバムになってしまっている。
 今作は、うん、まあ個人的には及第点。アルバムとして通して聴いたらあまりピンと来なかったけど、でもちょっと出かけたりすると、結構外でも新譜の曲かかってるじゃん。そういう時、あ、いいなって思う。多分、来年の来日公演見たら、ガラッと印象変わる気もするんだけどね。

9. I Love You Jennifer B - Jockstrap

 ポップで実験性もあって、この気品と猥雑さというか、クラシックなものと現代アート感を併せ持ってる感じが僕のテイストとしては大好きなんだけど、まだ楽曲に小粒感があるかなと思う。もちろん好きではあるし、結構リピートはしているんだけど。

10. The Overload - Yard Act

 今流行りのポストパンクリバイバルにあまり馴染めず、後追いでいくつか聴いたのだけど、一番ピンときたのが彼らのアルバム。シンプルでわかりやすい。だから、結構リピートしてしまうんだよな

11. The Work - Gold Panda

 作風が初期に戻った? ポストダブステップの人なんて言われていたけれど、その感じでオリエンタルな楽器が鳴っている、ものすごくGold Pandaらしい作品で大好き。

12. WHO CARES? - Rex Orange County

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 シンプルにポップで好き。ふと日常で聴きたくなるし、聴いていると良い音楽だなぁって思うんだよな。

13. Harry’s House - Harry Styles

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 今、時の人って感じ。元々インディーロック大好きなハリースタイルズがインディー意識しましたってアルバムを作って、もちろんメジャー感も捨ててなくて、そのバランス取りが素晴らしいなと思うし、シティーポップだとか目配せも完璧。

その他、特段言及しないけれど、良かったと思ったアルバム

God Save the Animals - Alex G

Elegant, Golden - Halftribe

Ugly Season - Perfume Genius

Janky Star - Grace Ives

I'm Not Here - Alex Izenberg

Wind Down - James Blake & Endel

EYEYE - Lykke Li

blue water road - Kehlani

CRY MFER - My Idea

It's Almost Dry - Pusha T

Whatever the Weather - Whatever the Weather

You Belong There - Daniel Rossen

Club Sentimientos Vol. 2 - DJ Python

sore thumb - Oso Oso

CAPRISONGS - FKA twigs

Daphni - Cherry

Her Loss -  Drake & 21 Savegs 

Blue Rev - Alvvays 

The Sparrow - Sam Prekop

Just Don't Work For Me - Bilk

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