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ある日の京都の夜


さて、今日は何年か前に体験した、ある夜の事を話しましょうか。
その日の流れを朝から追うので、とてつもなく長い話になります。暇な時にでも読んでください。

本当にいろんな意味で夢のような2日間でした。
その日は前日から突発的に体調を崩し、高熱に苦しんで、僕の関西入りは一日遅れになってしまった。

しかし、京都九条のホテルで大切な友人の結婚式二次会パーティに参加予定で、その後には20年近く会っていない友人に会いに木屋町へ移動する計画。
楽しみにしていた大切なこの日。

さらには二次会の会場のホテルに部屋を押さえてもらっている事もあり、もう倒れこんでるわけにもいかなかった。

元々は前日に飛行機で大阪入りして、友人とご飯にでもと考えていたが、直接京都入りになり、飛行機のちょうど良い時間の便も無く、久しぶりに新幹線を選択。

「早めに動かないとなぁ」

と、頭では考えていても、熱も下がらず、体調があまり回復していなかった為、だらだらと準備をしてしまい、小倉駅に到着したのは午前11時過ぎになっていた。
ボーッとする頭で新幹線のチケットを京都まで購入し、乗車。
バタバタと乗車した新幹線に揺られる事2時間半。
ようやく、2時過ぎに京都へ到着し、駅周辺をあてもなくブラブラしてみたのだが、

「あー、やっぱり体調悪ぃなこれ、ダメだ。」

と大きめに独り言を吐いてから、早めにチェックインして部屋で休んでおこうと、ホテルに向けて烏丸通りを南下し始める。

「けっこう歩いたなぁ」

ようやくホテル到着、

「おー、エントランスもロビーも部屋も洒落てやがるな。」

その上、落ちつかないなんて事は全くない。
こういうの、なんて言えばいいんだろう?

「うん、計算された洒落具合だな。」

とかなんとか、わかった風な事をブツブツ、ゴニョゴニョ言いながらベッドに身体を横たえてウトウトしたり、友人と必要な連絡をとったりしながら時間は過ぎていった。

そして二次会。
披露宴のスケジュールが押しで進んだようで、新郎新婦がバタバタと到着した。
それと入れ代わりで別の友人は機材を運びに新郎の家まで車でひとっ走り。
始まるまでになんやかんやあったけど、パーティーは本当に楽しかった。
久しぶりに会う新郎、それから以前働いていた会社の先輩後輩。

「元気?」

「今何してる?」

とか当たり前な話から、関西独特のボケ、ツッコミを交えたネタ的なトークまで。
ホントね、すごくホッとする素敵な時間だった。

余韻にひたる間もなく、パーティが終わって古くからの友人の双子姉妹が経営する木屋町のお店に移動。

「木屋町のホントにど真ん中だね。」

すごく良い場所にあって、店までの道はすぐにわかった。

この辺は学生の頃によく遊びに来てた事もあって、どこか懐かしい感じもするし、久しぶりの夜の京都の雰囲気に妙にワクワクしたり。

そしてお店の入口の戸をススーっと開けた瞬間、懐かしい声が、

「〇っちゃ〜ん!久しぶりやんか〜!!」

とお出迎え。
お店の奥をよく見ると大昔に会った事のある姉妹のお父さんもいらっしゃる!
その周りにいるのは姉妹の中高時代の同級生だとか。

「おー、なんかすごい日に来たなぁ」

とか思いながら、ジンジャーエールと連れ2人はビール、おつまみ的なメニューをいくつか頼んで、懐かしい話を満開にして夜は更けて行くのであった。

そして、その出会いは突然訪れた。

入口のドアがススーっとオープン。

ニューエラのキャップに半袖短パンの怪しい外人が現れたのであった。
彼はビールを一杯頼むと、手につけていた毛糸でできた鳥のクチバシみたいになっている手袋を外すと、そそくさとトイレに駆け込んで行った。

「半袖短パンで毛糸の手袋?!11月の京都やぞ!」

となった僕らはその手袋を触ったり、自分の手につけようとしたりゴチャゴチャやってると、彼が席に戻って来る。

僕らが手袋に興味を持っていた事に気づいたのか、おもむろに手袋を装着。その手にビールを持った。
そして僕ら三人と、カウンターを切り盛りしている友人にも乾杯を求めた。

その後も手袋をつけて裏声で「モシモシ〜」と言ったり。
手袋の鳥にもビールを飲ませ(るフリ?をし)たり、いちいち不思議な男だ。
よく見ると足にも何か妙なモノがついているじゃないか!

「恐竜?いや、怪獣の足の靴なのか?」

と僕が疑問に思うと、彼はすぐにそれを読みとったように、足を高く上げて誇らしげにその靴(スリッパかもしれん)を見せてくれた。

僕はその時「どこで売ってるんやろ、あの靴も、手袋も。見た事ねーわ」
そんな風に考えてた。

そして、ビールの無くなる頃に、彼は立ち上がり、僕らにいろいろちょっかいかけたり自分の事を話したりしてきた。
1人の友が英語で、
「どこから来たん?」
と問うと彼は答えた

「俺はオーストラリアから来たんだよ。
アボリジニなんだ。
知ってる?アボリジニ!
ブーメラーン!ヒューーン!」

とか、なんとか訛りのキツイ英語で言ってたような気がする。

「さっきね、スッポン食って来たんだ!ほら、俺めっちゃ元気だろ?!」
みたいな事も言ってた。

そんな話も一段落して、カウンター内の友人に、

「じゃあそろそろ帰るよ!
次?ラバダブ(京都の老舗のレゲエのクラブ)行くんだ!」

とかいう挨拶をしてから、突然、三人並んだ1番奥の俺の方に来た。
そしてあの鳥の手袋で顔中をムシャムシャ。
喉から首にかけてもゆっくりムシャムシャ。
それから隣の友人にも同じような事をして、最後は女の子だからか、鳥の手袋でホッペに軽くチュってした。

「何の意味があるんだよ?笑」

と思ったけれど、帰って行く彼と
「バイバーーイ!またねー!」
って言って別れた。
帰った後に聞いた話だが、実は彼もしばらく来てなくて、なんでも一年ぶりくらいに現れたらしい。

「やっぱり俺、すごい日に来たんやねぇ」

みたいな事を話してから、かなり遅くなったので、三人で帰る事にして、お店の双子姉妹にお別れを言って、タクシーでホテルに戻ったのだった。

実は連れの2人は最終電車なんかとっくに無くなってて、僕の部屋で三人雑魚寝する事に。
で、それぞれ携帯いじったり、いろいろ話したりしてたんだけど、1人がスイッチ切れて脱落。
しばらくして、もう1人も脱落。

1番最後に残ったけど、だんだん意識が薄れて、とろーーんとした意識の時に何かが俺に近づいて来た。

黒い影のような大きなもの。

ゆっくり、這うように、
こっちに近づいて来る。

だんだん顔の方に近づいて来た…うわぁぁ

そして耳元で一言、
それが何語だったのか、音声があったのかどうかもわからない。
けれど、忘れもしない、その時たしかに、ゆっくりと、こういう事を言ったのだ。

「おまえの息の、四つに一つを、悪い息にしてやる...」

そう言うとその黒い影が僕の体内にズズズズッと何かを引きずるようにして入って来たような感じがして、直後に酷い咳が出るようになった。

「咳が止まらない!!」

おさまって普通の息をしても、すぐにまた咳が出て、息もできないほど苦しくなる。
気がつけば喉がカラカラのイガイガに枯れて、声ももう出ないくらいになっている。

「これはダメだ!咳で2人も起こしてしまうし…なんとかしないと」

そう思った僕は洗面所に駆け込んで、うがいしたり、意味なく顔を洗ったり、鏡を見て途方に暮れたり。咳はその間も出ては止まり、出ては止まり。

「苦しい、けど、どうにもならんな...」

仕方なく諦めて布団に戻って横向きに寝たら、また咳が出そうになり、喉の違和感から、たまらず口を大きく開けた。

その瞬間、何が起こったのか全然理解できなかったのだが、
あの鳥が来た!

バッサバッサと音を立てて、
あの外人の手袋の、
たしかにあの手袋の鳥が来たのだ!

そして、僕の口の中から黒いものをくわえてズルズルと引きずり出した!!!

僕の身体は引きずり出される黒いものに引っ張られて宙に浮く。
ググググっと奇妙な感覚で宙に浮いていく。
どのくらい続いただろう、鳥が黒いものを全て出したその瞬間に、僕の身体はバタッとベッドに落ちた。

その衝撃で1人の友人を起こしてしまったが、その時は意味不明な事を言って誤魔化した。
その後、僕はあまりの消耗に意識を失うように眠り、1時間程してまた目覚めた。

咳はピタリと止まっていた。

しかも、大して眠れてもいないのに全然眠くもない。

なんだ、コレ?

その後、2人も目覚めて一部始終を話したが、2人とも大笑いして夢扱いされるだけだった。
そりゃ、そうだよね。
咳が出てたのも全部夢だと考えれば、元々体調も悪かったし、変な夢にうなされたけど、結局眠ってスッキリ、
はい、おしまい。

って、どうも何か納得いかない気もしたが、

「ま、、、いっか。」

と、無理矢理気持ちを整理した。

「あー、でも不思議な体験だったなホント。」

と、いうわけで、
何が起こったのか、いまだに理解できていませんが、コレが僕が京都で体験した不思議な夜のお話。




なのですが、、、

実はその翌日、福岡に戻ってまだなんだか不思議な感覚でぼんやりしてる時に、一緒に泊まった2人のうちの1人、女の子のほうからメールが来ました。

「〇〇さん、いつも通る綺麗な道があるんですけどね、
普段ゴミも落ちてないくらい綺麗な道なんですけど、、、
今日ね、あの怪獣の靴が落ちてたんですよ!!
チャリでひきそうになりましたよ、、、、」





おわり

長い文章にお付き合い頂き、ありがとうございます

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